現場の変化につながる、組織改革・人材育成

第6回

来年度の新入社員研修、今年と同じでいい?新入社員が数名の中小企業が秋に確かめたい5つのこと

アーティエンス株式会社  執筆

 

「新入社員研修は、毎年ほぼ同じ内容で続けている」
「新入社員は数名。研修といっても、何をどこまでやればいいのか分からない」
「研修はやったものの、配属後に学んだことが生きている実感がない」

経営者や人事の方から、こうした声をよく伺います。少人数の新入社員を迎える中小企業ほど、日々の業務に追われて手が回らず、去年のやり方をなぞって研修を組むことになりがちではないでしょうか。
けれども、新入社員の価値観や職場に求められることは、年ごとに変わっています。研修の内容が今の新入社員や自社の現場に合っていなければ、会社が期待する姿に育てることは難しくなります。

では、来年度の研修を今の新入社員に合った内容にするには、何を手がかりにすればよいのでしょうか。

実は、その手がかりがいちばんそろっているのが、今の時期です。

今年入社した新入社員は、配属から半年ほどがたちました。研修で学んだことが現場でどう生きているのか、反対に、どこでつまずいているのかが見えてくるころです。
今年度の新入社員研修を担当した方の記憶も、まだ新しいでしょう。
春が近づいてから考え始めると、どうしても去年の資料を開くところから始まり、「今年の新入社員はどうだったか」を振り返らないまま、同じ内容を繰り返すことになりがちです。

今年の新入社員の様子を思い出せるうちに、来年度の研修の方向性を確かめておくだけで、来年の研修はずっと考えやすくなります。

本コラムでは、新入社員研修を成功させるための5つのチェックポイントを、来年度に向けて秋のうちに確かめておきたい5つのこととしてお伝えします。

① 今年の新入社員は、研修の内容を「自分ごと」として受け止めていたか

最初に確かめたいのは、今年の新入社員が、研修の内容を「自分に必要なこと」として受け止めていたかどうかです。

新入社員の価値観や行動の傾向は年ごとに変わっています。今の新入社員の実感に合っていない内容は、どれだけ正しくても「自分には関係ない話」として聞き流されてしまい、現場での行動の変化につながりません。
以前は効果があった内容でも、そのまま毎年繰り返していると、新入社員の側が変わっているために、いつの間にか効果が薄れていることがあります。

研修中の反応や研修後の感想を思い出しながら、次のような様子がなかったか確かめてみてください。

● 「それは知っています」「当たり前の話だった」という反応が多くなかったか
● 研修の感想が、具体的な気づきではなく「勉強になりました」だけで終わっていなかったか
● 研修で扱った場面と、配属先で実際に起きている場面がかけ離れていなかったか

こうした様子があれば、研修の内容が今の新入社員の傾向に合っていない可能性があります。

どこが合っていないのかを考えるときは、近年の新入社員に見られる傾向が手がかりになります。たとえば、近年では次のような特徴が挙げられます。

● 周りからの評価を気にして、注意や指摘を受けることを恐れる
● 入社前に思い描いていた仕事と、実際の仕事とのギャップに悩む
● 個人で成果を出す意識が強く、チームで働く意識が弱まっている

アーティエンスの新入社員研修でも、こうした変化に合わせて、フィードバックの受け止め方や入社前後のギャップへの向き合い方、チームの一員として動く視点を扱う時間を増やしてきました。

今年の新入社員がどこで「自分ごと」として受け止められなかったかが分かれば、来年の研修で何を変えるかが見えてきます。

② 今年の新入社員は、指示を待たずに自分で考えて動けているか

2つ目に確かめたいのは、今年の新入社員が、言われたことをこなすだけでなく、自分で考えて動けているかどうかです。

新入社員研修が「社会人とはこうあるべき」という正解を一方的に伝える場になっていると、新入社員は外に正解を求めるようになり、指示を待つ受け身の姿勢になりやすくなります。
正解に合わせることに疲れて、あきらめにつながってしまうこともあります。研修の中身だけでなく、研修の進め方そのものが、配属後の動き方に表れるためです。

配属後の仕事ぶりを思い出しながら、次のような様子がなかったか確かめてみてください。

● 「何をすればいいですか」と、次の指示を待っていることが多くなかったか
● 言われたことはこなすが、「もっとこうしたほうがいいのでは」と考える様子が見られなかったか
● 自分の考えを聞かれると、「正解」を探して黙ってしまうことはなかったか

こうした様子があれば、研修が「教わる場」にとどまり、自分で考える機会が少なかった可能性があります。

進め方を見直すときは、新入社員同士で考える時間を増やせるかどうかが手がかりになります。

たとえば、新入社員でチームになり実際の業務のようなケースワークに取り組む時間を設けたり、少人数のグループで問いについて話し合う、対話の時間を取り入れる方法があります。
アーティエンスの研修ではワールドカフェという対話ワークを設けており「学生と社会人は何が違うのか」「社会人として大切にしたいことは何か」などを新入社員同士で話し合い、自分の言葉にしていきます。その対話の中で自分の内側から「こうありたい」という姿を描けると、自分で答えをつくろうとする姿勢が育ち、主体性や当事者意識を持って現場に出ていけます。

新入社員研修を「講師が正解を与える場」から「新入社員同士で考え、気づきを共有する場」に変えられれば、配属後に自分で考えて動く力につながりやすくなります。

③ 今年の新入社員は、研修で学んだことを仕事に生かせているか

3つ目に確かめたいのは、研修で学んだことを、今年の新入社員が配属先の仕事の中で実際に生かせているかどうかです。

研修に多くのテーマを盛り込みすぎると、新入社員は処理しきれず「結局、何が大事だったのか」が分からなくなってしまいます。学びが浅くなり、現場では使われないまま終わってしまうこともあります。研修で扱った量が多いほど身につく、とは限らないのです。

配属先の上司や指導役の先輩に聞きながら、次のような様子がなかったか確かめてみてください。

● 研修で扱った内容のうち、現場でほとんど使われていないものはなかったか
● 「研修で聞いたことはあるが、実際にはできない」という内容はなかったか
● 反対に、「研修で扱っておいてほしかった」と配属先が感じている内容はなかったか

こうした様子があれば、研修で扱う内容が多すぎたり、重点が現場の必要とずれていたりした可能性があります。

内容を絞り直すときは、研修の目的が手がかりになります。新入社員研修で扱われる内容は、目的ごとにおおむね次の6つに分けられます。

今年の様子から「来年はどこに重点を置くか」を決め、自社が新入社員に期待することに合った内容から取り組みましょう。

あわせて、扱う時期をずらすのも一つの方法です。
たとえば論理的に考える力のような思考のスキルは、入社直後よりも、実務を2〜4か月ほど経験してからのほうが、自分の仕事に当てはめて考えやすく、効果が高まります。

また、現場で研修での学びを活かせるようにするには、講義を受けるだけよりも、新入社員自身がやってみる時間を多くとることが大切です。講義で知識を得る時間と、ロールプレイや対話で実際に使ってみる時間の割合を、おおよそ「3:7」にできるとよいでしょう。「学んだが、できない」を減らすには、実践時間を新入社員研修内で確保することが重要です。

目的ごとの研修内容をもっと知りたい方は、アーティエンスのコラム「組織の期待通りの成長へ!目的に沿った新入社員研修の内容例【事例付き】」もあわせてご覧ください。

④ 今年の新入社員は、習った型から自分なりのやり方を見つけられているか

4つ目は、研修で習った型をなぞるだけでなく、仕事の相手や場面に合わせて、自分なりのやり方を見つけられているかどうかです。

ビジネスマナーや報連相、資料のまとめ方などは、まず基本の型を身につけることが大切です。ただ、型を「覚えるもの」としか受け取っていないと、型どおりにいかない場面で手が止まってしまいます。型の先に自分なりのやり方を見つけられるかどうかは、研修で「なぜそうするのか」まで伝わっていたかに左右されます。

今年の新入社員について、次のような様子がないか確かめてみてください。

● マナーや手順を、相手や場面に関係なく型どおりに繰り返していないか
● 型どおりにいかない場面で、どうすればよいか分からず止まってしまうことはないか
● 「なぜそうするのか」を聞かれたときに、自分の言葉で説明できるか

こうした様子が目立つなら、研修が「型を覚える場」にとどまっていた可能性があります。たとえばビジネスマナーなら、作法を覚えるだけでなく「なぜこのマナーがこの相手と場にふさわしいのか」を対話で考える時間を設けると、型の意味が分かり、場面に応じて使い分けられるようになります。

ここで大きく関わるのが、講師の伝え方です。講師が「自分のころはこうだった」と過去のやり方をそのまま押し付けると、新入社員は型をなぞるだけになってしまいます。新入社員にとって講師は、学びを届ける人であると同時に「社会人のお手本」として見られる存在だからです。
来年の講師を考えるときは、社内の先輩や上司に任せる場合も外部の講師に頼む場合も、次のような点を確かめてみてください。

● 型を教えるだけでなく、「なぜそうするのか」まで伝えられるか
● 問いかけや対話で、新入社員が自分で考える時間をつくれるか
● 最近の新入社員の特徴や傾向を理解しているか
● 自分の過去の成功体験ややり方に、とらわれすぎていないか

経験を今の時代に合わせて伝え直せる講師のもとでは、新入社員は型の意味を理解し、自分なりのやり方へと広げていけます。

⑤ 配属先は、新入社員が研修で学んだことを試せる場をつくれていたか

最後は、新入社員本人ではなく、受け入れる職場の側を確かめます。配属先が、新入社員の学びを知り、試せる場をつくれていたかどうかです。

人は、時間がたつにつれて学んだ内容を忘れていくためです。人の忘却のメカニズムの研究として、時間がたつと、学んだことは忘れていくことが知られています(エビングハウスの忘却曲線)。
研修の場では前向きだった新入社員も、配属先で何も聞かれず、学んだことを試す機会もないままでは、元に戻ってしまいます。

今年の配属先について、次のような点を確かめてみてください。

● 配属先の上司や指導役の先輩は、新入社員が研修で何を学んだかを知っていたか
● 配属後に、学んだことを試せたか・つまずいたかを聞く機会があったか
● 研修から数か月たって、学びが身についているかを確かめる場があったか

ひとつでも「なかった」があれば、来年は研修のあとの流れまで決めておきましょう。たとえば次のような流れが考えられます。

研修は「やって終わり」ではなく、配属先で誰かが話を聞き、学んだことを試す機会をつくって初めて、現場での行動につながります。
今年どの段階で学びが途切れていたかを振り返れば、来年、誰がどの段階を受け持てばよいかが見えてきます。

研修の前・最中・後に確かめたいことをさらに詳しく知りたい方は、アーティエンスの資料「新入社員研修を成功に導く11のポイント」もお使いいただけます。
年間の研修企画、各研修のプログラム企画のポイントと具体例などを解説していますので、ぜひご活用ください。

まとめ:秋のうちに確かめたい5つのチェックリスト

今年の新入社員の様子を思い浮かべながら、次の5つを確かめてみてください。

● 【新入社員】研修の内容を「自分ごと」として受け止めていたか
● 【新入社員】指示を待たずに、自分で考えて動けているか
● 【新入社員】研修で学んだことを、仕事に生かせているか
● 【新入社員】習った型から、自分なりのやり方を見つけられているか
● 【配属先】新入社員が研修で学んだことを試せる場をつくれていたか

すべてを一度に確かめる必要はありません。まずは、新入社員を受け入れた上司や指導役の先輩と「今年の新入社員はどうだったか」を話すところから始めてみてください。
その会話の中に、来年の研修を考える手がかりがあるはずです。

研修の前・最中・後に確かめたいことをさらに詳しく知りたい方は、アーティエンスの資料「新入社員研修を成功に導く11のポイント」もお使いいただけます。

来年度の新入社員研修を「去年と同じ」にしないために、アーティエンスにご相談ください

「新入社員が数名なので、自社に合う研修の組み方が分からない」
「社内に講師を任せられる人がいない」

そんな方は、ぜひ一度アーティエンスにご相談ください。

私たちアーティエンスは、新入社員が「チームの一員」として動き出せるよう、新入社員研修の企画から実施、研修のあとに配属先で学びが生きるまでのフォローまでを、企業ごとの状況に合わせてご一緒しています。
新入社員が数名の企業の研修づくりも支援してきました。来年度の研修の方針を考える段階からでも、お気軽にお声がけください。


執筆者


近藤 ゆみ(コンドウ ユミ)
アーティエンス(株) 研修事業部門責任者。自身も講師・コンサルタントとして従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。 専門分野は、新入社員・若手社員、採用・育成
X:@kondo_atc


 

プロフィール

アーティエンス株式会社

アーティエンス株式会社は、2010年9月の設立から16年にわたり、新入社員から管理職・経営者まで各階層を対象とした研修・組織開発コンサルティングを提供しています。導入企業数は600社以上にのぼり、大手企業から成長期のベンチャー企業・中小企業までサービスを提供してきた実績があります。同社の特徴は、研修を「実施して終わり」にしない伴走型のスタイルにあります。企画段階からお客様と共に考え抜き、当事者意識・主体性・自律の醸成やリーダーシップ開発といった各社固有の課題に合わせて内容を設計します。さらに研修と現場を繋げるサポートもしており、学びの定着と行動変容が継続する仕組みまで一気通貫でサポートしている点も特徴です。

⚫︎youtube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル
⚫︎ホワイトペーパー:組織開発・研修に関するお役立ち資料


Webサイト:アーティエンス株式会社

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