知恵の経営

第15回

元顧客が作る池の覇者に

アタックスグループ 2015年4月15日
 

 自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得している中小企業を紹介している。8社目となる今回は、生活の木(東京都渋谷区)の“池クジラ”ぶりを見ていきたい。

 売上高83億円(2014年8月期)、社員数730人、1982年に、3代目である重永忠社長が事業転換して今日の姿になった。

 77年にハーブ事業を立ち上げたが、当時、日本ではまったくの未開拓市場だった。80年、「用途開発の第1号」ともいえるポプリづくりがヒットしたが、その際、ハーブ自体を売るのではなく、「文化をつくりさえすれば、モノは必要とされる」ということを学習した。

 このとき以来、特定のモノを売り込むのではなく、植物の恵みを生活に生かす「ハーバルライフ」をユーザーとともに育ててきた。

 このなかで新規参入企業さえ一緒にハーブ・アロマテラピーを広めていく「パートナー」や「同志」として位置付けた。そして、自社開発の機能やノウハウをライバル企業へ積極的に提供しながら、ともに文化を育ててきた。

 これはビジネスの世界では「非常識」である。しかし、この結果、生活の木の製品をこよなく愛し、ついには「ユーザーにハーバルライフを提供していきたい」とまで考える「元お客さま」が入社し、社員の大半にまで増えた。730人の社員は、ハーブとアロマテラピーの分野が好きで好きでたまらないという愛好者の集まりなのだ。他社がまったくまねのできない世界となった。

 他社がまねできないことはほかにもある。業界のパイオニアであるがゆえに独自の原材料調達ルートを持ち、世界51カ国の提携農場で委託栽培を行っている。また、流通経路も卸売りと小売りのどちらも自社で保有している。つまり、原材料調達から販売まで、一切の機能を統合することにより、オリジナル製品の開発能力を実現した。こうした「オール自前主義」は、アロマ関連産業では世界でも類を見ない。

 全国に18校ある「ハーバルライフ・カレッジ」では、講師であるハーブ・アロマ愛好者の専門性を生かした多彩な講座を数多く生み出しているが、社外の専門家、愛好者から持ち込まれた企画が多い。こうした人財を「社外ブレーン」と呼んでいる。そして、「元お客さまである社員」「直営店舗」「スクール・社外ブレーン」が次々と新用途を開発した結果、自社開発のオリジナル商品は2500にまでなった。

 この独自の活動範囲を「ハーバルライフ市場」と呼ぶとすれば、生活の木はその「池クジラ」以外の何ものでもない。

<執筆>

アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2015年4月15日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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