知恵の経営

第76回

全員参加型で難局克服

アタックスグループ 2016年7月13日
 
 トヨタ自動車は4月にカンパニー制に移行した。豊田章男社長は就任直後、北米で必ずしもトヨタの責任とは言い切れない重大クレームに遭遇し、米国議会公聴会での喚問など経験を積んだ。今では経営に自信を深め、長期視点でかじ取りを行っている。カンパニー制も長期戦略の一つで、その目的を(1)経営の意思決定のスピードアップ(2)将来経営を担う人材を鍛える場づくりとしている。

 自動車業界では独フォルクスワーゲンの排ガス偽装、三菱自動車の燃費偽装が起きている。豊田社長は「もっといい車をつくろう」と分かりやすい方針を打ち出したが、万全な経営を期待したい。もしトヨタに不測の事態が生じれば、日本経済はリーマン・ショック以上の大混乱に陥ると思う。

 ところでカンパニー制移行で、京セラの稲盛和夫名誉会長が経営の柱の一つとしたアメーバシステムを思い浮かべた。稲盛氏は著書で、会社が急速に発展する中でともに苦楽を分かち合い経営の重責を担う共同経営者が欲しいと心の底から願うようになったことから「組織を『アメーバ』と呼ばれる小集団に分けて社内からリーダーを選び、経営を任せて経営者意識を持つリーダー、つまり共同経営者を育成した」と述べている。

 目的は(1)マーケットに直結した部門採算制度の確立(2)経営者意識を持つ人材の育成(3)経営理念をベースとした全員参加経営の実現の3つだ。

 製品価格はマーケットで決まる一方、原価は生産工程で発生する。アメーバシステムでは、複数の工程を経て完成する製品は、最終販売価格から逆算して各工程(アメーバ)に社内売り渡し価格を決める。各アメーバはリーダーと工員とが力を合わせて部門採算を管理し、少しでも効率よく利益(京セラでは時間当たり付加価値)を上げる努力をする。
 リーダーを任されれば間違いなく成長するし、メンバーは努力の成果が分かれば経営参画への意識改革にもなる。

 稲盛氏は日本航空の再生を引き受けて2年8カ月で再上場させた。後に「どのようにして再生したのか」と質問され「再生にあたり、京セラの同志2人とともに持ってきたのは2つだけ。1つはアメーバ経営。もう1つはフィロソフィー」と答えた。社員に自分たちが主役となる当事者意識と全員参加経営を訴えて再生に導いた。

 大方の予想に反して英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決定し、世界的な株価低迷が続く。急激な円高で輸出産業には大打撃だ。世界経済の見通しを読むのが極めて困難な時代だが難局を乗り越える王道は、当事者意識を持って頑張る全員参加型経営だ。JAL再生のプロセスを今一度学んでほしい。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2016年7月13日 フジサンケイビジネスアイ掲載





 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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