社会によろこばれる会社のESを軸とした組織づくり

第7回

若手社員、部下のやる気を持続させるリーダーシップとは

 

 『社会によろこばれる会社のESを軸とした組織づくり』という大テーマにある 「組織づくり」にはリーダーの存在が欠かせないということは言うまでもありません。 いま、職場でリーダーとして実際に部下がいらっしゃる方、またはこれからリーダーの 職に就かれるであろう方、みなさんはリーダーシップということばをどのようにとらえて いらっしゃいますか。
漠然とした問いなので即答できないかもしれません。 リーダーシップや、モチベーションに関しては、書店に足を運べば たくさんの指南書が並びこれらを手に取ることが出来ます。 インターネットでもキーワードを入れて検索すればたくさんのヒットがあります。 それだけ関心の高いテーマなのでしょう。

●「リーダーシップ」とは

リーダーシップについて本稿のテーマは「若手社員、部下のやる気を持続させる」 ということですが、まずリーダーシップについて考えてみましょう。

「リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。 仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない」と、 かの有名な経営学者ピーター・F・ドラッカーは『現代の経営』でこのように書いています。 リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもない。ドラッカーは、意味あるリーダーシップとは、 組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することだと言っています。リーダーとは、 目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者といえます。ドラッカーは リーダーシップとは仕事であると断言しています。リーダーシップの素地として、責任の原則、 成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはない。このように語っています。

リーダーシップとは、特別な資質やカリスマ性を保有することではない、これは仕事であり、 仕事としての役回りなのだというわけですね。そうであれば、誰もがリーダーになれる可能性がある ということで、リーダーという言葉に必要以上に構えたり、何かものすごいパワーを発揮しなければ ならないのではないかとひるむ必要はないということです。

 しかし、働くことの目的、働くことに対する価値観は人それぞれです。会社の中を見れば、年齢層、 生活スタイルも異なる人達の集まり、これが組織の実態です。その組織をどのように束ねて、 どのように引っ張っていくか、これは、リーダーとして常に頭の中にある課題ではないでしょうか。

 ハーバード大学教授のロバート・カッツは、「リーダーが身につけるべきスキル」として 「コンセプチュアルスキル」というものを挙げています。まず仕事においては3つのスキルが 求められるとしています。

・テクニカルスキル(業務遂行能力・業務処理能力)

・ヒューマンスキル(対人関係能力、"気づく"・"聴く"・"伝える")

・コンセプチュアルスキル
(論理的思考力、問題解決能力、応用力、 つまり組織全体に影響力を与えPDCAサイクルをまわすこと)

 これらの3つのスキルの中で、新入社員をはじめとする一般社員は、 まず自分の仕事をしっかりこなすことが求められるので、テクニカルスキルの習得に 力を入れることが必要です。一方、リーダーや経営幹部層は、コンセプチュアルスキルが 重要となってきます。PDCAをまわして組織全体に影響力を与える場合には、 影響力の強弱と同時にどのように影響力を発揮するかという点も大事になってきます。

●ワンマンとサーバントの顔を使い分ける

 ここで、組織への影響力の発揮の仕方に関して、2つのリーダーシップスタイルをご紹介したいと思います。

 1つは「牽引型のリーダーシップ」です。リーダーシップというと一般的には、この牽引型がまず頭に浮かぶと思います。 組織のメンバーを鼓舞しながらぐいぐいと引っ張っていく、俺についてこいというタイプです。 高い目標を掲げ情熱・勇気を持って先頭を走る姿や、鋭い観察力で先を見据えた将来像を示すことにより、 メンバーや部下は感銘を受けてついていくのです。

 もう1つは、「サーバントリーダーシップ」です。奉仕型リーダーシップとも言います。これは部下に仕える、 従属する、こびるという意味では決してありません。後方からメンバーを支えて背中を後押しし、 時に下から支えながら自ら考えさせる、自ら動かざるを得ない状況を作り出すようにするのです。 資生堂の元社長池田守男氏は資生堂の改革において、サーバントリーダーシップの考えをとっています。 「上の地位にある者が、第一線に指示をして仕事の仕方を変えさせるのではなく、第一線がやりやすいように仕事の環境を整え、 彼らの自主的な改善を後押しするサーバント・リーダーシップの考え方が、社員の意識改革に変化をもたせた」と おっしゃっています。

この2つのリーダーシップスタイルは、牽引型が時としてワンマンというマイナスイメージをもたれたり、 奉仕型が心優しいというプラスイメージをもたれる事もありますが、どちらが良いとか優れているというものではありません。 どちらのリーダーシップスタイルも自分が掲げる目標に対して強い使命感や志を持ち、その実現のためにとる手法なので、 どちらかに偏る必要はありません。また、場合によってはリーダーは状況に応じて顔を使い分けることも目標達成のためには 有効です。リーダーは時に牽引型の手法をとり、時にサーバントの顔をもつ、そういったことでも良いのです。

 では次に、リーダー自身のやる気、モチベーションについてみていきましょう。リーダー自身のやる気、モチベーションを 高い状態にして、それをいかに持続するかということは、様々な場面でリーダーシップを発揮する際に非常に重要になってきます。

 リーダーシップを発揮するには4つの視点が必要と言われています。1つ目は「志」です。 自分の会社の仕事を通して実現したい夢や常に持ち続ける信念がどうであるかが問われます。 2つ目は「人間力」です。これは、リーダーとして魅力的な言動や一社会人としての確固たる価値観を 育んでいるかどうかです。3つ目は「ルール」で、組織における共通のルールがあり、機能している 状態としているかということです。そして4つ目が「システム」です。組織の PDCA をまわすための マネジメントシステムを確立しているかということです。これらの4つの視点をバランス良く備えることが求められます。 これが備わっていない場合、どのようなことが起きるのでしょうか。先の大震災のような危機的状況におかれた時に、 思考停止状態に陥り、ただ「危険だ、大変だ」と騒いでいる社長や管理職の方も実際にいらっしゃいました。 「計画停電だから会社に車で来たのでガソリン代200円を請求されているがどうしたらよいか?」という相談や、 社長からは「この際、社員を解雇したい、地震といういい口実ができた」など愚痴ともとれる発言が実際にありました。 少し厳しい言い方をすれば、このようなリーダーは、「ルール」と「システム」のもとでしか意思決定ができず、 その枠組みの中でしか能力を発揮できない社長であり管理職であると言えます。

ですから、真のリーダーにはリーダー自身の「志」と「人間力」というポテンシャルを備える必要があるのです。

 ただ、これは、一朝一夕で身につくものではありません。これを身につけるためには、企業の経営幹部や管理職などリーダーたちが、 日々起こる事象を自分ごととして捉え、「どんな意味があるのか」と自らに問いかけ、人間力を鍛えていく 「内省(セルフコーチング)」の時間を持つことが、非常に重要です。 例えば、日々の業務では様々な出来事があり、様々な場面に遭遇すると思います。部下とのコミュニケーションや 報告連絡相談で何か問題が起きたときに、「○○さんはまだ若いから・・・」とか、 「△△さんはああいう性格だから・・・」等々、部下本人の問題として捉えれば、そこで終わりです。 しかし、「なぜそのような部下の言動が引き出されたのか?」、「なぜ自分に言いにくいのか ? 」など"自分が源"として 捉えれば、さまざまな改善点や解決策が見えてくるのではないでしょうか。これは、自分の志や人間力そのものの 課題と向き合うことにもなるので、心地よい時間にはなりません。しかし、この「自分自身の現状に関して自問自答する」 「自分自身の課題に対して内省する」という場をもてるかどうかが、リーダーとして持続的に成長し部下と共に仕事をして いくとことができるかどうかの分かれ道となるのです。

 ただ、この内省というのは、心がけだけでは続きませんので、内省するように仕掛けを施すことが必要です。 例えば弊社が発行する『職場の習慣』という冊子を使うことが有効です。この冊子は、日々の気づきや反省点などを "日誌"として書き留めていくツールです。
(http://www.jinji-roumu.com/es/es16.html)
毎日続けていくと、 だいたい 3 週間くらいで「一日の自分の言動を振り返り明日の改善点を考える」習慣が身につきます。 さらに継続すると、日々の自分の心の状態や思考パターン、あるいは部下の言動の変化や成長した姿などを察知する "アンテナ"が研ぎ澄まされていきます。そして、次第にリーダーとしての判断基準が築かれ、大局的に物事を捉えたり 未来に向けたビジョンを描いたり、という思考が形成されるのです。

 内省という事で言えば、サッカーの日本代表選手であり、ワールドカップではキャプテンを務めた長谷部選手は、 ご自身の著書の中で「心を整える」ことをとても意識されているそうです。どんなに忙しくても一日の終わりに30分、 落ち着いて自分自身と向き合う時間を作っているそうです。メンタルを強くする、磨くという考え方と同じように 心を整える、自分自身と向き合うことは非常に大事なことではないでしょうか。

 まずはリーダー自身、リーダーシップについて自問自答を続けながら変わっていくこと、 そのために「職場の週間」の活用や日記を書き続けることをお勧めします。

●「やる気を持続」させるために

 では、本題の若手社員や部下のやる気を持続させるにはどのようにリーダーシップを発揮したらよいのかについて 考えてみましょう。

今の新社会人、若者は総じて非合理なことには納得しないと言われています。 行動は等価交換であり、「割に合わない」ことは行動しないとも言われています。 ゆとり教育を受けてきた世代故に指導しようにも思うようにいかないという嘆きとも 愚痴とも言えない話も聞かれます。そんなものなのか(諦めるしかないのか)、 時代が違うから仕方ないのか・・・。しかし、その一方で先の震災においては、 若者達のがんばりに多くの年配者が励まされたという声も聞こえてきます。 若者の口からは「自分たちが頑張らなくては」ということばが発せられました。 そこには割にあうあわないというモノサシは存在していません。少ない物資を暴徒化せず、 きちんと並び分け合う精神、助け合う精神。これはどういうことなのでしょう。 いざとなったとき、私達は「人としてどうあるか」という点において、 生まれた時代は関係なく世代間の壁もないということではないでしょうか。 あの震災では、あまりにも深刻・悲惨な状況であったこと、これが老いも若きも 関係なく突きつけられた「共通の現実」で、その状況下では目に見えない 「共通の思い」が存在していたのでしょう。

 

 ですから、職場における部下のやる気ということに話を戻しますと、 震災時と比較するものでは到底ありませんが、若手社員と接する際に 自分と年代が異なる人達だから「今時の若者は・・・」といった色眼鏡でみたり、 こちらの話を到底理解してはもらえないだろうと構える必要は無いということです。

そこで、部下のやる気を持続させることにつながる2つの取り組みをご紹介したいと思います。

 

 1つ目は、今の「自分の仕事」に対する思いや価値観、「経営理念」に対しての 自分自身の思いなど、仕事にまつわる思いを「語る場」をつくりましょうということです。

 まず働くことの価値観を自分自身で見つめる(認識する・積極的に意識する)こと、 価値観に他の人と差があるならばその違いをお互いに認めることが必要です。 その上で、組織づくり・ミッション達成のためにお互いの価値観を擦り合わせながら 「共通の思い」という価値観を築く取り組みを行うのです。この過程で徐々に 組織は強い組織になってきます。強い組織とは言い換えればひとりひとりの仕事に対する モチベーションが高い状態と言えるでしょう。

 このような状態を生み出すには、「語る場」が不可欠です。IT技術がどんなに進んでも、 アナログ的な活動は決してないがしろにしてはいけません。むしろこういったベタな活動こそ 継続することが大切です。それによって即効性こそありませんが、組織に対して、 そしてひとりひとりのモチベーションの向上・維持に対してもじわりじわりと効いてくるのです。

 

 具体的にはどうしたらよいかを見ていきます。仕事について語るのは「飲み会」で 仕事の話をするぐらい(大半が愚痴で飲んでストレス解消!ということも?)という 職場もあるかもしれません。はじめの一歩として是非、「語る場」を設けることから 始めてみてください。朝の朝礼時でも良いですし、定期的なミーティングの際にでも 構いません。お酒が入らずマジメに仕事の話をすることなんてと、最初は うまく行かないかもしれませんが、まずは続けることが大事です。 「場」をつくったら仕事について「対話(ダイアログ)」のスタートです。 職場にクレドがあれば、このクレドを活用するのが良いでしょう。

 また、先述の「職場の習慣」を活用することも出来ます。 例えば、クレドの項目○番目の事項を意識して、電話の応対に努めたところ、 お客様から声が明るくて元気がもらえるとお褒めの言葉をもらったなど、 クレドを軸にした仕事上の体験を皆の前で発表し、そこから対話へと繋げていきます。 対話からきっと新たな気づきがあるでしょう。また、承認する・されるといったことが メンバー内に生まれてくるはずです。

 ここで注意していただきたいことは、「会話」と「対話」は似ているようで違うということです。 「会話」とは、私たちが普段の生活において、言葉を通して、お互い気持ちを交わしたり、 何かしら用を足したりするための話のやりとりのことです。朝起きて「おはよう」と声をかけたり、 ご飯を食べるときに「いただきます」と言うのも会話の一種です。

しかし、「対話」は少し違います。対話とは単なる言葉のやりとりではありません。 時には対立も含んだ上で言葉のやりとりをして、何かを生み出すとか何かに繋げる行為を指します。 対話の大切な点は、自分とは異なる存在の話を聞きたい、という気持ちがあるということです。 職場とは自分と異なる存在の集まりといっても過言ではありません。このような集まりなのですから、 語る「場」を設けて対話を始める際には、「大人的な対話の場にしようね」ということを あらかじめ共通ルールとしておくことが必要です。大人的というのは言葉のウラを返せば、 幼稚な態度はやめようね、そこにいるだけとか常に相手に難癖をつける様な態度はやめようねといったことです。 これでは対話をする環境ではないからです。対話をするのだから自分の感じ方や考えに責任をもって話そうよ。 お互いに責任をもって話すのだから、真剣に聞こうよという事です。ここから真の対話が生まれます。 時にお互いに異なっている部分が大きいことを認め合うような境地に至ることもあるかもしれません。
しかし、そこからまた新たな対話が生まれる場合もあるのです。対話が出来ている状態とは、 相手の話を真剣に聞くことが出来ていることです。そうすると相手の話を十分理解することが可能となります。 それによって今度は自分自身の思考もより深まっていくのです。
しかし「真剣に聞く」と言うのは、 簡単そうで実はなかなか難しいことです。真剣に聞くには、まず相手に対して関心を持つ、向き合う姿勢が必要です。 と同時に、積極的に聞く姿勢も大事になってきます。
例えば、部下が「昨日、お客様ですごく感じの悪い方がいて・・・・」と 話はじめたときに、「お客様に対して批判するなんて何事!」「また愚痴を言い始めた・・・」 「私は現場に出ることはないから関係ないわ。」という気持ちで聞くのか、 「○○さんにどんな問題がおきたのか?、なぜ?」という気持ちで聞くかです。 前者の場合は、最初から心のシャッターがおろされてしまっていますから、これ以上の対話は期待できません。 言った本人も言わなければ良かったと思い、今後このような類の話をするのはやめようと思うかもしれません。 そのことは、仕事自体の進め方の改善や職場体制の見直し、職場の風土改善の目を摘んでしまうことになるかもしれません。 後者の場合、「へぇ、そんなことがあったのか。そのとき売り場には君以外にいなかったのかな?」などの 問い返しが生まれ対話がどんどん展開していきます。すると、話し始めた本人自身も意識していなかった考えが 見えてきたり、そこにいるメンバーに新たな気づきを与えるなど、そこからいろいろな可能性を生み出します。 ですから、仕事にまつわる思いを語る場を設ける際には、ここでは会話ではなく対話をするのだという事を意識して進めることが重要です。 対話を進めるための7つのポイントがあります。対話の場を有意義な時間としていただくためにも、 このポイントを紙に書き出して対話のスタート時にメンバーで読み上げて確認しあうのも良い方法でしょう。

1楽しく議論する。

2肩書きや立場を忘れる。

3グチや文句を言わない。

4人の話をよく聴く。

5相手を否定しない。

6思い込みを捨てる。

7最後までやりきる。

  そしてもう一つ、部下のやる気の持続に関するリーダーシップとして、 山田養蜂所の山田社長のお言葉を紹介したいと思います。

  「社員に働く大切さやコンプライアンスを守らせるためには規程や ルールをいくら言っても無駄である。そんなことをするくらいならどんどん社員を 社会貢献的な活動に参加させた方がよい。そうすれば社員は自然と自己に誇りを持ち、 働くことに意味を見出し、職場のルールを守るようになる。」

 

 これは、普段自分たちが生活する世界よりもっと広い世界、 社会に目を向けそこに自分の身を置いてみることで、 考えさせられる・視野が広がる・感性のアンテナが研ぎ澄まされるというものです。 きっとこの時に自問自答が心の中で起きるはずです。それが、ひとりひとりの内面を成長させ、 仕事にも良い影響を及ぼし行動も自然と変わってくるということなのです。 あえて普段の生活とは異なる世界に身を置くことで、自分は社会と繋がっていることに気づかされる、 自利から他利の意味を考える機会なのかもしれません。社会貢献活動やボランティア活動は、 やらされ感でやるものではありません。しかし、そういった場へリーダーがそれとなく背中を押してやることも 時には必要となってくるでしょう。そのためにはリーダー自身もこれらの活動を まずやってみることが大事になってきます。

●大切なのは目には見えない"内発的なモチベーション"

 ここまでお読みいただいて、やる気に関して「金銭的報酬」が出てこないなあと 思われたかもしれません。実はやる気、モチベーションには2つの種類があります。 1つは「外発的モチベーション」で、頑張ることで物質的な報酬や評価を得ようとする意欲です。 もう1つは「内発的モチベーション」でこれはやっている仕事や遊びの内容自体に面白さや 充実感などを感じて頑張ろうとする意欲です。一般的に内発的モチベーションの方が集中力が高く 良い結果を出すと言われています。ですからリーダーはこの内発的モチベーションに着目する 必要があります。ただ、この内発的モチベーションはちょっとしたことがきっかけで 簡単に外発的モチベーションにシフトダウンしてしまうことがあります。

例えば、「近所の道路そうじ」を自ら進んで行っていたとします。もちろん金銭的には無報酬です。 これらの行為をすることで自分自身の中での満足感や通り過ぎる人から「ありがとう」と 言われるひと言がその人にとっての報酬であり、これは内発的動機付けによっての行動です。 ある日、この行為に対して金銭が絡んだとします。「道路掃除をしたら1,000円」となった途端に、 金銭を求めての行動でなかったにもかかわらず、外的報酬をもらわないとその行為が したくなくなってしまうのです。これはアンダーマイニング効果と言われるものです。 無意識のうちにその行為に対して求める対価(価値)が置き換わってしまったのです。 人の役に立つためという思いでの行動が、金銭を得るための行動に変わってしまい、 金銭が得られないなら行動する意味がないと無意識に判断しているのです。

 

 部下の仕事をきちんと評価し、それを給料(金銭)に反映させることはとても 大事なことです。そして金銭的報酬がモチベーションを高める要因となることは事実です。 ただ、みなさん自身の経験を思い出してみてください。給料が上がった直後は、 仕事に対するモチベーションは上がったと思います。これが1箇月後、 2箇月後どうだったでしょうか。外発的モチベーションの金銭は、やる気を持続させる 観点からは大きな期待は持てないことが分かります。そればかりか、時には アンダーマイニング効果と言ったやる気の足かせにもなり兼ねない要素を含んでいるため、 やる気の持続には適切な方法とは言えないと思います。

 

 逆の見方をすれば、仕事には金銭的報酬が必ずついてくるので、リーダーはより 「内発的なモチベーション」に目を向け、部下のやる気を持続させるようなリーダーシップを 発揮する必要があると言えるのではないでしょうか。

 リーダー自身の内省を行うこと、職場で「対話の場」を設けて部下自身にも内省を促し、 職場・組織全体を変えていくこと、さらに社会貢献活動などを通して自分の立ち位置を 見つめなおし成長を促すこと、このような取り組みがやる気を持続させるための方法として 挙げられます。

 

 しかし、これらは直接生産性に結びつくとは言い難く、また効果を数値化することも 出来ないので分かりにくいものでもあります。言ってみればこのような取り組みにあてる 時間は一見非効率的な時間です。しかし実際にはとても大切な時間なのです。

 

 いま、ご自身が抱えている仕事や課題を「仕事の重要度の高低、緊急度の高低」という 観点から分類してみてください。私たちはどうしても重要度も緊急度も高い仕事に 目が行きがちです。しかし「重要度は高いけれど緊急度は低い」という部類は、 中長期的視点から見た場合非常に大事なところです。『社会に喜ばれる小さな会社の組織づくり』、 そして若手社員や部下のやる気を持続させることにリーダーシップを発揮することは まさにここにあてはまるかと思います。いまこの「重要度高・緊急度低」に どのぐらいの割合を充てていらっしゃいますか?一般的に、経営者層は8割、 管理職は5~6割が理想といわれています。そのためにはこの一見非効率的な時間を いかに捻出するかが課題となってくるでしょう。リーダーは効率的にすべきところは 徹底的に効率化することが必要です。そしてこれからは、リーダーは優先順位でなく 劣後順位(あれもこれも大事だけれど、何を捨てていくのか)で見極めるという考え方も大切になってくるでしょう。

第7回コラム執筆者

小林 妙子(こばやし たえこ)

小林 妙子(こばやし たえこ)

(有)人事・労務パートナーESコンサルタント
(東京都社会保険労務士会中野杉並支部所属)
日本ES開発協会 広報委員会 アドバイザー
中小企業福祉事業団幹事
特定社会保険労務士
第1種衛生管理者

明治学院大学社会学部卒業後、大手道路舗装会社で関連会社統括部署に所属して労務に関する仕事に携わる。 その後専業主婦として過ごした5年間に社会保険労務士試験合格、社会保険労務士事務所での勤務を経て2006年開業。
中小企業を中心に、労働・社会保険手続き、給与計算、規則規程の整備などの業務、労務相談、ならびに ESクレド導入コンサルティングなどで活躍。
ヒューマンリソシア会員向け講座「新任管理職のためのリーダーシップ強化セミナー」「管理職のための労務管理基礎知識」、 千葉県指定工場協議会主催講演会「今日からすぐにはじめられる!会社が元気になる7つの施策」、その他リーダー向けES研修等のセミナー講師も行なっている。
日本ES開発協会では、ESの軸を人事制度に導入する重要性を提唱し、広報委員として広報活動に取り組んでいる。

URL:http://www.jinji-roumu.com/unyou/index.html

 
 

プロフィール

有限会社人事・労務

現在社長を務める矢萩大輔が、1995年に26歳の時に東京都内最年少で開設した社労士事務所が母体となり、1998年に人事・労務コンサルタント集団として設立。これまでに390社を超える人事制度・賃金制度、ESコンサルティング、就業規則作成などのコンサルティング実績がある。2004年から社員のES(従業員満足)向上を中心とした取り組みやES向上型人事制度の構築などを支援しており、多くの企業から共感を得ている。最近は「社会によろこばれる会社の組織づくり」を積極的に支援するために、これまでのES(従業員満足)に環境軸、社会軸などのSS(社会的満足)の視点も加え、幅広く企業の活性化のためのコンサルティングを行い、ソーシャル・コンサルティングファームとして企業の社会貢献とビジネスの融合の実現を目指している。

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