イノベーションズアイ BtoBビジネスメディア

経営者・人事担当者のための未来系人事情報

第4回目

震災関連情報4

 

今回のコラムを執筆する、有限会社人事・労務の畑中と申します。
このコラムでは、社会保険労務士事務所を母体とした人事コンサルティング会社として、私たちの専門分野である労務管理の視点から見た震災に対しての対応策をまとめております。
経営者の皆様、人事・総務担当者の皆様のお仕事のご参考にしていただければ幸いでございます。

計画停電による休業の取り扱いについて

会社の責めによって社員に休業を命じた場合について(原則論)

社員に休業を命じた場合の原則ですが労働基準法第26条の定めにより使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中その労働者に、その平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないとされております。すでに、第1回目のレポートで述べたように、停電などで会社の営業が難しい場合であっても、原則でお話をいたしますと、会社の都合で社員を休ませる場合は休ませた社員に対して、平均賃金の6割以上を休業手当として支払わないといけないということになります。

今回の計画停電により社員に休業させた場合は例外とできる
⇒休業手当を払わなくていい場合がある

  1. 計画停電中の休業は、休業手当の支給は不要となる。
  2. 計画停電の前後の休業についても、休業手当が不要なることがある。
  3. 計画停電が実施されなかった場合に、休業としてしまった場合でも、休業手当が不要となることがある。

ポイント① 計画停電中の休業は、休業手当の支給は不要となる

今回の地震の影響で、計画停電により会社が業務をすることができなくなった為、社員に休業を命じた場合ですが、2011年3月15日、厚生労働省より以下の通達が発表されました。

こちらの通達によれば、計画停電中については、それを理由に休業しても休業手当の支払いは不要ということです。つまり、その間(停電による休業中)の賃金は支払わなくてもいいということです。

ポイント② 計画停電の前後の休業についても、休業手当が不要なることがある。

また、計画停電をしていない休業時間についてですが、通達では「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには計画停電の時間帯以外の時間帯も使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」と表現されております。つまり、まさに停電中に休業することはもちろん、その前後などの時間の営業が現実的に難しいような場合は、停電中の時間以外の休業についても、休業手当を支払う必要はないということになります。

どこまでが、「計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる」かは、難しいところです。しかし、例えば、夕方5時まで営業する店において、昼の1時から4時までが計画停電だった場合、4時から5時まで1時間だけ店を営業するというのは、現実的ではないでしょう。このような場合は、午後1時から5時までの休業において、休業手当の支払いは必要ないと認められるのではと考えられます。

ポイント③ 計画停電が実施されなかった場合に、休業としてしまった場合でも、休業手当が不要となることがある。

計画停電が予定されていたが、実際には停電がなかった場合ですが、これについても、計画停電の予定に合わせて休業を計画していた場合に、直前に停電が回避されたとしても急に営業できるわけではありません。このようなケースも、休業手当の支払いは必要ないということです。

厚生労働省による通達

(基監発0315第1号 平成23年3月15日)

都道府県労働局労働基準部監督課長 殿

厚生労働省労働基準局監督課長

計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取り扱いについて

休電による休業の場合の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第26条の取り扱いについては、「電力不足に伴う労働基準法の運用について」(昭和26年10月11日付け基発第696号。以下「局長通達」という。)の第1の1において示されているところである。
今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。この場合における局長通達の取り扱いは下記のとおりであるので、了知されたい。

  1. 計画停電の時間における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。
  2. 計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当すること。ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。
  3. 計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。

その他、震災の影響下における労務管理について情報はこちらをご参照ください。

このコラムは

  • 御社の社内での人事対応資料としてお使いください。
  • どうぞご自由にコピーをしてお使いください。
  • 内容に関しご質問がありましたら弊社までお問い合わせください。

ぜひ、本情報を被災地の方々にもお伝え頂ければと思います。
また、この件でのご質問に関しては、電話、メールにて無料でお受けしております。
(すでに多くのご質問をいただいております関係でご返事に多少お時間をいただく場合もございますが、ご了承ください。)

少しでも早く日本の社会が望みある未来へ向けて動き出せるように、心よりお祈り申し上げます。
(当レポートは平成23年3月28日までに発表された情報をもとに作成しております)

第4回コラム執筆者

畑中 義雄(はたなかよしお)

畑中 義雄(はたなかよしお)

有限会社人事・労務 チーフコンサルタント
社会保険労務士
95年 関西大学法学部法律学科卒業後、卸売り専門商社の営業職を経て2001年社会保険労務士試験合格。主に中小企業を中心に事業主の立場にたった経営・人事相談を行う。特に賃金・評価制度においては、日本型年俸制度、コンピテンシー、目標管理などを用いたオリジナル人事制度構築を数多く手掛け、クライアント企業の活性化と業績アップに多くの成果をあげている。働き方に合わせた裁量労働制の導入や社内規定の整備についても積極的に取り組んでおり、05年4月にスタートした個人情報保護法にも早くから対応した社内制度を提案するなど、多方面から企業をサポートしている。

URL:http://www.jinji-roumu.com

 
 

プロフィール

有限会社人事・労務

現在社長を務める矢萩大輔が、1995年に26歳の時に東京都内最年少で開設した社労士事務所が母体となり、1998年に人事・労務コンサルタント集団として設立。これまでに390社を超える人事制度・賃金制度、ESコンサルティング、就業規則作成などのコンサルティング実績がある。2004年から社員のES(従業員満足)向上を中心とした取り組みやES向上型人事制度の構築などを支援しており、多くの企業から共感を得ている。最近は「社会によろこばれる会社の組織づくり」を積極的に支援するために、これまでのES(従業員満足)に環境軸、社会軸などのSS(社会的満足)の視点も加え、幅広く企業の活性化のためのコンサルティングを行い、ソーシャル・コンサルティングファームとして企業の社会貢献とビジネスの融合の実現を目指している。


Webサイト:有限会社 人事・労務

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