知恵の経営

第30回

わが社は何屋さんなのか

アタックスグループ 2015年7月30日
 

 ハーバードビジネススクールで、マーケティングを教えたセオドア・レビットは1960年、ハーバードビジネスレビューに「会社が自らの事業を正しく定義しないと成長企業といえども衰退する」という主旨の非常に示唆に富んだ論文「マーケティング近視眼」を書き、衰退の例に鉄道会社を挙げた。鉄道網は北米大陸全体に敷設され大変繁盛したが、交通の主役を自動車や航空機に奪われた。

 レビットは「鉄道会社が危機に見舞われているのは、旅客・貨物の輸送が鉄道以外の手段に奪われたからではなく、会社自身が顧客の需要を満たすことを放棄したからだ。鉄道会社は自らの事業を輸送ではなく、鉄道と考えてしまったために自分で顧客を他へ追いやってしまった」と述べた。

 自動車や航空機の出現は輸送事業を発展させ、顧客の支持を獲得する絶好のチャンスだったのに、それを見逃したという。

 これとは逆に事業ドメイン(範囲)を再定義し、成長軌道に乗せた顧問先M社を紹介したい。以前は酒屋に酒やビールを販売する酒類卸業者だった。2代目の現社長は事業を引き継いだときから、酒屋の免許制度の規制緩和で商売がいずれ成り立たなくなるという危機感を強く抱いていた。社員を説得し、飲食店を顧客とした業務用酒卸へと徐々に商売を変えていった。その過程で、飲食店の「繁盛支援」を基本にしなければ自社も繁栄しないと気付いた。

 社長は、事業方針の転換で将来の姿が明確になり、取るべき戦略も決まったと話す。以前、M社主催の「繁盛の法則」という講演に参加した。顧客である飲食店の社長、社員ら300人近くが熱心に耳を傾けていた。

 M社は他にも業務用酒類・食材の総合展示会や料理教室など、さまざまな支援を行う。最近ではビール会社の生ビールを工場から2日で飲食店へ届ける「速達生」というサービスも始めた。こうした戦略・戦術をやり抜き、勝ち組企業となったのだ。

 「事業ドメイン」は相撲でいえば土俵であり、土俵を間違えると勝負にならない。自社の将来を担う若手を集めて「わが社は何屋さんか」をブレーンストーミングをしてはどうだろうか。討論のヒントは、製品そのものではなく製品の機能を考えること、あるいは顧客が製品に求める本質的な価値は何かを検討すること。会社の将来を考える参考にしてほしい。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2015年7月30日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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