第3回
中小企業のための内定者懇親会ガイド:準備から当日、辞退防止まで
アーティエンス株式会社 執筆
内定者懇親会、何をどこまでやればいいのか迷っていませんか
「内定者懇親会はやったほうがいいとは聞くけれど、何から決めればいいのか分からない」
「大手みたいな予算も人手もかけられない」
中小企業の経営者・人事の方から、この時期になるとよくお聞きする悩みです。
ここまで丁寧に進めてきた採用が、入社前の辞退につながってしまうのは、会社にとっても、内定者本人にとっても望ましいことではありません。
実は、内定者懇親会が内定辞退の防止に効くかどうかは、予算の大きさや企画の派手さでは決まりません。内定者が抱える「見えない不安」に、どれだけ具体的に応えられるかで決まります。そして、社員一人ひとりとの距離が近い中小企業は、実はこの点で大手企業より有利な立場にあります。
本コラムでは、内定者懇親会がなぜ内定辞退の防止に効くのかを確認したうえで、企画から当日、事後フォローまでの進め方を、案内メールの文面例も交えてお伝えします。
内定者懇親会が内定辞退の防止に効く3つの理由
内定者懇親会は、内定辞退の防止に効果的な打ち手です。
理由は、内定者懇親会が「不安の解消」「組織の雰囲気の理解」「つながりづくり」という、3つの役割を同時に果たせるためです。
① 内定者一人ひとりが抱える個別の疑問に、その場で直接答えられること
1つ目は、内定者一人ひとりが抱える個別の疑問に、その場で直接答えられることです。
内定者の多くは給与や配属、働き方など、選考の場では聞きづらい不安を抱えています。入社まで不安な気持ちを持ち続けるのは内定者にとってストレスです。
内定者が安心して入社の期間まで過ごせるようにするためにも、内定者が抱える不安に対して、人事や既存社員がリアルに答えることで不安が解消され、安心感に繋がります。
② 資料や説明会では伝わらない「その場の空気」を体感してもらえること
2つ目は、資料や説明会では伝わらない「その場の空気」を体感してもらえることです。
社員同士がどんな距離感で話し、どんな雰囲気で働いているのかは、実際にその場に居合わせないと分かりません。懇親会でその雰囲気に触れることで、内定者は入社後の自分の姿を、より具体的にイメージできるようになります。
③ 入社前から「顔の見える相手」を作れること
3つ目は、入社前から「顔の見える相手」を作れることです。
内定者同士は選考の場ではほとんど話せず、既存社員とも面接で会った数人としか接点がありません。懇親会で同期や先輩と直接顔を合わせておくことで、どんな人と一緒に働くのかという不安の軽減に繋がります。
一緒に働く相手が見え、関係性を築けそうだと感じられると、内定辞退は起こりにくくなります。
この効果を裏付けるデータもあります。マイナビ総合研究所が2026年7月に発表した「内定者フォローに関する調査」(新卒1年目に入社した社会人1〜3年目、1,936名対象)では、内定期間中に受けたフォロー施策のうち、「先輩社員との交流・懇親会」への好印象度は80.1%にのぼりました。ところが、この施策を実際に実施している企業の割合は50.2%にとどまっています。
好印象度の高さに対して実施率が追いついていない施策こそ、懇親会だということです。裏を返せば、ここに丁寧に取り組むだけで、他社との差がつきやすいとも言えます。
ただし、目的をあいまいにしたまま実施すると、内定者に「なんとなく参加させられた」という印象を与え、かえって逆効果になることもあります。内定者にとっても組織にとっても意味のある時間にするために、次の章では具体的な進め方を確認していきます。
内定者懇親会の進め方:企画から事後フォローまで
内定者懇親会の企画〜運営までの流れを説明します。
企画:目的と目標を先に言葉にする
内定者懇親会は、何となく実施すると効果が出ません。まず「なぜ懇親会をやるのか」「内定者にどうなってほしいのか」を、関係者の間で言葉にしておくことが最初の一歩です。
目的・目標を定めるヒントになる問いを3つ紹介します。
⚫︎なぜ、内定者懇親会が必要だと考えたか
⚫︎懇親会を通じて、内定者にどのようになってほしいか
⚫︎入社後、新入社員としてどうなってもらうことを期待するか
目的・目標が言葉になったら、予算、参加人数、日程、会場を決めていきます。
中小企業であれば、参加人数は数名〜十数名程度になることが多く、大掛かりな会場を用意する必要はありません。社内の会議室やオフィスの一角でも、目的に合った場は十分に作れます。
事前準備:案内メールは1ヶ月前をめどに
日時・場所・概要が決まったら、内定者への案内を送ります。内定者は学生であることが多く、学校やアルバイトの予定もあるため、できるだけ早く、目安として1ヶ月前には案内を送りましょう。
案内メールに盛り込みたい項目は次のとおりです。
⚫︎日時・場所・服装・持ち物
⚫︎当日の目的・目標(何のための会かが伝わる一文)
⚫︎当日の流れの概要
⚫︎出欠連絡の締切と連絡先
案内メールの文面例です。
○○さん
こんにちは、〇〇株式会社 人事の●●です。
以前お伝えしておりました通り、★月★日に内定者懇親会を開催します。
面接では聞きづらかったことも、この機会にてぜひ解消してください。
◆日時:★月★日(★)14:00〜17:00
◆場所:本社会議室
◆服装:オフィスカジュアル
◆当日の流れ:挨拶/自己紹介/座談会/今後のご案内
※ 昨年実施した内定者懇親会の様子です。服装や当日の雰囲気などイメージいただけるかと思います。(写真や事後レポートなどのデータを共有する)
ご不明な点や、どうしても参加が難しい場合は、お気軽にご連絡ください。○○さんとお会いできるのを楽しみにしています。
あわせて、懇親会に参加してもらう既存社員も選び、目的とお願いしたい役割を事前に伝えておきましょう。
組織の雰囲気を感じてもらうこと、縦横のつながりを作ることを目指すなら、人事だけでなく現場の社員に参加してもらうことが欠かせません。
当日:目的を意識しながら進行する
当日の流れの一例は、歓迎→開会の挨拶→自己紹介→座談会→(可能であれば)職場見学→アンケート→閉会です。
中小企業であれば、この一連の流れを2〜3時間程度でコンパクトに実施することができます。
座談会は、内定者の不安や疑問を気軽に質問できる場になっているかがポイントです。既存社員のプロフィールを事前に共有しておくと、内定者が質問内容を考えやすくなります。
当日の進行台本がすぐに欲しいという方には、資料もご用意しています。以下からダウンロードしてご活用ください。
「内定者の不安を安心に変える!先輩社員との座談会 実践ガイド&進行テンプレート」
事後フォロー:懇親会は「やって終わり」にしない
実施後は、次の3つに取り組みましょう。
⚫︎参加への感謝を、具体的な会話の内容にふれながら伝える
⚫︎内定者同士が連絡を取り合えるチャットなどの場を用意する
⚫︎アンケートの声を、次回の内容に反映する
懇親会は単発のイベントではなく、内定期間全体を通じたフォローの一部として位置づけると、効果が続きます。
中小企業だからこそできる工夫
大手企業のような大規模な企画をそのまま真似る必要はありません。中小企業の強みは、経営者や社員と内定者の距離が近いことです。この強みを活かせば、少ない人数・予算でも内定者の不安にしっかり応えることができます。
たとえば、経営者自身が懇親会の冒頭で内定者に直接語りかける時間を作ることは、大手にはなかなか真似のできない中小企業ならではの強みです。会社のビジョンや内定者への期待を、経営者の言葉で伝えることは、資料やパンフレットでは伝わらない安心感につながります。
また、内定者との接点は、懇親会一度きりである必要はありません。内々内定を出す時期に1回、内定式の後にもう1回というように、入社までの間に複数回に分けて接点を持つと、内定者は「見放されていない」という実感を持ちやすくなります。
座談会をより深めたい場合は、当日の設計を1本の記事にまとめてありますので、あわせてご覧ください。
「内定者と先輩社員が参加する【座談会】の設計方法と具体例」
内定者懇親会に関するよくある質問
Q. 既存社員にも参加してもらったほうがいいですか?
組織の雰囲気を伝え、縦のつながりを作ることを目的とする場合は、既存社員の参加をおすすめします。
選ぶ際は、①内定者のロールモデルになれる人か、②懇親会の目的を理解し主体的に動ける人か、③参加者全体で組織の縮図になっているか、3点を意識すると良いでしょう。
Q. オンラインで実施する場合、気をつけることはありますか?
基本的な流れは対面と同じ形で実施できます。ただし、職場見学は難しいため、座談会の中で仕事内容を共有の範囲で伝えるなどの工夫が必要です。
また、通信環境や操作方法でつまずく内定者が出ないよう、案内の段階で簡単な手順を伝えておきましょう。
Q. 懇親会に参加できなかった内定者へのフォローはどうすればいいですか?
すでにできあがっている内定者同士の輪に、あとから加わりにくさを感じる人もいます。参加できなかった内定者に孤独感を感じさせないための工夫が必要です。
例えば、
事前に自己紹介文や動画を用意してもらい懇親会の場で紹介する、
後日改めてオンラインで自由参加の懇親会を設ける、
内定者全員が入っているチャットで挨拶や当日の内容を共有する、
といった方法が考えられます。丁寧にフォローすることが、入社前の不安を和らげることにつながります。
まとめ:懇親会を「内定期間全体のフォロー」の入口にする
内定者懇親会は、内定者の不安を解消し、組織の雰囲気を伝え、縦横のつながりを作ることで、内定辞退の防止に効果を発揮します。
特に中小企業であれば、経営者や社員との距離の近さを活かし、丁寧な目的設定と案内、当日の進行、事後フォローまでを一連の流れとして設計することで、お互いをより理解し、入社時点で信頼関係を築くことに繋がります。
入社後に新入社員として活躍しやすくするためにも、内定期間をうまく活用しましょう。
なお、アーティエンスでは新入社員の変化と成長を促す新入社員研修を実施しています。
内定者が入社後もいちはやく組織になじみ、活躍するための研修をお探しであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者

近藤 ゆみ(コンドウ ユミ)
アーティエンス(株) 研修事業部門責任者。自身も講師・コンサルタントとして従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。 専門分野は、新入社員・若手社員、採用・育成
プロフィール

アーティエンス株式会社は、2010年9月の設立から16年にわたり、新入社員から管理職・経営者まで各階層を対象とした研修・組織開発コンサルティングを提供しています。導入企業数は600社以上にのぼり、大手企業から成長期のベンチャー企業・中小企業までサービスを提供してきた実績があります。同社の特徴は、研修を「実施して終わり」にしない伴走型のスタイルにあります。企画段階からお客様と共に考え抜き、当事者意識・主体性・自律の醸成やリーダーシップ開発といった各社固有の課題に合わせて内容を設計します。さらに研修と現場を繋げるサポートもしており、学びの定着と行動変容が継続する仕組みまで一気通貫でサポートしている点も特徴です。
⚫︎youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
⚫︎ホワイトペーパー:組織開発・研修に関するお役立ち資料
Webサイト:アーティエンス株式会社
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