マーケティング新時代 造り物の終焉

第13回

日本の政治とメディアの在り方

イノベーションズアイ編集局  マーケティングコンサルタント N

 

自民党や総理の不人気、裏金問題、地方選挙、都知事選など、政治関連の話題が非常に多い近頃だが、そんな中で都知事選の小池氏と蓮舫氏との対決といった話題を目にした方も多いだろう。しかし、こうした報道に対して違和感を感じる人も少なくないのではないだろうか。政治関連の話題はメディアが国民と政治とを繋ぐ大事な役割を担っている。そこで今回は政治とメディアについての話をしてみたいと思う。

日本の政治

献金による裏金の話題では、多くの国民が嫌悪感を抱いた。つまり本能的に「いけないこと」、「後ろめたいこと」と感じている。しかし、当の自民党はそのシステムを維持する必用があると考えている。裏金と言うと聞こえは悪いが、議員も私腹を肥やすために献金を集めている訳ではなく、選挙資金などの政治活動に活用されている。つまり、日本を発展されるための政治にお金のやり取りや企業との繋がりが必用だと考えている。

このシステムは一概に悪いとも言い切れない。戦後の日本が急速に発展できたのは、お金の力や権力を行使することで、地方自治から国政まで短期間でベクトルを合わせることができたからだとも言える。そして、戦後から現代に至るまで、日本の政治はこのシステムを踏襲し発展してきている。

しかし今の時代、こうした仕組みや裏側の情報もインターネット上に溢れており、一般の人でもわかっている人は多い。その結果、このような昔ながらのやり方に疑問を感じる人が増えたのだ。そして、その変化に追いつけていないのが、当の自民党だ。日本のための資金集めだということを国民はわからず、目先の裏金という言葉に嫌気をさしていると考えているのではなかろうか。国民は国のためを思ってやっていることは理解した上で、お金によるコントロールで日本を発展させる仕組み自体に疑問を持っているということが理解できていないように思う。

「メディアが伝えるべきこと」

マスメディアも変化していない訳ではない。総理や与党の問題についても正確な情報を得て報道し、媚びることや忖度することなく、様々な考え方のコメンテーターの発言も歪曲したりはしない。
しかし、与党や総理を叩くような内容や与党系と対立候補との選挙報道など、国民感情を意識してか、権力者が痛い目を見てスッキリさせるバラエティのように見えるものも多い。

では、メディアが本来伝えなければならない最も大切なことは何なのだろうか?
それは、日本の政治の現状は国民一人ひとりの意思によって今こうなっているということではないだろうか。

都知事選のメディア報道

都知事選の話題では小池氏対蓮舫氏という話題が飛び交っている。本来は○○政策対△△政策というような方針の違いによる対立を伝えるのがあるべき姿だろう。しかし、注目を浴びるのは小池氏対蓮舫氏だ。 メディアにとっては、より多くの国民が興味を持つ情報を提供することで、視聴率を稼ぐことができ、喜ばれるのだから当然と言えば当然だ。ある意味、国民がそういう情報をメディアに求めていると言えなくもない。

都知事選に出馬を表明した広島県安芸高田市長の石丸伸二氏については、「ネットで話題」や「Youtubeで話題」という紹介は各メディアで取り上げられているが、その考え方や発言、話題となった内容などを伝えるメディアはあまり見かけない。ネットユーザーが好む情報では視聴率が稼ぎにくいのかも知れない。

マスメディアにとって死活問題とも言える目先の視聴率獲得が優先されることは理解できるが、先細りの視聴率を追うような姿勢ではもう長くはもたないだろう。今こそメディアの本質に立ち返り、国民が興味を持つ情報を提供するのではなく、国民に興味を持たせる必要がある情報を伝えていく姿勢が必用なのではないだろうか。

選挙とメディア

現在、これまでにないほど自民党や総理の信用は地に落ちている。選挙を実施すれば自民党の与党継続は困難とも言われている。しかし、自民党が野党第1党にもなれないのでは?と考えている人は少ないだろう。
だが、もし、有権者が100%投票すればどうだろうか?投票率が低い若い層が全員投票したら自民党自体が機能しなくなる可能性も決して低くはないだろう。都知事選においても、投票率が100%だったらどうだろうか?

選挙においてメディアが伝えなければならないのは、有権者一人ひとりの意思が本当に国を変えるということ。有権者が誰に投票すればよいかを考えられるように立候補者の人となりや考え方、政策方針などを分かり易く伝えること。政策の矛盾点や実現性についての考証など。この情報は聞いておかなければならないと思わせるような情報だ。

例えば、自民党が与党でなくなった場合の不安というものを多くの人が持っているだろう。そうした不安に対して、自民党以外の連立与党が結成された場合についての議論や、不安があることを前提に、国民が政治に対してどのように向き合うべきなのかなど、答えはなくとも伝えるべきことはいくらでもある。
つまり、国民が自分の考えを反映させるために政治に参加しようと思わせることこそが選挙におけるメディアの役割だ。決して小池氏対蓮舫氏の人気投票のようなバラエティではないのだ。

今求められること

敗戦国から先進国に数えられるまでに成長した日本は、自民党主導による政治の成果とも言える。しかし、情報化社会、グローバル社会となり、これまで築き上げてきた日本の政治システムは、今変革が求められている。
現在の自民党や都知事選の状況を見ると、メディアが動画やSNSなどにより変革せざるを得ない状況となっているのと同様に、政治もまた変革しなければならい時代となったのだと感じる。

政治においてもメディアにおいても、今の時代、人を惹きつけるために必用なのは、真実や誠実、包み隠すことない行動や言動、人として大切な最も基本的なことなのではないだろうか。
単純ではあるが難しくなってしまった今の社会、この時代の変革に必用なのは人としての正しい在り方のように思う。

 

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