知恵の経営

第95回

24時間、宅配ボックス管理

アタックスグループ 2016年12月7日
 
 アタックスグループが顧問をしている、日本宅配システム(名古屋市東区)の淺井泰夫会長と最近面談した。北海道から九州まで支店網を持ち、全国2万棟のマンションに宅配ボックスを設置・管理している。業界シェアは50%近い。

 淺井会長は東京で一流商社に勤めていたが、23年前、親のビル賃貸事業を継ぐために名古屋へ戻った。その半年前から週末には名古屋で親を手伝い、賃貸マンション暮らしをしていたが、荷物の受け取りに大変な不便を感じた。事業を継ぐと同時に、その解決策として宅配ボックス市場のリサーチを始めた。

 当時、宅配ボックスは新築マンションの付属設備として数社の大手企業が販売していたが、これらは“売り切り”で、メンテナンスは専門業者任せだった。ところが淺井会長はマンション住民と契約し、宅配ボックスの管理を請け負った。住民の真のニーズは宅配ボックス購入ではなく、留守に届けられた荷物を安心して受け取ること。鍵をなくしたり、クモの巣が張っていたりすることもありメンテナンスは極めて重要だ。

 同社は、正社員が全国の契約マンションを定期的に訪れて宅配ボックスの管理状況をチェックし、清掃まで行う。アフターサービスが極めて充実し、保守管理契約した顧客には24時間フリーダイヤル受付で、(1)操作方法(2)部屋番号間違い(3)故障(4)カード紛失(5)いたずら、盗難などの利用履歴確認-といった問い合わせに対応するほか、宅配クリーニング、レンタサイクル、カーシェアリング、冷蔵ボックスなどのオプションサービスも用意している。

 ネットショッピングの急成長による宅配荷物の急増で、再配達ロスが社会問題化している。年間では時間換算で約1億8000万時間、人件費約3000億円のロスが発生し、国土交通省も対策を検討中と聞く中で、同社は社会インフラ産業としての地位を着実に固めている。

 淺井会長が成功した理由は、(1)会長が企業家精神にあふれ、自分自身が感じた“不便”の解決策を事業化したこと、(2)宅配ボックス市場を徹底的にリサーチし、大手企業にはできない戦略をとり、利用者の“お困り事解決策”を提供したこと、(3)追い風にうまく乗ったことだ。

 淺井会長とは事業開始当時から異業種交流勉強会の仲間で、構想を聞かされ、少し時代を先取りしていると感じたが、ネットショッピングの拡大という時代を見越して、見事に事業を軌道に乗せた。

 同社の事例は、人口減少・需要縮小の日本経済の中で、いずれ売り上げ減少によって経営が厳しくなると考える経営者にとって、新たな事業展開を模索する上で大いに参考となるのではないだろうか。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2016年12月7日フジサンケイビジネスアイ掲載





 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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