知恵の経営

第52回

研究開発重視で業績向上

アタックスグループ 2016年1月6日
 

 かつて、わが国の3大ものづくり地域といわれた静岡県浜松地域の衰退が著しく進行している。工業統計によると20年前、浜松市には4200カ所もの工場があったが、直近では2100カ所と半減している。

 最大の要因は、浜松地域のものづくりの中小企業の大半が、大手組み立て型産業の下請け的ものづくりをしているからだ。

 組み立て型産業の多くは、経済のボーダーレス化・グローバル化の中で、生産拠点の海外現地化や製品の逆輸入を拡大させている。さらに国際的なコスト競争に勝つために、製品を構成する部品の共通化や一体化によって部品点数は半減した。一方で、組み立て型産業は系列を超えた取引を一層加速・拡大させている。

 こうした状況を直視すれば、下請けタイプの企業が淘汰(とうた)選別され、激減していくのは残念ながら当然といえる。

 こうした中、浜松市で異彩を放っているのが「日本ロック」という独立系のものづくり中小企業だ。主な事業はスイッチなど電装品製造で、社員は170人、売上高は62億円である。販売先は国内外の自動車や農機具のメーカーで、売上構成は輸出60%、国内40%である。

1980年の設立で、創業者は現会長の米田良正氏。それより前、米田氏は共同創業し、地域の中堅企業にまで成長発展させた企業を仲間に譲り、50歳のとき理想の会社を創りたいと再び日本ロックを創業した。

 下請け型ものづくり経営を嫌い、創業以来一貫して、資金面や人財面から研究開発に注力してきた。この結果、この35年間で出願登録した特許や実用新案などは、100件以上、つまり毎年3~5件の特許などを申請し続けている。こうした姿勢は業界有数となった今日でも貫かれ、研究開発費は毎年、売上高の10%程度、170人の社員の15%に当たる25人は研究開発要員である。

 こうした研究開発重視の経営姿勢により、業績もすこぶる好調で、過去10年間で見ても、社員の年間賞与は5カ月以上、その売上高対経常利益率も10%前後を持続している。より驚かされるのは賃金で、単純組み立てをしているパートの女性の時給は、地域の業界平均が800円前後なのに、何と1200円である。

 先般、下請け型ものづくり産業の中小企業経営者など、約20人と同社を久方ぶりに訪問したが、視察した経営者の多くは「問題は景気ではなく自分の経営の考え方・進め方」にあったと反省しきりであった。


<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

2016年1月6日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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