マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第39回

横方向のフィードバック

落藤 伸夫 2018年1月26日
 
「先日は縦階層のフィードバックについて教えて頂きました。敢えて、そういう表現をされたということは、横方向のフィードバックもあるという意味ですか?」

「そうなんだ。今日はそれを話そうと思う。」


横方向のフィードバックとは

「先日の縦階層のフィードバックについては、とてもしっくりきました。現場の業務コントロールと経営陣の戦略コントロールをマネジャーがマネジメント・コントロールで繋がないと、時には会社にとって致命的な意思決定がなされてしまう可能性があるというお話でしたね。」

「そうなんだ。マネジメント・コントロールには、経営者と現場を繋ぐというとても重要な役割がある。」

「肝に銘じます。」

「そして今日言いたいのは、そういう会社にとって重要な役割を果たすマネジメント・コントロールを行う時に、マネジャーには、仲間と連携して欲しいということが言いたいんだ。」

「なるほど。それは多分、マネジャーの役割にある『連携』について改善することを言っておられるのですね。」

「そういうことだ。」


分業しながら仕事する例

「連携とは、何だった?」

「会社が会社として成果をあげるのは、一つの製品やサービスを生産してお客様に届けるためのサプライチェーンを部署や個人で分担する、つまり分業をうまく機能させた時でした。各部署や個人が、自分の都合だけを重視していたのでは、良いパフォーマンスを出すことができません。それで連携が必要になるのです。」

「そうだな。連携がパフォーマンスの鍵になることについて、何か経験はないか?」

「あります。1つのロットの大きさをどうするかについて、各部門の利害が対立したことです。水道関係の金属製品を扱う我が社では、だいたい、大きく分けて鋳造・研磨・メッキ・仕上げの工程が連携して仕事をしています。」

「ふむふむ。」

「1つのロットのベストな大きさについて、鋳造・研磨・メッキ・仕上げの工程はバラバラです。例えばある品番の水道栓の取っ手部分だと、鋳造は100、研磨は200、メッキは1,000、仕上げは500といった感じです。」

「そうだな。その状態で連携しないと、どうなる?」

「各々が自分のやりたいように仕事することにこだわると、作業効率はとても低い水準に留まるでしょう。」

「そうだな。鋳造は100ずつ半製品を流す。研磨は200溜まるまで仕事しない。メッキは1,000溜まるまで仕事しない。」

「それは、仕事せずに遊んでいる空き時間ができてしまっているということですね。」

「一方で仕上げは、許容量以上の仕事が一気に舞い込んでてんてこ舞いになるだろう。」

「見えないコストがかかっていますね。」

「そうだな。プラス、仕事が溜まるまで、もしくは仕事ができるようになるまで半製品をストックしておくスペースも必要になっている。こういうコストは、ほとんど気にされることはないが、実は会社に莫大なお金を支出させているんだ。」

「これに気が付いて対応するか否かで、同業者であっても、パフォーマンスに大きな違いが生じるわけですね。」

「そうなんだ。各工程のロットの大きさを均一化し、同じタイミングで流すようにすれば、会社としては非常に大きなメリットを受けられることになる。」

「それを実現できるよう、各工程を連携させなければならない訳ですね。」

「そういうことだ。」


連携を機能させるには

「今あげた連携には非常に大きなメリットがありますが、現場に任せておいて自然に成り立つものではなさそうですね。」

「そうだな。連携は、時には、大きな負担を現場に強いる時もあるからな。つまり、現場マネジャーがリードしている業務コントロールだけでは、連携への取組みが行われるとは、事実上、期待できないということだな。」

「そういうことになりますね。」

「では、どうしたら良い?」

「上級マネジャーの出番だということですね。」

「そういうことだ。複数の現場部門を統括している上級マネジャーが『部下である複数の部署を連携させればもっと成果が上がる』と考えて、連携するように促すわけだ。」

「了解です。ただし、それを行うのは非常に難しいです。先の例でいうと、統一すべきロットの大きさを決めるのは大変です。実際に我が社でも、誰の希望を叶えるかで関係はギスギスしたものになりました。」

「そうだな。その場合、どうすれば良い?」

「分かりません。」


調整は機能するか?

「先ほど中川部長が話してくれた、『統一すべきロットの大きさを決めるため、誰の希望を叶えるかを決めるのは難しかった』という体験、これには大変な意味があると思う。」

「どのような意味ですか?」

「連携は、調整では難しい場合があるということだ。もっというと、妥協や誰かの犠牲では成り立ちにくいということだ。」

「どういう意味ですか?」

「だって、実際そうしたのだろう?鋳造が押す100、研磨が主張する200、メッキの1,000、そして仕上げが希望する500のうち、どれに決めるかを議論したのではないのか?」

「そうです。」

「それは、どの大きさに決まったとしても、関係者の妥協や、自分の意見が通らなかった者の犠牲で成り立つ連携と言えないか?」

「確かにそうです。」

「複数当事者の利害が揃わない場合、俺たちは『誰の顔を立てて誰に泣いてもらうか』と考えがちだけれど、そうではないんだ。それは、頭を使わずに結論を出そうとする上では、簡便な方策だ。しかし、それでもって合理的な答えが出るとは限らない。」


並行する複数のフィードバックを活用

「そう言われれば、そうですけど。それ以外の方法があるのですか?」

「もちろんあるさ。複数部署の連携で生み出されたパフォーマンスを基準にした判断だよ。そしてそれは横系列のフィードバックによって行われる。」

「複数部署の連携で生み出されたパフォーマンス?どういう意味ですか?」

「連携が必要な複数部署を抱える上級マネジャーの立場になって考えてもらおう。そうしたら、見えてくることはないか。」

「なんとなく、わかったような気がします。彼は、複数の部署が分業体制で取り組んでいる仕事について、責任を負っています。自分が行ったマネジメントによって、複数の部署はそれぞれ対応する。そして、それによって全体としてのパフォーマンスが実現するわけです。」

「そうだな。それで?」

「上級マネジャーとしては、いろいろ試す中で、最もパフォーマンスの良いマネジメントを選択すれば良いという意味ですね。」

「例えばどのように?」

「一つのロットの大きさを100から1,000まで変えてゆき、一番パフォーマンスが高まる個数を選べば良いという意味ですね。」

「ご名答。」

「例えばですが、300個で最もパフォーマンスが上がったなら、誰も主張しなかったその数に決めても良い訳です。」

「そういうことだ。」

「連携を推進しようとすると、目の前のことだけを考えると自分にとって都合が良いとは言えないこともある。しかし会社全体を考えると、連携は必要不可欠だ。会社全体のパフォーマンスが向上すれば、自分たちにとってもメリットがある。そういう構図を作り上げ、みんなを巻き込んでいくことが、連携のマネジメントのキモになる部分だと思う。」

「そういう重要な役割を、上級マネジャーが担っているんですね。」

「そういうことだ!」
 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

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