社会によろこばれる会社のESを軸とした組織づくり

第5回

従業員のES、社会、環境への意識を高めるグリーンクレド

 

日本社会全体の未来のストーリーに"共感する場"をつくる

人々の価値観は、モノやお金中心の資本主義から「共感」中心の資本主義へと変化し始めています。 3月11日の東日本大震災後、その変化はますます顕著なものになってきたいと思います。 では、「共感資本」とは何なのでしょうか。
「共感資本」とは、「爽やか」「アクティブさ」など、 人々がその企業に対して感じているイメージがもたらす目に見えない資本のことを指します。
例えば、皆さんご存じのアメリカのコカコーラ社は、共感資本が7兆円あると言われています。 また、ミネラルウォーターで有名なフランスのボルヴィック社は、「1Lfor10L」として、 1リットル当たりの買い上げに対し、アフリカの井戸から10リットルの水を産み出す取り組みを行う事で、 企業ブランドを高める事に成功しました。
最近のヒット商品を見ていると、「それを使っている自分が素敵」「そこに所属している自分が誇らしい」 「そのサービスを受ける事でこんな自分に変身できる」といった「自己投影型」商品が多く見受けられます。 「自己投影型」の商品がヒットしている時代の流れからも分かる様に、 人々の価値観が既に資本主義から「共感資本」へと変化している事がお分かりでしょう。
自己投影型社会へと変化しているこの時代において、これからの企業の競争軸は「共感資本」となります。 人々が良いイメージを持っている企業の製品を購入し利用する事で、 「それを使っている自分が素敵」「そこに所属している自分が誇らしい」 「そのサービスを受ける事でこんな自分に変身できる」といった気持ちになり、 またその企業で働いている社員は、「そこに所属している自分が誇らしい」という気持ちになるのです。
震災から4カ月経過した中で、今後はさらに、日本復興という大きなストーリーに対して共感する資本を会社の中で、作りだしてゆかなくてはなりません。 つまり、お客様の傾向として、単に企業規模や売り上げの多い会社の商品には共感しなくなってきており、 いくら企業規模が大きくても、イメージが良く映らない会社の商品は買わなくなってきています。
これからは、“日本復興”という長く大きなストーリーに対しての共感資本が会社の中に組み込まれていないと、その会社の商品は売れなくなると言われています。 震災後、「売り上げの何%を被災地へお届けします」という新聞広告を見かける様になったのはまさにその裏付けとも言えるでしょう。 なぜなら、商品やサービスの中に日本のこれからの誇り、または東北や日本全体の復興へのイメージが見い出せないと、その商品やサービスは市場へ出回っていかなくなってしまうからなのです。
それでは、「共感資本」を高める為に、企業はどの様な取り組みを行っていけば良いのでしょうか。 それには「共感を呼び込む様な場を作る」事が重要です。
例えば、皆さんが砂粒の中から砂鉄を集める時に、砂鉄1粒1粒を顕微鏡で調べて集めるより、「磁場」を作ってそれに反応する物を集めた方が、ずっと効率が上がります。「共感資本」という「磁場」を作り出し、貴社のストーリーに共感し、引きつけられる事によってお客様を作り上げていく…まさにこの「磁場作り」こそが共感資本を高めていく事に他ならないのです。

社員の「環境・社会」とのつながりを強めるグリーンクレド

最近「クレド」という言葉を耳にしますが、「クレド」とは何なのでしょうか。
「クレド」とは、会社やその社員が常に心に留め、自分で考えて行動する際に、よりどころとすべき原則を記したものです。 皆さんが行動していくにあたっての心のアンテナになります。 皆さんはこの「共感資本」つくりに協力していく、この様なコンセプトのもと社員の価値観を決めて具体的に行動、商品やサービスを創りだしていきます。
人間は、経営理念に環境や地域資源等への取り組みが書いてあったとしても、それらに対して「ありがとう」という気持ちがなければ、 行動には移せませんし、逆に、普段から地域・社会・環境などに対してありがたいと思わない人は、そういった行動は起こさない、いや起こせないでしょう。
皆さんが、兄弟や親、先祖や友人をありがたいと思うからこそ、それに報いようと思って行動するのと同じ様に、普段から空気や水、地域、郷土などに対してありがたいと思わなければ、行動に移せません。
そうした事に対し、心のアンテナを張り行動する事、それがクレドとなります。
クレドで日々の活動を繰り返すうちに、社内で「共感資本」の大切さが広がっていくのです。
ここで、クレドが有名な企業を二つご紹介します。
まずは、ザ・リッツカールトン・ホテルです。ここでは、全スタッフが常にクレドが書かれたカードを携帯し、そこに書かれた基本方針をもとに、自ら考え行動する事により、「感動のサービス」を実現していますが、ここで留意する事は「感動のサービス」を実現するには、最高のチームワークも欠かせないという事です。
自律した社員一人ひとりと、会社全体のチームワークで作り上げるこの「感動のサービス」が、同社の「ブランド力」となっているのです。「ブランド力」のある会社は、お客様から選ばれるのはもちろんのこと、売上や売り上げを生じるチャンス、優秀なスタッフなども引き寄せ、持続発展していく事ができます。
二番目にご紹介するのが、ジョンソン&ジョンソンです。ここでは、お客様・社員・地域・株主に対する四つの使命や責任感をクレドにまとめ、社内やグループ各社社員へ提唱しています。
以上の事例から「自律型社員」を育み、会社全体で仕事観を共有でき、同じ方向にベクトルを合わせる事ができるツールこそがクレドであり、「ブランド力」の高い会社つくりの中枢をなしている事が分かります。
この様に、「クレド」の導入には、ES(従業員が満足して向上の面だけではなく、CSの向上やチームワーク力向上、ブランド力の向上など、多くのメリットがあります

これからの時代の“グリーンクレド”

ここでは、「社会によろこばれる」という事を主軸につくりあげるクレドという意味で、「グリーンクレド」という切り口から話を進めてみたいと思います。
「グリーン」とは、地球環境や地域・社会と関わりや社員、取引先も大切にするといった、“人と社会と環境にやさしい”利他的なモノサシを持つ事を意味します。
「エコロジカル」(環境に配慮した)という言葉はよく使われますが、「グリーン」にはこれに加えて「ソーシャル」(社会的な)や「エシカル」(倫理的な)などの視点が入ってきます。
以前、日本経済新聞に「エシカル消費」についての記事が掲載されていました。内容は、商品やサービスを選ぶ際、社会的に配慮したものを優先する消費者が増加している、という記事でした。
内閣府の2010年度の調査によると、日本人の65%は「日頃、社会の一員として何か社会の為に役立ちたい」と考えており、この傾向は、右肩上がりに増えているという事です。 以上の事からも、これからの自己投影型社会では「社会によろこばれる」という利他的な視点を持つ「グリーン」な会社がますます選ばれる、と言えるでしょう。
この様に「グリーンクレド」とは、“地球や社会や自分を取り巻く人々に率先して良い事を行う、利他的なモノサシを持った自律型社員を増やす”事を主目的としたクレドなのです。

“グリーンクレド”の作り方

それでは以下に具体的な「グリーンクレド」の作り方を簡単に説明していきましょう。 1.つながりインタビュー
まず初めに、会社で働く仲間との仕事上のつながりを対話を通して掘り下げていきます。例えば、どの様な価値観を持って働いているか、を題材として対話を進め、仲間同士の理解を深めます。この一連過程を「つながりインタビュー」といいます。 2.価値観を共有する
「つながりインタビュー」の内容を読み合わせて共有し、共感できるキーワードを付箋に書き出します。集まった付箋を模造紙に貼り出し、内容ごとにグループにまとめます。 この一連過程を「ブレーンストーミング」といいます。
3.共感するキーワードを言葉にまとめる
対話を重ねながら、「2.価値観を共有する」で整理したキーワードを分かりやすい表現でまとめ、グリーンクレドとして文章化します。
4.グリーンクレド発表会
全社員でグリーンクレドを共有するため、「グリーンクレド発表会」を企画・開催し、グリーンクレドの理解を深め、活用への参画を促します。
以上、おおまかに1から4のステップを通して、「グリーンクレド」を作成していきます。 完成まで時間はかかりますが、その過程で必ずや社員同士の絆が深まり、会社や社員一人ひとりにとって、大切なことが見えてくるでしょう。

グリーンクレドが完成したら、次は一番大切なグリーンクレドの実践・運用になります。「構築3割、運用7割」と言われるように、折角丹精込めて作られたグリーンクレドも、実際に活用されないままでは、絵に描いた餅に終わってしまいます。 グリーンクレドを日常業務の中で実践し続けることで、社員一人ひとりが自社の仕事を通して「環境・社会」への意識を高め、誇りをもって働くことができます。 そのような一人ひとりの“誇り”“志”の総量が、組織の志の大きさとなり、「社会によろこばれる会社」として持続的に成長することができるのです。。

第5回コラム執筆者

齋藤 恵(さいとう さとし)

齋藤 恵(さいとう さとし)

有限会社人事・労務新潟オフィス チーフコンサルタント
日本ES開発協会 実行委員会 幹事
社会保険労務士
社会福祉士
介護支援専門員

10年間社会福祉施設で働きながら、社会保険労務士・社会福祉士資格を取得。
「職員が満足して仕事をしなければ、利用者なんて満足できる訳がない」をモットーに、介護保険事業所を顧問先とした人事・労務管理制度の構築・運用サポートを提案。現場の勤務経験から培った社会福祉法規・知識・技術・トレンドを盛り込んだ提案は評価が高い。

また、今夏より新潟県では数少ない農業関連団体専門の社会保険労務士として、自身で野菜を栽培しながら活動を開始。現在、野菜ソムリエも勉強中。7月から長岡新聞コラムにて好評連載中。

URL:http://www.jinji-roumu.com/unyou/index.html

 
 

プロフィール

有限会社人事・労務

現在社長を務める矢萩大輔が、1995年に26歳の時に東京都内最年少で開設した社労士事務所が母体となり、1998年に人事・労務コンサルタント集団として設立。これまでに390社を超える人事制度・賃金制度、ESコンサルティング、就業規則作成などのコンサルティング実績がある。2004年から社員のES(従業員満足)向上を中心とした取り組みやES向上型人事制度の構築などを支援しており、多くの企業から共感を得ている。最近は「社会によろこばれる会社の組織づくり」を積極的に支援するために、これまでのES(従業員満足)に環境軸、社会軸などのSS(社会的満足)の視点も加え、幅広く企業の活性化のためのコンサルティングを行い、ソーシャル・コンサルティングファームとして企業の社会貢献とビジネスの融合の実現を目指している。

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する