知恵の経営

第57回

超音波技術を核に市場開拓

アタックスグループ 2016年2月17日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を続ける中小企業を紹介している。今回は世界初のトランジスタ・ポータブル魚群探知機の開発に始まり、その後も超音波技術を核に応用機器を製造販売している本多電子(愛知県豊橋市)の“池クジラ”ぶりを見ていく。

 超音波技術は1912年のタイタニック号沈没事故後に、水中の氷山を探査するニーズが高まって開発が進んだ。56年に本多洋介社長の父が、世界で初めて小型軽量のトランジスタ・ポータブル魚群探知機を開発し、専業メーカーを設立。特に米国で高く評価され、80年代初頭には売り上げの約80%を米国向けが占め、魚群探知機で世界トップに上り詰めた。

 しかし85年のプラザ合意以降の円高と87年のニューヨーク市場の株価大暴落、ブラックマンデーが業績を大きく揺るがした。当時売り上げの7割を占めた米国輸出はあっという間に半減した。

 87年に就任した本多社長は、山積みの在庫を目の当たりにして拡大志向の過ちに気づき、米販売子会社を撤退した。このつらい経験から、事業の撤退・縮小は絶対にやってはいけないと肝に銘じ、長期安定的に利益を出し続けるために知恵を絞ることの大切さを痛感した。一つの製品・市場に依存し過ぎて危機に直面した経験から、目を付けたのが創業以来携わってきた魚群探知機製造の核となる超音波技術だった。80年、重要な部品である圧電セラミックスの自社開発と量産化に成功。さまざまな周辺技術を開発し、新市場に乗り出す絶好の環境が整った。魚群探知機はもちろん半導体製造装置、医療、食品などの新しい市場を次々と創造し、超音波の総合メーカーの地位を確立してきた。

 成長した理由は2つある。一つは超音波の技術開発に特化して展示会や学会に参加、大学などの研究者と積極的に交流し技術力を深めたこと。もう一つは異業種との共同研究・開発を通してニーズを発掘し、その実現のため毎年売上高の約1割を研究開発費に充ててきたことだ。

 「研究開発費を削れば利益幅は拡大するが、当社が当社でなくなる」。また、研究開発に挑戦した人財は「成長実感を得られ大学教授や企業との新たな出会いがある。バランスシートに表れない研究開発の効果は会社の財産」と本多社長は話す。

 超音波技術を核に新しい用途と市場を切り開き、数多くの小さな“池”の圧倒的な“クジラ”となることに成功している。


<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2016年2月17日「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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