第6回
「何が課題なのか」を正しく見極められるか
有限会社 人事・労務 金野 美香
課題解決力が大切、とはよく言いますが、そもそも何が“課題”なのかを捉え間違えてしまったり“問題”との違いを見極められないでいると、いくら良い解決策を考えたとしても、単なる対処療法にしかなりません。
「問題」というのは、個々で生じている事象であり、その事象に対する対応の仕方が「問題解決」です。例えば、インバスケットテストにおいて、主人公である課長が相対する「部下から相談の時間が欲しいと連絡があった」「お客様からクレームが入った」といった個別の案件が“事象”にあたります。それに対して「課題」とは、複数の問題の集合体であり、表にはまだ見えていないものも含めて複合的な組み合わせから見えてきたテーマに対する対応法が「課題解決」となります。先述の例で言うと、「部下からの相談」と「お客様からのクレーム」は一見何のつながりも無い別個の問題と捉えることもできますが、そこに「パワハラを受けたという匿名メール」「同じ部署の他の社員が数か月前に退職」という情報が重なると、「上司部下間のコミュニケーションがうまくいかずパワハラ等の不信感が生まれ職場が不活性状態」という推測ができ、そこに更に裏付け情報が加われば「職場のコミュニケーション不足」という課題が見いだされ、それに対する解決策を講じる、という流れになります。
「課題」を正しく見い出すには、まず「ビジョン(目指すべき姿)」を明確にすることが重要です。そのビジョンをゴールとした時に、ゴールとの間に生じているギャップが「課題」です。ギャップを埋めるためにさまざまな解決策を講じていきます。
ビジョンを正しく描くためには、全体を俯瞰したり中長期で考えたりする視点の高さが必要です。目の前のことばかり見ていては、ビジョンを描くことはできません。その為、インバスケットテストで目の前の問題を解決する力を強化するだけではなく、個別の案件を踏まえてどのような課題が生じているのかを考えまとめる「課題抽出力」の強化が重要なのです。この課題抽出力を見極めるために、人材アセスメントにケーススタディなどを導入することもあります。
プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」