経営者・人事担当者のための未来系人事情報

第3回目

震災関連情報3

 

今回のコラムを執筆する、有限会社人事・労務の生頼と申します。
このコラムでは、社会保険労務士事務所を母体とした人事コンサルティング会社として、私たちの専門分野である労務管理の視点から見た震災に対しての対応策をまとめております。
経営者の皆様、人事・総務担当者の皆様のお仕事のご参考にしていただければ幸いでございます。

1)メンタルヘルス

日本は地震大国と呼ばれているほど、過去に大規模な震災を経験してきていますが、震災による被災者のメンタルヘルスに注目されはじめたのは阪神・淡路大震災以降と言われています。ここでは、阪神・淡路大震災と新潟県中越沖地震の2つの事例から被災者の心理状態が地震発生直後からどのように推移していくのかと、会社(人事労務部門)がどのように対応していくべきなのかについてまとめました。

被災者の心理状態の変化について

  1. 急性期(災害発生直後から数日間)

    被災者の心理状態

    災害の直後はその災害の衝撃に圧倒されて、どの被災者も身体や思考や感情、行動などにも様々な影響が出てきます。集中力や記憶力が低下し、ものごとを合理的に考えることができなくなります。また怒りと悲しみで情緒不安定に陥ることもあります。

    メンタルケアの方向

    まずは、被災者の身体面や心理的な状態を把握し、深刻な場合は速やかに医療支援チームや専門家・機関につなげるなど緊急支援がケアの中心となります。被災者は非常に不安な状態なので、情報が被災者に十分行き届いているかを確認し、情報を被災者全員に伝達するようにしましょう。

  2. 反応期(1週間から6週間)

    被災者の心理状態

    非常事態で興奮し、抑えられていた感情がわきでてくる時期になります。
    つらかった出来事がよみがえったり悪夢を見たり緊張感が高まったりイライラ・孤立感が増したりして抑うつ的な状態になることがしばしばあります。

    メンタルケアの方向

    被災者の身体面や心理面の状態を継続して把握しておく必要があります。
    深刻な状態の人には、短時間でも話を聞く機会を持ち、心情を把握すると共にカウンセリングや精神科医を紹介するなど必要な援助を行う必要があります。
    精神科医やカウンセラーへ本人を紹介する場合は「災害が起きれば誰だって辛い。精神科の先生にお世話になるほどの状態ではない」と被災者から拒否されるケースも多いため、職場全体へのメンタルヘルスの教育的なアプローチも必要となります。一見非常に活動的で元気に見える人でも、よく話を聞いてみると、不眠になやんでいたり、活発に活動することで不安を忘れようとしている人もいます。自分自身でショックや疲れを自覚できない人もいますので、一見、元気な人にも注意が必要です。

  3. 修復期

    被災者の心理状態(6週間~)

    通常の心理的な回復の過程では、混乱していた感情が徐々に修復されていく時期になります。つらい出来事を思い出すと苦しくはなりますが、少しずつ気持ちがおさまっていき将来へ目を向けていくことができるようになります。
    しかし、突然つらい出来事がよみがえってきたり、災害について思い出す話題や場所をさけるケースもあります。この段階になりますと抑うつやアルコール依存症などの問題についても顕在化しやすくなってまいります。

    メンタルケアの方向性

    この時期の被災者の悩みは多岐にわたり将来への不安、生活設計など実生活での不安と複雑に絡み合っています。ひたすら被災者の聞き手となり、時間をかけて気持ちを受け止めていくような支援が必要となります。
    会社は、被災者が被災による変化した現実を受け入れ、合理的に問題解決ができるように、訴えに傾聴し心理的な支えとなるような支援が必要となります。

災害時のメンタルヘルス対策ですが、被災した従業員が被災前の通常の心理状態に回復させることが目的となります。会社は被災した従業員がショックを受けた後の心理的な状態について、専門的な医療機関へ紹介する必要があるのかどうかの知識と判断が必要となります。判断を誤ってしまうと、従業員の抑うつ状態が悪化し、最悪の場合は従業員が命を落としてしまうというケースもあります。
また、被災者の悩みは時間が経つにつれて多岐にわたり実生活での不安と複雑に絡み合っていくため、ケースによっては数年にわたる長期的なフォローが必要になることも覚悟しなくてはなりません。
被災後は職場全体へのメンタルヘルスの教育などを行い、管理職や被災者を含めた従業員のメンタルヘルスへの理解を深め、深刻な状態の人には、短時間でも話を聞く機会を持ち、心情を把握するのとともにカウンセリングや精神科医を紹介するなど必要な援助を行う体制を構築していく必要があります。

2)長期休業者への対応

災害発生時の長期休業者への対応ですが、会社で明確に長期休業などについてあらかじめ定めておく必要があります。阪神大震災でも、社員が長期の休職をした場合の明確な基準を定めていなかったため、社員が「帰郷、会社の近くに住む家がない、家族の介護など」の理由で、会社に籍だけ置いて1年も2年も出社しないといったケースも見受けられました。

社員が会社に籍を置いて長期間出社せず、いつ復帰するのかがわからない状態が続きますと、新しく社員を補充することもできず業務に大きな支障が出てきます。
こういった長期休業者への対応策ですが、以下のことについて定めておくと問題を解決することができます。

  1. 会社で通常の状態に戻った日を決める。
    災害発生後、会社もしばらくの間は通常業務ができない状態や、交通網や親せきの安否確認などの理由により多くの社員が出社できない時期も出てくると思います。こういった「非常事態」の期間は社員の休職の起算日は設定せず、ある程度通常通りに業務が遂行できる状態となった際に「非常事態解除宣言」を全社員に発信して、会社が通常の状態に戻ったことを伝えます。
  2. 休職期間をスタートさせる(非常事態解除宣言の日より)
    通常の状態に戻った日から就業規則や休職規定の定めに従って従業員の欠勤日数や休職期間のカウントを開始するようにします。就業規則や休職規定などで、あらかじめ休職について定めてあることが前提になりますが(休職の規定がない場合は、休職や休職期間について定める必要があります)、通常の状態に戻った日を欠勤や休職の起算日とすることで、長期休業をしている社員に対して、期限を設定することができます。
  3. 休職期間満了が近づいた社員への告知
    休職期間に入ったら休職期間中の途中(できれば月に1回以上)や休職期間満了の1ヶ月前に長期休業中の社員と連絡を取り、社員の状況を確認しておきます。なお、休職期間が満了しても職場に復帰できない場合は、原則として自然退職(解雇とは取扱が違います。ルールによる退職であり、定年退職に近いような扱いになります)となります。
  4. 休職期間満了
    休職期間を満了しても職場に復帰できない場合は、その日をもって自然退職とします。ただし、特別な事由がある場合は、休職期間を延長することも検討すべきでしょう。ここで重要なのは、不公平がないように就業規則にそって取り扱うということです。また延長の期間も明確に再設定しておく必要があります。

長期休業者への対応ですが、まずは会社で通常の状態に戻った日を定めることが必要です。通常の状態に戻った日を定めることにより、欠勤や休職の起算日を定めることができます。今回のような大災害では、被害にあった方とそうでない方とのギャップが徐々に大きくなり、いつの時点をもって平常にもどったと宣言するかは非常に悩ましいところになります。ただし、いつまでも非常事態体制をとるわけにもいきません。勤務時間が通常の所定時間にも戻ったタイミングがひとつの区切りと考えることもできるでしょう。
いずれにしても、休職期間に入った社員とはこまめに連絡を取り、会社との認識に違いがおきないように、しっかりいとコミュニケーションをとっておくことが重要です。

その他、震災の影響下における労務管理について情報はこちらをご参照ください。

このコラムは

  • 御社の社内での人事対応資料としてお使いください。
  • どうぞご自由にコピーをしてお使いください。
  • 内容に関しご質問がありましたら弊社までお問い合わせください。

ぜひ、本情報を被災地の方々にもお伝え頂ければと思います。
また、この件でのご質問に関しては、電話、メールにて無料でお受けしております。
(すでに多くのご質問をいただいております関係でご返事に多少お時間をいただく場合もございますが、ご了承ください。)

少しでも早く日本の社会が望みある未来へ向けて動き出せるように、心よりお祈り申し上げます。
(当レポートは平成23年3月28日までに発表された情報をもとに作成しております)

第3回コラム執筆者

生頼 洋一郎(おうらい よういちろう)

生頼 洋一郎(おうらい よういちろう)

有限会社人事・労務 チーフコンサルタント
社会保険労務士
大学卒業後、社労士事務所と一般企業の人事部に勤務し、社内規定の整備や労務問題、採用、社員研修などで経験を積み現職に。組織の力を最大限に引き出すために、会社も社員もWIN-WINの関係づくりをモットーに日々業務に従事している。専門知識や重要ポイントは誰にでもわかり易い表現を心がけ、常に相手の立場に立ったコンサルティングを行うよう心がけている。

URL:http://www.jinji-roumu.com

 
 

プロフィール

有限会社人事・労務

現在社長を務める矢萩大輔が、1995年に26歳の時に東京都内最年少で開設した社労士事務所が母体となり、1998年に人事・労務コンサルタント集団として設立。これまでに390社を超える人事制度・賃金制度、ESコンサルティング、就業規則作成などのコンサルティング実績がある。2004年から社員のES(従業員満足)向上を中心とした取り組みやES向上型人事制度の構築などを支援しており、多くの企業から共感を得ている。最近は「社会によろこばれる会社の組織づくり」を積極的に支援するために、これまでのES(従業員満足)に環境軸、社会軸などのSS(社会的満足)の視点も加え、幅広く企業の活性化のためのコンサルティングを行い、ソーシャル・コンサルティングファームとして企業の社会貢献とビジネスの融合の実現を目指している。


HP:有限会社 人事・労務

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