知恵の経営

第105回

地域社会に貢献する銭湯

アタックスグループ 2017年2月22日
 
 全国に銭湯と呼ばれる「一般公衆浴場」は、4300カ所、都内でも630カ所存在する。かつては、全国に2万カ所以上、都内にも3000カ所もあったが、近年では激減し、今やピークの4分の1である。

 この間の銭湯激減の最も大きな要因は3つある。第1は、今や90%をはるかに超える自家風呂の普及である。第2は、この間、ヘルスセンターや健康ランド、スポーツ施設、サウナ風呂、さらにはスーパー銭湯など他の公衆浴場の台頭・普及も大きい。事実、かつては、公衆浴場と言うと、ほぼ100%が銭湯だったが、今やその比率は18%程度まで低下している。

 そして第3は、当業界の後継者不足だ。当業界の大半は個人企業であり、その従業員もほとんどが家族従業員を中心としている。資料によると、業界の事業主の年齢は、70歳以上が44%、60歳代が29%と、60歳以上の事業主が全体の73%も占めている。

 より驚かされるのは、その後継者で「後継者がいない」銭湯が全体の60%程度もあり、このままでは、10年後にはさらに半減しかねない。

 では、業界に未来はないのか。そんなことはない。その1つの事例が東京都墨田区にある「有限会社御谷湯(みこくゆ)」。従業員は家族・親戚の4人で、まさに業界の平均的な銭湯のように見えるが、業歴は古く、すでに70年の歳月を刻み、3代目となる後継者もすでに決まっている。

 こうしたこともあり、2015年には100年企業を目指し、数億円の資金を投下し、5階建ての銭湯を新築した。多くの銭湯が衰退傾向の中、なぜ御谷湯は元気なのか、その要因は多々あるが、最大の要因は、当社の地域貢献・社会貢献の姿勢と実践と思われる。
 
  その全てを紙面では紹介できないが、2年前新築した銭湯(両国駅と錦糸町駅の中間)に行けば、その訳が一目瞭然(りょうぜん)である。4階と5階にあるメインの銭湯は、全ての施設がバリアフリーになっているばかりか、一番便利な1階は、車いすの障害者やお年寄りのための福祉風呂である。余談になるが、1カ月間の利用客を聞くと、5~10人程度で到底採算がとれる施設ではないが、障害者やその家族の「素敵なお風呂に入りたい…」というニーズ・ウオンツのために、あえて新設した。

 さらに驚かされるのは、2階で、ここは地域の障害者の就労移行支援施設に低利でフロアを提供し、その活動を支援するとともに、その売り上げに貢献したいと、御谷湯の銭湯の清掃業務を依頼している。

 こうした弱者に優しい経営姿勢が地域住民に高く評価され、今やうわさを聞き付けた顧客が遠くは千葉県や埼玉県からもやってくるという。

<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

2017年2月22日フジサンケイビジネスアイ掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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