知恵の経営

第83回

専門職人重視の戦略実践

アタックスグループ 2016年8月31日
 
東京・日本橋に「ふらここ」という中小企業がある。主な事業はひな人形・五月人形の製造販売、社員数は約20人。設立は8年前の2008年、原美洋社長が自宅の一室でスタートした会社だ。同業界は近年は少子化や核家族化・生活様式の変化などで、衰退傾向が著しい。

 厳しい環境下であえて創業したが、業績は創業から今日まで右肩上がり。なぜ衰退産業といわれながら、一貫して成長発展してきたのか。その要因は多々あるが3点に絞って述べる。

 第1点は、潜在需要の発掘・提案である。業界の最大問題は少子化もさることながら、関係ある世帯の3分の2が、近年、ひな人形・五月人形を買っていないという実態だ。業界関係者の多くは、原因を住宅事情や、嗜好(しこう)の変化と見る中、原社長は「消費者は買わない・買いたくない」ではなく、「買いたいひな人形・五月人形がない」と評価した。

 そこで購買決定権者である20代後半から30代の母親たちにターゲットを絞り、市場調査を重ね、製作したのが現在の商品群だった。

 ふらここのひな具・ひな人形は40センチ程度の空間に飾ることのできる、大きさだ。その人形の顔もかつての人形の常識だった「うりざね顔」ではなく、1歳から2歳の子供をイメージした「童顔」。しかも、その形は卵を横にしたような顔である。

 第2点は、製販一体のビジネスモデルの構築である。同業界の製造・販売組織は歴史的に製造業者と、それを販売する業者とが明確に分かれ、すみ分けしてきた。しかし、ふらここは「顧客のニーズ・ウォンツにマッチした商品でなければ支持されない」と考え、販売店任せの流通・販売から「自分で考えたものを自分で売る」という製販一体型のビジネスモデルを構築した。
 その販売方法には、ネットを高度に利活用した。金額もかさむ商品であり、また手に取り購買を決定する商品と思われるが同社の商品の信頼度は高く、近年は、購入し返品された事例はほぼ皆無という。

 第3点は職人を大切にする経営の実践である。同業界のキーマンは専門職人だ。価値ある専門職人の有無により、業界の盛衰は決定するにもかかわらず、これまで必ずしもこうした職人を大事にする経営が行われてきたとは言い難い。

 季節商品であり、専門職人への支払いも、生産も極めて季節性が強い。これでは専門職人が育ち定着するはずはないが、ふらここはそこを逆手に取り、職人の経営や家計が安定する経営を実践してきた。

 同社のケースを見ると、商品が悪いと嘆く多くの経営者の声が言い訳でしかないことがよく分かる。
<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授・アタックスグループ顧問 坂本光司
2016年8月31日フジサンケイビジネスアイ掲載



 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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