人的資本・知的時代のマネジメント~人材を人財に育み、知恵を事業として結実させる方法

第4回

いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方(2)

株式会社ベーシック  田原祐子

 

5週にわたり(水曜日公開)、『いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方』をテーマに、役職定年、定年退職後の雇用形態の変更など、50代後半にさしかかるミドルシニアの働き方を考えます。
・前回の記事はこちらからご覧ください。いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方(1)

若いうちから、「知識」「スキル」を意識しながら働く

「知識」「スキル」「コンピテンシー」という経験知を、ミドルシニア自身と経営層、人事部が把握するためにはどうすればよいのでしょうか?

暗黙知を形式知にするための最初のステップは、形式知である文字にすることです。テキスト(文字)化するのは、本人でも、人事部でも構いません。ミドルシニアはたくさんの経験知があるのに、文字にして残していないから、「あなたにはどんな知識やスキル、強みがありますか?」と聞かれたときに明確に答えられないのです。テキスト化は、ミドルシニアになってからではなく、若いときから始めるとなおさらよいでしょう。日常の仕事をしながら、自分にはどんな知識とスキルが身についているかを棚卸ししていくことが大切です。海外の就労はジョブ型がメインなので、知識とスキルが明確になっていなければ雇ってもらえません。だから、働く人が自分自身でどのような知識やスキルがあるかを認識しています。一方、日本の就労は、その多くがメンバーシップ型であり、ジョブ型ほど知識やスキルが明確にされていません。メンバーシップ型の雇用も悪くはないのですが、ジョブローテーションによっては、本人にとって不本意な異動もあり、新たな職場で知識とスキルを高めようとする意識が欠けがちになる。しかし、部門を跨いだ異動は、新たな経験知を蓄積するチャンスでもあり、それが思わぬ新たなご自身の能力を開花させることにも繋がっていきます。最近では、タレントマネジメントシステムなど、HR関係の多様なシステムも開発されており、これらのシステムには、知識やスキルを記載する部分が設けられているものも増えています。自らの知識やスキルを蓄積する意味でも、ご自身で積極的にテキスト化しておくことが、経験知を見える化して、暗黙知を形式知に変える第一歩となります。

「自分の子どもにも経験知を見える化させたい。」とおっしゃる方もいます。その理由は、彼・彼女らがタイムパフォーマンスを求めるなどの理由で、入社後数年にも満たない状態で、転職を繰り返す可能性があるためです。これでは、経験知はなかなか蓄積できませんから、その会社、その仕事で、どのような知識やスキルを学んでいるかを、リアルタイムで、ご自身がしっかりと認識しておく必要があるためです。また、私自身も、大学生や新入社員向けの研修では、入社して、自分自身がどのような知識やスキルを習得しているかを、明確にテキスト化しておくことをお勧めしています。

いま、大学生の多くは、大学で自身のキャリアプランニングについて学んでいます。また、企業でキャリア面談をしていると、最近の若手社員の方々は、明確なキャリアパスや、昇進するための条件(知識やスキルなど)を示すことを求めてきたり、「この会社で、私はどうすればステップアップできますか?」と、現実的かつ具体的な質問をしてきたりします。人事部門の方々は、こうした若手社員の変化を日々実感しておられることと思いますが、ミドルシニアに限らず、「自分は、この仕事で、何を習得しているのか?」を明確に認識しておくことが、その人のキャリア形成に大きなアドバンテージとなることでしょう。


転載元:HRONLINE(エイチアールオンライン)インタビュー記事

「たそがれ研修、役職定年……いま考えたい、50代ミドルシニアのリアルな働き方」



 

プロフィール

株式会社ベーシック
代表取締役 田原 祐子 (たはら ゆうこ)

社会構想大学院大学「実践知のプロフェッショナル」を養成する実務教育研究科教授、日本ナレッジ・マネジメント学会理事

仕事ができる人材は、なぜ、仕事ができるかという“暗黙知=ナレッジ”を20年前から研究し、これらをモデリング・標準化・形式知化(マニュアル、ノウハウリスト、システム等の社内人材を育成する仕組み)を構築。企業内に分散する暗黙知やノウハウを組織開発・人材育成に活用する、【実践知教育型製ナレッジ・マネジメント】を提唱し、社内インストラクターの育成にも寄与。約1500社、13万人を育成指導。

経営者・トップマネジメント・次世代を担うエキスパートの、行動特性分析・意思決定暗黙知の形式知化や、企業内の知財の可視化(人的資本・知的資本・無形資産含む)にも貢献し、上場企業3社の社外取締役も拝命している。

環境省委託事業、経産省新ビジネスモデル選定委員、特許庁では特許開発のワークショップ実施。2021~2023年度、厚生労働省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスの質向上取組支援事業」に係る運営協議会および認証委員会委員。

暗黙知を形式知化するフレーム&ワークモジュールRという独自メソドロジーは、全国能率大会(経産省後援)で、3年連続表彰され、導入企業は、東証一部上場企業~中小企業、学校・幼稚園、病院・介護施設、研究開発機関、伝統工芸、弁護士、知財事務所等。DX・RPA・AIとも合致。営業部門は、Sales Force Automation、Marketing Automation、一般部門では、Teams・SNSツール・Excel等も活用可能。

【田原 祐子 著書】

『55歳からのリアルな働き方』

本書では、ご自身に潜在するさまざまな仕事の経験を見える化し、「経験知や才能(強み)」で稼ぐ、スマートで知的な報酬を得る方法をご紹介します。

私は、これまで25年間、上場企業から小さな家族経営の会社に至るまで、さまざまなご依頼いただき、約13万人の人材を育成してきました。

そのノウハウを、すべて本書に詰め込みました。

その他、著書15冊、PRESIDENT on-line、ダイヤモンド・オンライン、人材関連・ビジネス誌等への記事掲載、多数。



Webサイト:株式会社ベーシック

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