コロナ後の世界

第11回

複雑化する経済社会、“情報は疑う”を基本に

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 
食品の値上げが相次いでいる。中でも小麦や油脂類の価格上昇が目立つ。こうした値上げは世界中で起きているが、日本は食糧やエネルギー資源の大半を輸入に頼っているだけに深刻度は高い。まずいことに、円安も進んでいる。改めて思うが、日本はこういう事態に相変わらず弱い。しかも、近年はそういう構造上の欠点を補おうという議論も少ない。多いのは“金をくれ”みたいな話ばかり。

今回(2022年7月10日投票)の参議院議員選挙でも、各党の公約は減税や補助金による対策に終始している。日本というところは、食糧やエネルギーが供給途絶にでもなり、いよいよどうにもならない状況にでも置かれない限り動き出さないのかも知れない。最近そういうことをよく思う。

そんな調子だからか、どうしたらいいかを考える人や機会も少ない。考える上での情報も少ない。


1973年10月、中東の産油国が原油価格を70%も引き上げた。これに伴う物価上昇でインフレが発生。日本の経済社会は大きく混乱した。これは「第1次オイルショック」と呼ばれている。この際に起きた激しいインフレを抑えるため、日銀は公定歩合を9%まで引き上げたりもした。その際は、日本も考えた。原油の国家備蓄や原子力発電の本格化といったエネルギー政策は、一次エネルギーのほぼ全てでもあった原油の価格高騰や供給途絶に対応するための安全保障問題と考えられた。


「第1次オイルショック」から来年で50年。今夏(2022年夏)は暑い。6月中に梅雨明けし、高温となる日が多い。で、電力がひっ迫している。おまけに電気の原料(液化天然ガスなど)は歴史的な高値で推移し、これに近年ではまれにみる円安が追い打ちをかけている。


困った話だ。


食糧もそろそろ考えたほうがいいのではないかと思う。2022年の食糧需給率(カロリーベース)は37%で過去最低となっている。金額ベースでは67%。これは、日本の農業が野菜類や鶏肉、魚介類などカロリーが低めで価格が高いものにシフトしていることを反映している。それだけに、小麦や大豆などは大半を輸入に頼っている。まさに原油と同じ状況だ。


日本の農業はいろいろと制約も多くて難しい。それこそ酪農とコメと野菜では政策的にもルールなども構造面でも大きな違いがあり、それこそ専門家じゃなければ正確には理解できない感じだ。


しかし農業は大都会の住人にとっても身近だ。休耕地を活用すれば自給率なかんかすぐ上げられる、などと簡単にいう人も多い。つい先般も、18歳になり今回の参院選で初の投票に臨む若者に、こうした問題を熱心に解説している人をみたが、その内容は筆者の知る限りではほぼまったく事実ではなかった。ぜんぶ空想かウソ。不思議なことだ。


世界は近年、ますます複雑化している。複雑に組み合わさっている。グローバル化やデジタル化がこの複雑さに拍車をかけている。オイルショックになるとトイレットペーパーがなくなる、みたいな話ばかりだ。このところの暗号通貨暴落の要因の一つに電力不足や電力価格が関係しているようだ、というのもそうだ。現実は想像や予想するよりも複雑で難しい。


休耕地での農業や円安を逆手にとった輸出の大拡大、自然エネルギーの活用による脱石油、減税、助成金等のばら撒き、最低賃金の飛躍的なアップ…


いろんな人がいろんなことをいっている。


実現不可能なものもある。嫌いなこともある。前述のようなウソや作り話もある。それを堂々と自信満々で話す人たちもいる。


正しいのか、の判断は難しいが、自分の生活や仕事、近くある選挙などにつながる情報は疑ってかかるぐらいでちょうどいい。いや、そうすべきだ。そうしなくてはならないとさえ思う。



経済ジャーナリスト A


 

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