知恵の経営

第39回

社員満足追求した企業改革

アタックスグループ 2015年10月7日
 

 ナットを中心にファインパーツ(価値の高い製品)の製造・販売を行う西精工(徳島市)。今でこそ、日本でいちばん大切にしたい会社大賞などを受賞しているが、西泰宏社長が入社した当時は全く違っていた。

 後を継ぐはずだったいとこが急逝し、後継者として戻ってほしいと、1998年に呼び戻された。西氏が感じた会社や社員の雰囲気は「とにかく暗い」。社員はあいさつもせず始業時間ぎりぎりに出社して、楽しくなさそうに仕事する。製品が工場内に落ちていても、誰一人、気にすることもない。

 製品が床に落ちても拾わないのは、自分たちの現場や作っているものに、こだわりがないように感じた。その疑問を社内に「問題ではないか」と言ってみたが、創業以来一度も赤字がない現状に浸りきった社員は誰も取り合わない。

 そこで率先垂範して、あいさつと掃除を徹底した。ただ社長が先頭に立ったところで、すぐ結果が出たわけではない。多くの社員は“やらされ感”いっぱいで、そんなこと何になるのかという雰囲気のまま。「どうして分かってくれないのか」と自問自答を繰り返した。

 雰囲気が大きく変わり始めたのが、西氏が専務時代の2006年に参加した勉強会で、経営理念の話を聞いてからだ。

 重要性を強く感じ、会社になかった経営理念を制定。それまでの社是・社訓に書かれていたのは職場や製品の話ばかり。自社が何のために存在するのか、会社として社員に何できるのかが抜けていた。

 1年間をかけて制定した経営理念は「ものづくりを通じてみんなが物心共に豊かになり 人々の幸福・社会の発展に貢献すること」。社員満足を追求する理念が完成した。08年、社長に就任し、翌09年には経営ビジョンを、10年には創業の精神を制定した。経営理念、経営ビジョン、創業の精神を制定し、時代に合わなくなった社是・社訓は捨てた。ただ企業として変えてはいけないもの、根幹として守るべきものは、創業の精神に取り込んだ。

 こうした理念とビジョンを前面に出した経営は、社員たちの考え方と行動を180度変えた。社員満足度アンケートの結果では「総合的に考えると当社の社員として満足している」という設問で「非常にそう思う」「そう思う」を足した数字が98%に達するまでになった。

 西氏自身が率先垂範し、風土改革に乗り出した当事者意識とその行動力が、社員に伝わり、ついには社員満足度日本一の企業となった。

<執筆>

アタックス研究員・坂本洋介

2015年10月7日「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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