知恵の経営

第61回

振動技術を多方面に展開

アタックスグループ 2016年3月16日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を上げている中堅中小企業を紹介している。今回は「振動計なら昭和測器」と言われるほど高い技術力を誇る専門メーカー、昭和測器(東京都千代田区)の池クジラぶりを見ていく。

 1970年に現会長の鵜飼俊吾氏が振動計専門メーカーとして設立したのが始まり。鵜飼会長が経験した警報装置の通信機能の知識と、振動試験機メーカーに勤めていた実兄から得た振動の知識が役に立った。振動計測装置が双方の利点を併せ持っていたのだ。

 あらゆる産業分野にとって振動は大敵で、計測技術は多方面で広く使われ、成長余地があるものの市場があまりにも小さく誰も参入しなかった。大企業では研究開発費をカバーするだけの需要がないことに鵜飼会長は気づき、どこにも負けない力を身につけようと決断した。

 その後、自社製品としてはロングセラーの携帯振動計を、また顧客対応では自動車メーカー向けの走行実験用振動計、微小振動計測器、超微小振動計測器をそれぞれ開発。そのほか製鉄所、重電機、電子機器などのメーカーや電力発電所へ製品を展開。振動計測技術分野において圧倒的なトップ企業になっている。最近では次世代電子顕微鏡向けの超高感度振動計、人工衛星用の地上加振試験用計測システムなどを開発している。

 同社には自社製品の売上構成比を50%にする目標がある。それは特注品とそれをヒントに、売り上げの50%は将来の自社製品にすることだ。残り50%は、カタログ標準品であり、既存品で最低限の売り上げを確保しようとの考えだ。

 このため、顧客が欲しがる情報を営業がキャッチして開発製造に提案する。その意見を基に一歩先を行く新製品を開発し、すみやかに提案している。このベースには営業と開発製造の積極的な意見交換がある。

 両部門が一体となって新製品開発に取り組めるのには理由がある。一つは製造・設計・開発を経験した者が営業になるというジョブ・ローテーション。もう一つは、全顧客の社内データベースを基に顧客ごとの生産・販売状況をリアルタイムで営業と開発製造が共有していることで、営業から顧客と開発製造への迅速かつ的確なフィードバックが可能になるのだ。

 同社は振動計測技術を核として多くの新用途・新市場を切り開き、見事に、自ら創りあげた多数の小さな池の“クジラ”になっている。

<執筆> 
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2016年3月16日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

コラム 知恵の経営

同じカテゴリのコラム

コラム検索
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。