知恵の経営

第130回

難局での一体感、成功の鍵

アタックスグループ 2017年9月4日
 
若手経営者との夏季経営トップセミナーで、2016年10月に東証マザーズに上場したユーザベースの梅田優祐取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)と対談した。起業から上場までの苦労話は起業する人や、成熟産業で悩んでいる若手の事業承継者に気づきの多い内容だった。

ユーザベースの事業は2つ。1つは「SPEEDA(スピーダ)」。法人向けに企業・業界に関する経済・金融情報を提供する。現在、上海、香港、シンガポール、スリランカに拠点があり利用企業600社・団体のアジアナンバーワンサービスとなっている。梅田氏は大学卒業後、戦略系コンサルティングファームや外資系証券会社でコンサルタントを経て、友人2人とともに27歳で起業した。動機はコンサルタント時代に業界分析リポートの情報収集に大変苦労したことだ。グーグルのように手軽に検索収集できれば事業会社、金融・証券業界、コンサルティングファームなどで働く人の役に立つと考えた。当初は経験が生かせる戦略系コンサルファームとプライベート・エクイティファンド20社に焦点を絞って開発を進め、開発ができる人材とコンテンツという2つの大きな壁を乗り越えて事業化に成功した。
 
2つ目は「NewsPicks(ニューズピックス)」。主に政治経済ニュースを個人ユーザーに分かりやすく提供する。「SPEEDA」だけでも十分上場できる態勢だったが上場前に周囲の反対を押し切ってチャレンジした。その動機はスマホ・ソーシャル時代になってメディア業界の構造が劇的に変わり、今しかないという強い思いだ。ニュースに求められる2大欲求、「発見」と「理解」をユーザーに提供する仕組みで、記事情報にコメントする「プロピッカー」の解説(キュレーション)は確かにユーザーの理解を深めている。現在、有料課金ユーザーが4万人と急成長中だ。今年5月には米ダウ・ジョーンズ(ウォールストリート・ジャーナルの親会社)と共同出資でニューヨークに会社を設立、米国展開のスタートを切っている。

一見、順風満帆だが「SPPEDA」立ち上げ直後の08年にはリーマン・ショックに遭遇し、資金難から事業断念寸前まで追い込まれた。だが、3人の創業メンバーで起業のビジョンを実現したいという思いを再確認し、事業を継続したことが今日の成功につながった。また、成長軌道に乗り始めた頃には組織に疲れが出てきたが、組織運営の「7つのルール」を決め、一体感を取り戻し、その後の成長に結びつけた。

梅田氏が起業して以来学んだことは、(1)ビジョンは明確・戦略は不明確(2)「戦略」よりも「人」(3)文化のない組織は絶対勝てない-だ。テクノロジーの進化に伴う変化の激しい分野はビジネスチャンスにあふれ、多くの起業家がチャレンジするが、成功する確率は低い。成功者は事業に夢中になるのは当然として、困難な局面で他人の力を借りることができる。その出会いを生かすことが成功の鍵ではないだろうか。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2017年9月4日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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