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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第51回

「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」の教訓

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
 金融機関について「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」という言葉があります。「金融機関は身勝手だ」との趣旨ですが、その解釈だけに終始すると、実はとても勿体無い話です。そこには資金調達について、とても貴重な教訓が隠されているからです。

本コラムでは、コロナ禍に対応した記事も合わせて掲載しています。
是非、ご覧ください。

<「雨の日に取り上げる」教訓を今に活かす>

<「地域で顧客を創造する」構図を考える>

<事業性評価で金融機関が見ていること>

「晴れの日に・・・」は正論!?

 「晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げる」というと、「そうだそうだ、金融機関はひどいよね」という会話になることが多いと思います。実際、歴史ある中小企業の経営者からのお話をお聞きすると「ひどい」と言わざるを得ないような話も少なくありません。

 一方で、金融機関としての立場からすると「そうなんです。それが金融機関というものなんですよ」と言いたくなることがあります。これは「開き直り」ではありません。「金融機関も、営利企業です」が原点です。

 金融機関が融資をする原資は「預金」、つまり、皆さんからの借金です。金融機関とは「借金を原資に中小企業に融資という名の『投資』をして、利益を得ている会社」なのです。金融機関の債権者(預金者)の立場で考えてみましょう。金融機関から「皆さんの預金は、リスクをとって、困っている企業に貸し付けましたが、結局は倒産しました。だから預金の払出しはできません」と言われると困ります。「リスクを取るのは結構だが、預金の払出しに影響が出ない程度に留めてくれ」と言いたくなりますね。金融機関は、預金を着実に運用する義務を負っているのです。

 皆さんが金融機関にお金を預けている理由として、もう一つ、決済原資があります。取引先へ個別に送金(例:郵便為替にして送る)する手間が煩雑なので、決済口座に資金をプールしておき、そこから取引先に送金してもらうのです。「皆さんからの預金を困っている企業に貸し付けましたが返済されないので、皆さんの取引先に送金できませんでした」となると、企業として死活問題です。

 金融機関は、こういう構図の中で「融資」をしています。貸し出す以上は返済してもらうことが、金融機関にとっても、また金融機関の債権者にとって最重要課題です。だとすると「晴れの日に傘を貸して(好景気や企業が好調な時に資金を貸し出して)、雨の日には傘を取り返す(不景気や企業が不調な時には貸付金を返済してもらう)」というのは、自然な行動原理といえます。資金を借りる方としても、この行動原理を前提にした方が良さそうです。


(教訓その1)晴れの日に借りておく

 「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」から得られる教訓の第1は「晴れの日に借りよう」ということです。金融機関は、企業が儲かっている時、景気が良い時にお金を貸したがります。その時に借りておくのです。「無駄なお金は借りる必要はない。」そうでしょうか?儲かっている時、景気が良い時は、企業にとっても将来を見越した前向き、積極的投資をしやすい時です。そういう時こそ、資金調達しましょう。また、積極的な経営戦略を打ち出して着実な実績を積み上げて行くと、金融機関からの信頼度をあげることができます。いざという時にも借りられる信頼関係を育むことができるのです。


(教訓その2)雨の日に取り上げられない

 第2は「雨の日に取り上げられない工夫をする」ことです。皆さんが、取引先に預けた自社製品を一部回収しなくてはならなくなった時、最初に検討する先はどこでしょうか?「御社の製品を活用したことで、我が社のビジネスはうまく回っているよ。ありがという。そちらの儲けにも貢献していますね」という会社でしょうか?報告を全くせず、尋ねると「いや、ご報告するほど芳しい成績をあげていないので」という会社でしょうか?後者でないかと思います。これは、金融機関にとっても同じです。普段、コミュニケーションを密にすることにより、雨の日でも傘を取り返されにくい企業になることができるのです。


(教訓その3)相手の特性を鑑みる

 第3は「相手の特性、すなわち得手・不得手を鑑みる」ということです。もう一度考えてみましょう。皆さんが取引先に預けた自社製品を一部回収しなくてはならなくなった時、最初に検討する先はどこでしょうか?「その会社の顧客候補や取引先候補になりそうな先をよく知っており、いざとなったら紹介できる企業」でしょうか?それとも「そのように紹介できる先の心当たりが全くない企業」でしょうか。後者ですよね。とすると、前者の金融機関と深く付き合うことが、中小企業にとって、いざという時の命綱となるのです。

 複数の金融機関とのコミュニケーションを密にすると、金融機関には仕事の紹介は異業種交流の場を積極的に設けるところと、そうでないところまで、いろいろなカラーがあることに気が付きます。より関係を深めていくと、地域や業種などの得意・不得意なども見えてくるかもしれません。そういう金融機関の特性を「晴れの日」のうちに調査しておき、積極的に支援してくれそうな金融機関との関係を深めておくことで、雨の日の備えができるのです。


金融機関との「ビジネス上の付き合い」

 以上のように申し上げると、金融機関との付き合い方も、仕入先などとの「ビジネス上の付き合い」とあまり変わらないことが理解できるでしょう。同じ商品を仕入れるにしても、金額や支払い条件、その他のサービスなどで特性を見極め、自分の必要や状況に合わせて相手を選択していると思います。金融機関との付き合いも同じことが言えます。晴れの日のうちに付き合いを始め、コミュニケーションを密にしておく、相手方の特性を理解して選択したり、状況に応じて使い分けたりする。こうすることで、みなさんの資金調達能力は格段に向上することでしょう。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。



 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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