第4回
内定辞退を防ぐ、内定者顔合わせでやってはいけない4つの失敗パターン
アーティエンス株式会社 執筆
内定式をやったのに、数週間後に「他社に決めました」という辞退の連絡が届く…。
このパターンに心当たりのある経営者・人事担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。
内定者にとって、入社前の「顔合わせ」は数少ない接点です。うまくいけば同期や先輩と早くから打ち解け、辞退の防止にもつながります。ですがその一方で、「場は設けたのに、思ったほど手応えがなかった」という声もよく聞かれます。
実は、顔合わせが手応えを生まないとき、多くの場合は話す内容や進行そのものより、「何のためにやるか」を決めないまま形だけを整えてしまっていることに原因があります。目的が曖昧なまま進行すると、内定者にとっては「知らない人たちと過ごす気まずい数時間」で終わってしまいます。
解決策はシンプルです。
①顔合わせの目的を決めずに始めないこと
②いきなり本題に入ってアイスブレイクを省かないこと
③参加する既存社員を"誰でも"にしないこと
④その場限りで終わらせないこと
この4つの「やってはいけないこと」を避けるだけで、同じ時間・同じ予算でも内定者が受け取る印象は変わります。
本コラムでは、中小企業が内定者顔合わせを企画するときにやってはいけない4つの落とし穴を、具体的な進め方とあわせてお伝えします。
1. 内定者顔合わせの「目的」を決めずに始めない
内定者顔合わせを企画するときは、まず「何のためにやるのか」を明確にする必要があります。
内定者は入社前、「この会社で本当にやっていけるか」「どんな人たちと働くのか」という人間関係の不安を、想像以上に強く抱えています。この不安をどれだけ解消し、入社への期待感を持ってもらえるかが、内定辞退の防止につながります。
内定者顔合わせの目的は、この不安に合わせて主に次の3つを押さえましょう。
⚫︎人間関係の不安を減らす:どんな人たちと働くのかを、入社前にある程度知ってもらう
⚫︎内定者同士のつながりをつくる:同期になる相手と、リラックスして話せる時間を確保する
⚫︎既存社員との縦のつながりをつくる:面接では聞けなかった仕事の実際や、職場の雰囲気を先輩から聞く機会を作る
この3つを当日の企画に落とし込むと、たとえば「自己紹介+アイスブレイク」は1つ目と2つ目、「先輩社員との座談会」は3つ目、という具合に、プログラムの一つひとつに役割を持たせられます。目的が明確なほど、内定者が「この会社は歓迎してくれている」と感じやすくなります。
最初の一歩として、顔合わせのプログラムを組む前に、上の3つから今回いちばん重視したいものを1つ選び、企画メンバーで共有しておくことをおすすめします。
たとえば「今回は人間関係の不安を減らすことを最優先にする」と決めておけば、自己紹介やアイスブレイクに多めに時間を割く、といった当日の時間配分もおのずと決めやすくなります。
2. いきなり本題に入らない:アイスブレイクを省かない
内定者顔合わせの冒頭でありがちな失敗が、「時間が限られているから」と自己紹介や本題にすぐ入ってしまうことです。緊張した状態のまま進行すると、内定者は発言しづらく、せっかくの場が一方通行の説明会になってしまいます。
そうならないためにもアイスブレイクが必要です。アイスブレイクはその名の通り初対面同士が緊張している状態(アイス)をほぐす(ブレイク)ことで、数分の準備で、場の空気そのものを変えられます。
やり方は難しくありません。たとえば次のような簡単なものでも十分です。
⚫︎他己紹介:ペアで話を聞き合い、相手を紹介し合う
ペアで深く聞き合う分、時間がかかります(1人あたり数分)。少人数(〜10名程度)で、じっくり相互理解したいときに向いています
⚫︎3秒自己紹介:一人一言、テンポよく回す
全員が一言ずつテンポよく回すだけなので、人数が多くても短時間で済みます。大人数や、最初の緊張をまず崩したいだけの導入フェーズに向いています
⚫︎共通点探しゲーム:出身地や趣味など、共通点を見つけたら挙手する
挙手制で場を巻き込むゲーム性があり、盛り上がりを作りやすいのが特徴です。参加者同士がまだ全く初対面で、雰囲気を軽くしたいときに向いています
これらのことを内定者顔合わせの冒頭5〜10分に組み込むことで、以降の自己紹介や懇親会での発言量が変わります。
これらの詳しい実施方法は、〈内定者とのアイスブレイクは必須!アイスブレイクの効果と具体例を紹介〉で紹介しています。
また、そのままコピーしてご活用いただけるアイスブレイクの投影資料も用意しています。
各アイスブレイクにはスピーカーノート(話し方の例や補足説明)を記載していますので、進行の際は、そちらを参考にしながら進めていただくと、スムーズな運営が可能です。よろしければご活用ください。
〈そのまま使える!講師用【解説】付き アイスブレイクの投影スライド〉

3. 参加する既存社員を"誰でも"にしない
顔合わせに同席してもらう既存社員は、手が空いている人に頼むのではなく、意図して選ぶことが大切です。この人選ひとつで、内定者が持ち帰る会社の印象は大きく変わります。
理由は単純で、内定者は顔合わせの場にいる既存社員の受け答えや雰囲気から、「この会社にはどんな人がいるのか」を無意識に読み取っているからです。選考中には聞けなかった本音や、面接官とは違う立場の人の言葉のほうが、内定者にとってはリアルな判断材料になります。
内定者が会社の雰囲気を理解し、入社へのモチベーションを高めるために、既存社員を選ぶときに意識したいポイントは3つです。
⚫︎ロールモデルになってほしい人か
組織が「こんな社員に育ってほしい」と思い、内定者が「こんな先輩になりたい」と憧れを持てる人を選ぶことで入社へのモチベーションを高められる
⚫︎顔合わせの目的を理解し、主体的に動ける人か
参加すること自体を面倒に感じている人が同席すると、その空気は内定者にも伝わってしまう
⚫︎組織の縮図になっているか
似たタイプの社員だけで固めず、内定者が実際に入社したときのイメージとズレない顔ぶれにする
とくに「組織の縮図になっているか」は見落とされがちですが、同じようなタイプの社員ばかりを揃えると、入社後に「聞いていた雰囲気と違った」というギャップにつながりやすくなります。
顔合わせの企画段階で「参加してほしい社員の候補」を3〜5名リストアップし、上の3つの観点で1人ずつ当てはめてみることです。これだけで、当日の人選が「空いている人」から「意図した人」に変わります。
人選ができたら、当日どんな会話をしてもらうかも具体的にイメージしておきたいところです。アーティエンスのコラム〈内定者も既存社員も入社が楽しみになる座談会とは〉では、座談会形式での進め方を紹介しています。
4. 一度で終わらせない:顔合わせのあとにつなげる
顔合わせは、当日で完結させず、その後も内定者同士がつながれる状態を作っておくことで、防止の効果が続きます。
背景には、内定から入社までの期間の長さがあります。
マイナビキャリアリサーチLabの「企業新卒内定状況調査」「企業新卒採用活動調査」をもとにまとめた記事〈内定(内々定)辞退率の動向-辞退の理由と企業の辞退対策-〉によれば、内定辞退率が「5割以上」に達した企業は41.5%にのぼり、2019年卒(21.1%)の約2倍まで増えています。顔合わせを1回行っただけでは、この期間の不安を最後まで解消しきれません。
一度きりの顔合わせで終わらせず、内定者同士が引き続き連絡を取り合える環境を用意しておくと、入社までの間に生まれる細かな不安を、内定者どうしで相談し合いながら解消していけます。
たとえば、内定者だけの連絡グループを用意しておき、次回の集まりの持ち物や服装といった小さなやり取りをそこで行えるようにしておく、といった形です。積極的に発言しない内定者がいても、やり取りを見ているだけで同期の人柄を知る機会になります。
顔合わせの最後に「今後の連絡手段」を必ず案内し、可能であればその場で内定者同士がつながれる状態を作っておくと良いでしょう。
5. まとめ|内定者顔合わせの4つのチェックポイント
内定者顔合わせで避けたい4つの落とし穴を、チェックポイントとしてお伝えします。これらを見直すだけで、顔合わせの質はぐっと高まります。
✅ 内定者顔合わせの目的を決めているか
人間関係の不安解消・内定者同士のつながり・既存社員とのつながりのうち、今回どれを重視するかを決める
✅ アイスブレイクを組み込んでいるか
冒頭5〜10分で緊張をほぐし、安心して発言できる環境を整える
✅ 既存社員を意図して選んでいるか
ロールモデル性・主体性・組織の縮図になっているかで選ぶ
✅ 顔合わせ後もつながりを保てるか
入社までつながりを保てる環境を用意する
内定者顔合わせは、内定式の一部として「なんとなく」行われがちな場です。だからこそ、目的・進行・人選を少し意識して整えるだけで、他社との差が生まれます。今回お伝えした4つのポイントを、次の顔合わせの企画から取り入れてみてください。
今日からできる、最初の一歩
「内定者顔合わせで、内定者にどんな気持ちで入社日を迎えてほしいか」を、担当者だけでもよいので、自分たちの言葉で書き出してみましょう。
不安と安心感は表裏の関係にあることが多く、たとえば「内定辞退が心配」という課題の裏には、「内定者にこんな会社だと感じて入社してほしい」という、本当に実現したい姿が隠れています。
この言語化ができていると、当日のプログラムを組むときも、参加してもらう既存社員を選ぶときも、「今回はここを一番大事にする」という軸がぶれません。「とりあえず前回と同じ内容で」と誰かに任せきりにするのではなく、目的を持って毎回設計し直すようにしましょう。
「なんとなく」で終わらせない内定者顔合わせは、アーティエンスにご相談ください
「4つのポイントは分かったが、自社の場合はどこから手をつければいいか分からない」 「目的の言語化を、一緒に整理してほしい」
そんな方は、ぜひ一度アーティエンスにご相談ください。
私たちアーティエンスは、研修サービスと組織開発コンサルティングを通して、内定者フォローから新入社員の定着・育成までを一気通貫で支援しています。
執筆者

近藤 ゆみ(コンドウ ユミ)
アーティエンス(株) 研修事業部門責任者。自身も講師・コンサルタントとして従事。前職の大手人材紹介会社では、転職希望者のキャリアカウンセリングから転職サポートまでを一貫して担当。 専門分野は、新入社員・若手社員、採用・育成
プロフィール

アーティエンス株式会社は、2010年9月の設立から16年にわたり、新入社員から管理職・経営者まで各階層を対象とした研修・組織開発コンサルティングを提供しています。導入企業数は600社以上にのぼり、大手企業から成長期のベンチャー企業・中小企業までサービスを提供してきた実績があります。同社の特徴は、研修を「実施して終わり」にしない伴走型のスタイルにあります。企画段階からお客様と共に考え抜き、当事者意識・主体性・自律の醸成やリーダーシップ開発といった各社固有の課題に合わせて内容を設計します。さらに研修と現場を繋げるサポートもしており、学びの定着と行動変容が継続する仕組みまで一気通貫でサポートしている点も特徴です。
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