プロコーチが紐解く部下育成の視点

第10回

最期まで聞き通す

五十嵐 久 2015年10月7日
 
日常的な仕事の場面で、上司が部下から報告を受けたり相談されたりしたとき、あるいは社長が社員から話を聞く場面で、上位の人たちはどのような態度で耳を傾けたらよいのでしょうか。また、どのような受け答えをしたらよいのでしょうか。

・的確なアドバイスをする。

・励ます。

・俺に任せておけと、胸を叩く。

 どれも社員には嬉しいレスポンスでしょうが、一番大切なのは、「部下の意見をなるべく否定せず最後まで聞き通す」ことではないでしょうか。

 深刻な相談や報告であればあるほど、ひとしきり話をさせる、すべて吐き出させることです。途中で口を挟みたい、そうじゃないと否定したい、でもそこをぐっと堪えて部下が満足するまで話させてあげることが肝心なのです。そして、すぐに否定はせずに「ありがとう。君の意見はわかった」とひとまず受け入れてからご自分の意見を述べてみてはどうでしょう。

 さらに、自分の意見やアドバイスは述べず最後まで部下に考えさせる(自分自身で解決させる)という方法もあります。

「君の意見も確かに一理ある」

とまず肯定しておいて

「しかし、今の流通ルートを大幅に改善することでどこかに皺寄せが来ないか?」

と否定するのではなく部下に質問します。

「確かに地方の小売店には商品が十分に行きわたらなくなる可能性がありますね」と部下。

「今、当社を支えているのは、そのような地方の小売店ではないのかい?」とさらに質問を重ねます。

「うーん、確かにそうですね」

「君のアイデアを組み入れ、さらに地方の小売店にもこれまで通りに商品を供給できるシステムは考えられないか?」

「わかりました。もう少し考えてみます」

という会話の流れになれば理想的です。アドバイスをしたり「俺に任せておけ」という対応だと、下手をすると「難しいことは全部上司に相談すればなんとかなる」といった受け身で、依存度の高い前項にも登場した「指示待ち」部下がはびこってしまうことにもなりません。

部下を信頼する


 質問を重ね部下に気づきを促して自分で解決させると部下は少しずつ自信を持つようになるのです。

上司が部下の言葉を傾聴し受け止めることによって、部門の中に互いを理解しようという雰囲気が生まれます。それが職場の安心感の基礎になり、情報交換の機会が増え、互いをより理解できるようになると、部門に連帯が生まれ一人ひとりがより安心して仕事に向えるようになります。

上司が傾聴を心がける背景には、「部下たちは、それぞれに潜在能力を備えた存在であり、できる存在である。そして彼ら(彼女ら)は、よりよい仕事をすることを望んでいる」と、部下たちを信頼することから始まります。信頼し、承認して、部下が成果を上げることのできる仕組みを提供して、その中で成長することをサポートするのが上司の役割だと思います。
 
 

株式会社コーチビジネス研究所
五十嵐 久

新潟県小千谷市出身、埼玉県川口市在住。
大学卒業後、公的な中小企業支援機関に勤務。
中小企業診断士として、経営相談、資金調達支援、創業支援、再生支援業務、人材育成などに従事。2007年から、銀座コーチングスクールにてコーチングを学び、同年10月同スクール認定コーチとなる。以後、起業を目指す方や中小企業経営者の方を主な対象に、コンサルティングとコーチングを融合させたコンサルティング・コーチとしてサポートする傍ら、埼玉県浦和駅前並びに東京・池袋にてプロコーチ養成のためのコーチングスクールなどを運営している。2014年3月(株)コーチビジネス研究所設立、代表取締役就任。銀座コーチングスクール埼玉校、池袋校共同代表。中小企業診断士、銀座コーチングスクール認定プロフェッショナルコーチ、日本マーケティングコーチ協会認定マスターコーチ、産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

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