プロコーチが紐解く部下育成の視点

第2回

部下を「承認」するということ

五十嵐 久 2015年2月4日
 

従業員が会社への働きがい、仕事へのやりがいを感じるのはどのような時でしょうか?

有名な一流企業に身を置いている。

高賃金で、福利厚生が充実している。

それもあるでしょう。しかし、最も重要な要素は、経営者や管理職へリスペクトを感じている時なのではないでしょうか。つまり上司や社長に対する「信頼」さらに「敬意」があることが最も「やる気」につながるのではないかと考えます。

 社長が謙虚になって社員を信頼することはもちろん大切ですが、逆に社員から上司や社長への「信頼」が生まれれば、自分が属している会社や組織に対する「誇り」も生まれ、社員が皆そのような思いを持てば当然社員間の「連帯感」が醸成されます。

社長に対する信頼・尊敬が生まれるとき

社員の社長に対する「信頼」あるいは「尊敬」はどのようなときに生まれるのでしょう。

経営者の経営手腕に惹かれたとき、というのがまず挙げられます。それにリーダーとしての意志決定力に敬服したときという場合もあるでしょう。しかし、何よりも経営者側、管理者側もまた一般社員を「承認」し、マネジメント側と一般社員側の双方が互いに認め合っている関係が築けているときと答える人が多いのではないでしょうか。これがひいては「会社の業績向上」につながると考えます。業績を伸ばすのも悪化させるのも、経営者と一般社員との「信頼」の密度にかかってくると言ってよいでしょう。

 仕事の担い手は社員です。その社員のモチベーションが高くなければ、顧客を説得できることもできないし、新しいアイデアも生まれません。本気で仕事に取り組まない社員ばかりとなれば、倦怠感が蔓延するだらけた職場になってしまいます。結果、業績は悪化の一途を辿り、社長は危機感を募らせて恫喝指示を繰り返し、いつの間にか有能な社員は皆辞め、年中社員を募集しなければならなくなる、という悪循環に陥ってしまいます。

社員のモチベーションが低下するとき

ある調査で、社員に「どのようなときに仕事へのモチベーションが低下しますか」というアンケートを実施した際、「経営陣や上司への信頼を失くしたとき」という回答が最も多く、70%近い人がそう答えていました。次いで多い回答が「賃金や処遇への不満」が約50%。そして3番目が「努力・成果が正当に評価されない」で、これには約40%の社員がそう感じているとのことでした。

2位の待遇への不満はお金の問題ですが、1位の「経営陣や上司への信頼を失くしたとき」と3位の「努力・成果が正当に評価されない」は、上司と部下の信頼関係の欠如です。社員の立場から言えば「経営者や管理職に対する不信感」が募っている状態です。

経営者が業績の悪化を社員の能力のなさと捉え、社員は経営者へ不満を抱えていれば、職場の人間関係は破綻します。社員のモチベーションが高まるはずがありません。そしてますます上下のコミュニケーションの機会は減少し、お互いを疑心暗鬼でしか見られなくなる最悪の状態に陥ってしまいます。

そうならないために、経営者や管理職の人達は職場の十全な人間関係の形成に気配りをした組織運営が必要になる、ということですが、それにはまず社長自身が謙虚になり、部下を承認し、自分は部下に支えられているという意識を持つことが大切なのではないでしょうか。

 
 

株式会社コーチビジネス研究所
五十嵐 久

新潟県小千谷市出身、埼玉県川口市在住。
大学卒業後、公的な中小企業支援機関に勤務。
中小企業診断士として、経営相談、資金調達支援、創業支援、再生支援業務、人材育成などに従事。2007年から、銀座コーチングスクールにてコーチングを学び、同年10月同スクール認定コーチとなる。以後、起業を目指す方や中小企業経営者の方を主な対象に、コンサルティングとコーチングを融合させたコンサルティング・コーチとしてサポートする傍ら、埼玉県浦和駅前並びに東京・池袋にてプロコーチ養成のためのコーチングスクールなどを運営している。2014年3月(株)コーチビジネス研究所設立、代表取締役就任。銀座コーチングスクール埼玉校、池袋校共同代表。中小企業診断士、銀座コーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ、日本マーケティングコーチ協会認定マスターコーチ、産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

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