知恵の経営

第107回

顧客の「不」探し解決策提案

アタックスグループ 2017年3月8日
 
 東京商工会議所の中小企業顕彰制度「勇気ある経営大賞」がスタートした2003年の受賞企業を取材し、「『変える勇気』が会社を強くする」という本にまとめ、特に印象に残った3社の経営者から、その後の事業展開を聞いている。その一社、ダイワハイテックス(東京都板橋区)を先日訪れた。大石孝一社長は、1978年に脱サラし、大和包装機械を設立。書店向けにコミック本をビニール包装する機械「コミックシュリンカー」がヒットし、事業を軌道に乗せた。大型書店の全国出店が続いた時代の流れを見事につかみ、シェア90%という圧倒的な支持を得ている。

 大石社長の事業感は常に顧客の立場で考える顧客第一主義。それを貫くための徹底力が加わる。コミックシュリンカーでは単に包装機の販売ではなく、書店の繁盛を支援する発想で事業を組み立てた。忙しい書店のオープン時に「猫の手キャンペーン」として社員が手助けに行くサービスを行い書店から大変感謝されている。今でも大石社長自ら出掛けることもあるという。包装機が万一故障し、書店から連絡が入ると先に代替機を書店に送って修理することで、書店の包装作業を止めないシステムを構築した。

 新製品開発に積極的で、小型で値段も手頃なコンビニエンスストア向けの雑誌テープ貼り機「テープ・ショット」も全国のコンビニへの導入が進む。一方、極めて高いブランド力がある全国書店向けには、万引をさせない売り場作りのための防犯システムを提案。機器選定から施工、アフターフォローまでを手掛ける。
 
 今後最も期待するのは物流業界・通信販売事業向けの梱包(こんぽう)機「バブルシート自動包装機」だ。大石社長がコミックシュリンカーの包装技術から思いついた。売り切りではなく、1個梱包するごとに包装資材込みの課金制で提供する点が優れている。つまり顧客企業の利便性を考えるサービスの発想だ。書店向け事業の市場の伸びは難しく、物流業界・通販向け梱包サービスが主力になると予測している。さらに通販向け新製品として自動選択で段ボールの梱包作業を効率的に行う装置「ダンボール自動選択シュリンク梱包ライン」も開発した。既に通販事業者に導入されているが、さらに改良しながら普及拡大を目指している。あくまで自前技術にこだわり、製品を開発する「モノづくりはチャレンジと改善」という「勇気ある経営」をあらためて実感した。

 企業の究極の目的は絶えず変化する環境に適応して自らを変え、生き抜くことだ。ドラッカーは「企業の定義は唯一、顧客創造」であり、顧客創造には基本的な2つの機能(1)マーケティング(2)イノベーションを活発にすることが重要だと言う。全く同感である。

 同社と大石社長にも優れたマーケティング力があり、市場や顧客が顕在的・潜在的に抱える不便・不満・不安といった「不」を探し解決策を提案する。そのマーケティング力を得意の包装技術を応用した新市場開発に、いかんなく発揮している。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2017年3月8日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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