知恵の経営

第119回

飲酒運転ゼロへ高精度化

アタックスグループ 2017年6月19日
 
独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を獲得・維持している中堅企業を紹介している。今回は業務用アルコールチェッカー、インターロック、IT点呼システムなどの開発・製造・販売を行う東海電子(静岡県富士市)の池クジラぶりを見ていきたい。

同社は1979年、杉本一成社長が創業した。大手電機メーカーの下請けとしてデジタル時計や小型電子機器の基盤組み立て、検査、組立加工を行っていたが、事業構造が不安定でやむなく何度か社員のリストラに踏み切った。杉本社長にとって、毎日が苦渋の決断だった。
下請けで蓄えたさまざまな技術を活用し、脱下請けを図りたいと悪戦苦闘したが、独自製品はなかなか生まれない。そんなとき大企業で半導体設計から高速カラープリンターの開発までを経験した技術者の都築伴三氏が入社、製品開発体制を一気に進展させるきっかけとなる。

あるとき杉本社長は、ニュース番組で飲酒による交通事故で被害者やドライバーの家族までもが突然の悲劇に見舞われるケースが社会問題になっていることを知った。「アルコール濃度を測る機械がもっとコンパクトになれば需要があるのでは」とひらめき、早速都築氏に製作を指示。杉本社長はすでに多くのアルコール測定器が出回っていたことを知らなかった。一方、都築氏もそのことを伝えず、鉄道・バス・タクシーなど業務用なら勝負できると開発に挑んだ。これが大きな転機となり2003年に国内初の「業務用アルコール測定器」が完成した。

運輸関連企業には飲酒運転事故が致命傷となるため、正確な測定・記録・不正防止の3点を業務用アルコール測定器製作の基本と考えた。従来の測定器は低精度だが値段は数千円だったことから、当初20万円以上と高額な東海電子の測定システムを顧客企業は高いと感じた。

しかし、しばらくすると「こんなに役に立つ製品はない」という評価に変わる。測定システムの精度の高さが、夜遅くまで酒を飲むドライバーを許さなかったからだ。夜遅い時間の飲酒量が減れば、睡眠時間を確保でき、健康状態も改善され、安全運行が維持される。

同社のアルコール測定システムは、11年4月から運送事業者に点呼時のアルコールチェックが義務化されたこともあり、多くの運送事業者に利用されている。その数は全国2万社以上の法人、5万カ所以上の事業所に及び、業務用でトップシェアを誇る。

同社は、世の中になかった、飲酒運転ゼロ社会に貢献できる高精度な業務用アルコール測定システムという池を創りあげ、その池クジラとなっている。


<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

2017年6月19日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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