第19回
共創を選択肢に入れてみる
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤伸夫

2026年も第4クオーター、陸上トラック競技なら最終ストレートを走る段階です。今年を良い年にするために、今、何ができるか?一つに、共創を実現できるかもしれません。言葉としてはよく聞くようになった共創を現実にしていくために何ができるか、考えていきます。
数多くの選択肢での成功要因:共創
コロナ禍以降、K字回復という言葉が生まれました。事業活動が思うようにできなかったコロナ禍のトンネルをやっと抜けた後、業況を回復させられる企業と、そうはいかず不調が続いてしまう企業とに分化していることを表す言葉です。
最近はこの言葉を聞く回数が減った気がしますが、その現象がなくなった訳ではなく継続している、以前より極端化しているという印象です。
では、その差はどこから生まれているか?要因は様々です。例えば飲食店は、コロナ禍時は行動制限により全ての店で来店者数が極端に減少しました。しかし収束後は、ある飲食店では顧客が戻ったが、別の飲食店では戻らなかったという差が生じています。
その理由は各店の問題もあるかもしれませんが多くの場合、地域のトレンドなど自社には対応しようのない事業環境によるものです。行動制限が約3年続いたことで店舗を取り巻く顧客も変化してしまい、例えば店周にあった企業が撤退などしてしまったことが原因である場合もあるようです。
このような場合、企業としてはどうすれば良いのか?「耐える」、「他へ移転する」などの選択肢が考えられる中、いくつかの企業はその他のソリューションを見つけ出しました。ある企業は食品関係で強みを出せる惣菜業に転業しました。
自社物件であった店舗は畳んでしまい、不動産賃貸業に転業した企業もあります。雑貨など、他業態に転業した例もあるようです。
耐えるにせよ移転するにせよ、または転業の場合でも、次の局面で成功できた企業をつぶさに見ると他企業、あるいは地域など「他」との共創が成功要因となった、唯一の成功要因ではなくても再生を後押しした重要な要因として挙げられる例が多かったと感じています。
「我が社」単独ではなし得なかった状況打破をなし得た訳ですから、他を頼ることはある意味当然なのかも知れません。
ピンチに瀕した企業でも可能な「小さな共創」
「ピンチに直面した企業が、共創なんて悠長な取組みができるだろうか?」との声が聞こえてきそうです。確かに共創には最初は関係作りから、それも相互理解という時間と手間のかかる取組みから始めなければならない場合もあります。一方で、速効性のある共創もあります。
人材不足の環境下で体調を崩してしまったメンバーの補充ができなかったことと、食材等の値上がりのため利益の確保が難しくなったため一時は廃業も検討していたある居酒屋は、顧客との共創で困難を乗り切ることができました。メニューをコース(ビール・焼酎飲み放題付)のみに限定すると共に、ビールや焼酎以外の飲料は料金無料で持込可としたのです。
アラカルト料理を止めることで廃棄が少なくなり粗利益を相当に改善できたと共に、顧客毎に様々なこだわりを持つ日本酒やワインは持込可とすることで多額の在庫資金負担からも解放されました。持込飲料はもちろんビールや焼酎までセルフサービスとすることと、メニューをコースだけにすることにより、最低人数で営業できるようにもなりました。
これはもちろん、顧客の納得なしに実現することはできません。当店の場合、丁寧なチラシを作成して固定客を中心とした既存客に事情を説明することで納得を引き出すことができました。
「そんなに苦労しているなら応援方々一度は訪れてみよう」と来店した顧客は、決まったタイミングで料理が出るので心置きなく歓談できることとや、飲み物は自分の好きな時に好きなだけ飲めること、そしてメニューを指定できないが廃棄がないことから実現する圧倒的なコストパフォーマンスに感銘を受け、今まで以上のリピーターとなったそうです。
このお店の店主に「どうしてこんなサービスを思い付いたのか?」を問うと、「当店は至近距離にある市場から新鮮な魚介類が仕入れられることでお客様に喜んでもらってきた。欠員や原材料や資材・エネルギー価格の高騰等は大変な困難だが、それが原因で店が続けられなくなり、お客様も当店の名物料理が食べられなくなることには耐えきれない。ではどうすれば良いかと考えたら、お客様の力を借りられると気が付いた」と語っていました。
自社と顧客をとことん愛したことで小さな共創に気付けたことが、この居酒屋を守ったと言えるでしょう。
本コラムの印刷版を用意しています
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
<印刷版のダウンロードはこちらから>
https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=871
【筆者へのご相談等はこちらから】
https://stratecutions.jp/contacts/
<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DYDL46H6/
なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。
この連載の前後の記事
プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)
中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA
日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。
現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。
新型コロナウイルス感染症が収束して社会的にも中小企業金融においても「平時」に戻ったとの声がある中、今後は「共創」を目指す企業が躍進していく時代になると確信、全ての中小企業がビジョンを描いて持続と発展を目指すよう提案することとして「共創型金融の時代!あなたはビジョンを描けますか?」コラムを2025年10月からスタートさせた。
【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』
さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。
Webサイト:StrateCutions
あわせて読みたい
- 第19回 共創を選択肢に入れてみる
- 第18回 共成功信念をどうやって共有するか
- 第17回 共成功信念とWin-Winとの違い
- 第16回 共創の成功条件:「共成功」信念
- 第15回 危機を共創の入り口にする
- 第14回 「社員が共創パートナーにならない」に対処する
- 第13回 社員を共創パートナーに変える方法
- 第12回 社員を実行者から共創パートナーに変える
- 第11回 共創に取り組む方法
- 第10回 共創を現状打開の切り札にする
- 第9回 共創の環に地域金融機関を加えてみる
- 第8回 金融機関と共創する出発点
- 第7回 金融機関との共創を考える
- 第6回 視線を外(共創)に向けるメリット
- 第5回 競合相手との“共創”を考えてみる
- 第4回 社員の悩みは私の悩みと考え“共創”する
- 第3回 私の悩みは地域のお悩みと考え“共創”する
- 第2回 「共創型」を企業が必要とする理由
- 第1回 「共創型金融」コラムがスタート!
