知恵の経営

第24回

障害者を適材適所に配置

アタックスグループ 2015年6月17日
 

 山口県周南市に「カン喜」という社名の中小企業がある。設立は1982年、現在の主な事業は冷凍食品の製造販売で、代表的商品は「かきフライ」や「殻つきかきグラタン」で後者の生産販売量は全国一だ。ちなみに、同社のかきグラタンの器は、かきフライに使った貝の殻を洗浄して活用するので、まさに一石二鳥である。

 社員数は72人、売上高は約7億円という典型的な中小企業だが、最大の特長は障害者雇用先進企業という点である。事実、カン喜本体の社員のうち53人は障害者で、障害者雇用率は、なんと73.6%である。

 余談になるが、本社とは別に自社はもとより地域の、障害者雇用を一層推進するため就労継続A型施設として「よろこび」という施設を運営している。そこにも48人の障害者が就労している。

 わが国における障害者の法定雇用率は2.0%となっているが実態は1.8%であり、法定雇用率にも達していない。これは多くの企業が、障害者雇用に本格的に取り組んでいないからであり、一方で、障害者の就労に対して誤解も少なからずあるからである。その意味では、いかにカン喜の障害者雇用が特出しているかが理解できる。

 ところで、経営的余裕のあまりない中小企業の場合、障害者雇用への取り組みは、施設や企業などで就労経験のある、即戦力型の障害者を雇用するのが一般的だ。

 しかしながら、同社の障害者雇用の中心は、これまで全く就業経験のない特別支援学校の卒業生である。このため現場で働く社員の年齢は18歳から40歳、平均では約30歳であり、国内の冷凍食品工場で働く従業員は60歳以上が多い中、同社社員の若さは例外的といえる。

 障害者の雇用を促進するため、さらには障害者により高い給料を支給したいがため、企業内には多くの工夫が施されている。例えば、障害者一人一人の個性を見極めて適材適所型の配置が行われているほか、生産工程をあえて細分化し、障害者の仕事を創造している。加えて言えば、失敗に対しても諦めず、根気よく指導している。

 こうしたことができるのも、創業者である上坂道麿会長の障害者に対する思いがとりわけ強いからといえる。創業者の上坂会長は82年の会社設立後まもなく障害者雇用に取り組んでいるが、それは当時の養護学校の先生や父母から雇用を依頼されたこともあるが、自身の両親の影響も大きかったという。

 上坂会長は福井県の出身で、戦前・戦後の混乱期、経済的に余裕のない地域住民のために、会長の両親が自宅を開放し子供たちや障害者を預かる姿を見ながら育ち、いつしか自分も弱い人々のためになることをしようと思い生きてきたという。

 10年後は「障害者雇用150人を含め、全体では300人体制にしたい」と計画している。

<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授・アタックスグループ顧問 坂本光司

2015年6月17日「フジサンケイビジネスアイ」掲載



 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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