知恵の経営

第8回

社員第一主義で成長持続

アタックスグループ 2015年2月25日
 

 前橋市に廃棄物の収集運搬を業とする中小企業のA社がある。正直この業界は、仕事が大変な割には業績が伴わず、結果として社員の給料は低く、万年人手不足といった状況が一般的となっている。しかしながら、A社の実態を見ると業界の平均的な企業とは全く異なり、業績が右肩上がりどころか、近年の利益率は業界平均の1~2%をはるかに上回る10%以上だ。こうした好業績もあって、社員の平均給与は年収ベースで、業界平均の2倍に相当する823万円と並外れた高賃金企業を実現している。

 加えて「3K・5K」などとも言われる厳しい作業環境のため、業界では高い離職率が常態化しているが、離職は実質ゼロ状態である。人手が集まらずに不足するどころか入社希望の求職者が、長蛇の列をなしている状態である。

 ではなぜ、こんなにも高い業績と成長を持続することができているのだろうか。その要因は多々あるが、ここでは2点に絞って述べる。

 第1は、徹底した社員重視経営の実践である。

 社員数は51人だが、全社員が正社員、それどころか全社員が株主でもある。しかも、社員持ち株会の持ち分比率は、社長のそれをはるかに上回る40%と高い。まさに全社員が、社員であると同時に経営者でもある企業となっている。つまり、社長がいいかげんな経営をすれば、社員が社長の首をすげ替えることもできる企業なのである。


 その上、定年は実質65歳、その後も社員が希望すれば、いつまでも働くことができる。さらに言えば、社員の家族を支援するため、その社員の生活実態に合わせた勤務形態を選択することができる。

 いやはや驚くべき社員重視の企業である。そこまで社員第一主義経営を実践する目的を、H社長は「会社は何のために存在しているのかと問われたら、私の答えは、社員とその家族の幸福のため」と言い切る。

 第2は、自立連携型経営の実践である。

 別の用語でいえば「オリジナリティー&ネットワーク経営の実践」である。つまり、経営資源を多方面に分散させず、自社は比較優位の独自分野に特化する経営の実践である。

 もとより、市場は利便性の高い専門業者を求めていることは事実であり、このためA社では強い技術力を保有する多数の有力な外部企業と有機的に連携し、ワンストップ型の創造・提案が可能な経営スタイルをとっているのである。

 ちなみにA社は廃棄物処理業者であるものの、中間処理場や最終処分場を一切保有せず、廃棄物の収集・運搬に特化している。しかも、有害・無害を問わず全品目の廃棄物の収集・運搬ができる全国でもまれな企業である。そして、廃棄物の処理・処分は、関東地区の100社以上の専門業者と緊密に連携し、顧客のニーズに合わせた最適な処分場とつながっている。

<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授・アタックスグループ顧問 坂本光司


2015年2月25日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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