知恵の経営

第134回

発展は「変化と革新」の継続

アタックスグループ 2017年10月9日
 
水産商社、太新(東京都港区)の沖縄事業所(沖縄県糸満市)をこのほど視察した。1996年に、田端陽子会長と田端新也社長の2人が創業した。水産業界の既成概念を打ち破る流通改革に起業の価値を見いだし、既存の流通を無視した「市場外流通」にチャレンジした。漁業、養殖、加工、物流の各分野で協力会社・団体との良好で戦略的な互恵関係から生まれる付加価値の高い商品とサービスを提供し、圧倒的な差別化に成功している。2003年には創業7年目にもかかわらず、東京商工会議所が同年に始めた「勇気ある経営大賞」第1回受賞企業となっている。

顧客は全国のスーパーマーケットと外食産業。受注したら24時間以内に納品する。魚を通常の卸売市場で取引する場合、生産者(漁師)、漁協、県漁連、大卸、仲卸、小売りというルートを通るが、同社は産直ルートで最も速く届ける。

沖縄事業所は糸満漁港に近い水産加工業があまた進出している工業団地に立地し、ソデイカ専門の大規模冷凍倉庫と加工工場が稼働している。200隻以上の漁師と年間買い取り契約を結んでいるため、漁師は安定収入の見通しが立ち、高額な漁船でも安心して投資をして漁ができる。漁師を目指す若者も多く後継者問題はないと聞いた。

田端社長によると漁船は水深400メートルに生息するソデイカを1、2カ月近く掛けて捕獲して帰港する。将来は漁をサポートする仕組みも考えたいという。

同社のソデイカ加工工場はなまものを扱うため、衛生管理に細心の注意を払い、品質管理が徹底していた。トレーサビリィティーは当然として最終工程では金属探知機で全品検査を行う。1匹15キロにもなる大型のソデイカをスーパー店頭に並ぶスライスされた状態にまで加工する専用機が使われている。機械はすべて自社仕様で外注し、省人化が進んでいた。
 
水産業界は大手でも経営は厳しい。発展への道程は決して平坦(へいたん)ではなかっただろう。知恵と勇気でブルーオーシャンを築き上げた経営手腕は相当なもので、事業を通じて社会に貢献したいという2人の強い思いがその根底にあると感じた。

同社の強みは、(1)川上の生産者(漁師)との良好な信頼関係を長年泥臭く築きあげ、常に生産者が繁栄するようサポートし、既存の漁連との共存共栄も維持していること、(2)加工工場の生産性向上・品質管理に工夫を凝らし、設備を自社開発していること、(3)ITシステムで受注・加工・発送・請求業務まで自動化し、極めて少人数で運営していること、(4)川上から川下まで一連のバリューチェーンが完成されていること-と考える。

経営者の企業家精神は旺盛で、アジアを中心とした海外展開、新たな養殖方法の開発など革新と改良はまだまだ続くと思う。同社の経営を知ることで「変化と革新」の継続が企業発展の原動力だと再確認した。


<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2017年10月9日「フジサンケイビジネスアイ」掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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