「上級マネジャーがフィードバックしながらマネジメントを改善すべきことを教えて頂きました。」
「そうだな。今日は、上級マネジャーのフィードバックと、それ以外の者が行うフィードバックについて伝えようと思う。」
「他の者が行うフィードバックですか?どういう意味ですか?」
現場が行う業務コントロール
「最初は、現場が行うフィードバックだ。」
「あ、分かりました。業務改善のフィードバックですね。」
「そういうことだ。会社の中で製品やサービスなどお客さまがお金を払ってくれる付加価値を生産しているのは現場だ。現場では、もっと品質の良い製品を、もっと効率的に生産するために絶えず改善を行っている。」
「これが業務改善な訳ですね。」
「そうだな。マネジメント・コントロールと対比すると『業務コントロール』と言っても良いだろう。」
「改善しながら業務目標を達成することに着目した言い方ですね。」
経営陣が行う戦略コントロール
「一方で企業では、業容拡大や市場変化への対応策として経営陣が経営理念を掲げている。」
「企業の目指すべき姿を明らかにし、現場にそれを目指すよう促す訳ですね。時には新製品や新業務を模索することもあると思います。」
「そうだな。経営戦略や経営理念などの方針等の優劣によって会社のパフォーマンスには大きな違いが出るから、経営陣はいつも、戦略のことを気に掛けている。」
「なるほど。『戦略コントロール』する訳ですね。」
「そうだな。」
マネジメント・コントロールの位置付け
「このように話すと、マネジメント・コントロールの位置付けが分かってもらえたのではないかな。」
「はい。マネジャーは、経営陣と現場の間に立って両者を取り持っていました。縦の階層区分を、繋いでいた訳です。」
「そうだ。そうやって現場が適切に機能し業務コントロールできるよう促すと共に、経営戦略を実施するため仕事を変革するよう、マネジャーはマネジメントしている訳だ。」
「なるほど。」
「これはつまり、どういう意味だ?」
「マネジメント・コントロールが、業務コントロールと戦略コントロールを取り持っているということですか?」
「そういうことだ。」
「マネジメント・コントロールが、業務コントロールと戦略コントロールを取り持っているという表現、日本語として、これが成り立つことは分かります。でも、どういう意味なのですか?」
マネジメント・コントロールの役割
「マネジャーが上手くマネジメント・コントロールしなければ、経営陣の戦略コントロールも現場の業務コントロールもうまく機能しないということだよ。」
「なるほど。これも、言葉としては分かります。どういう意味ですか?」
「現場が一生懸命に業務を遂行し、それを改善する業務コントロールを行なっている。しかし、それでも戦略に対応できていない。例えば新製品に向けた現場体制の切り替えができていないんだ。その理由として、何が考えられる。」
「マネジメント・コントロールが上手く機能していないという理由が考えられますね。新製品に向けた現場体制切り替えへの作業が、きちんとマネジメントされていないのです。」
「そうだな。つまりマネジメント・コントロールが上手く機能していないと、業務コントロールが適切な成果を出すことができない。」
「分かります。」
会社の命運を握るマネジメント・コントロール
「また、その状況で経営陣が『成果が不十分なので戦略を再検討しよう』と考えたとしよう。『本当は新製品を開発するのが最善の方策なのだが、我が社の現場にはそれは無理のようだ。効果は劣るが、次善の策に切り替えざるを得ない』と。」
「本当は新製品に向けた体制切り替えは可能なのに、マネジメントが悪くて上手く行っていないという事情なのにですか?それは、ひどいですね。」
「そうだよ。本当は適切な戦略を誤解に基づき放棄するのは、会社にとって大きな損失だ。ましてや、その理由が稚拙なマネジメントのため現場が戦略を実行できなかったことにあるなら、目も当てられない。」
「本当です。マネジャーは、経営陣と現場を繋ぐことで、会社の命運を握っているのですね。」
「そういうことだ。確かに、マネジメントを改善していくこと、つまりマネジメントをコントロールするのは大変だ。特に、今の日本ではマネジメント・コントロールの考え方が定着していないからな。方法論がわからないことを実行するように言われても、『難しい』としか、答えようがないだろう。」
「そのとおりです。いつも私、そのように感じています。」
「でも、今考えてもらったように、マネジャーの役割は重大だ。マネジャーがうまく働かないと、会社が成り立たなくなってしまう。」
「おっしゃるとおりです。裏を返せば、やりがいのある仕事だということでもありますね。」
「その通りだ。だからマネジャーには、自分が行うマネジメントを絶えず改善してもらいたいんだよ。」
プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫
昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。
昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。
今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。
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