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ドラッカーから起業を学ぶ

第10回

ビジネスモデルから体制作りへ

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「ビジネスモデル、そろそろ完成したと思っています。」

「それは素晴らしいですね。どうして完成したと思われるようになったのですか?」

「地元商工団体のビジネスモデル・コンテストに応募したのです。専門家のアドバイスを受けながらブラッシュアップし、専門家からも、そして私自身としても、事業として回していけるビジネスモデルができたと感じています。」

「なるほど。」

「それに、コンテストにも入賞したんですよ。その特典として、私が取引や支援を期待していた関係機関が、向こうの方からコンタクトを取ってくれるようになったのです。」

「それは良かったですね。では、次の段階に踏み出すことになるのですね。」

「その『次の段階』とは何ですか?」

「ビジネスモデルを体制作りに活用することです。」


ビジネスモデルができただけでは行動できない?!

「ビジネスモデルを体制作りに活用するとは、どういう意味ですか?」

「その質問に答える前に、一つ質問をさせて頂きましょう。ビジネスモデルとは何だと、お感じになりましたか?」

「私の場合だと、海外から輸入した雑貨をインターネットで注文してくれた顧客に販売するという一連のプロセスを表したものです。これは、私がどんなお客様に対して何を提供するのか、そのために私が誰と、どのような協力をするのかを示したものだと言うことができると思います。」

「良い答えですね。ビジネスモデルは、あなたを中心にして、どのような関係者とどのような取組みをするのかを構造的に表現してくれます。しかし現実を考えてみましょう。そういう取組み、計画すれば自然とうまくいくものなのでしょうか?」

「と仰ると?」

「例えばビジネスモデルに『商品仕入れ』と書いてありますね。海外の業者さんと、売買契約を結ぶということではないかと思います。」

「そうです。」

「契約書は準備できていますか?」

「契約書は相手が準備してくれていると思いますが。」

「相手の言いなりですか?」

「それは困りますね。こちらの都合も斟酌してくれるものでないと。」

「そういう時、対案があった方が交渉が円滑に進むのではないでしょうか?」

「そうですね。」

「では、どうやってその契約書を準備しますか?」

「私には無理ですね。専門家の力を借りないと。」

「弁護士は、どうやって探すのですか?」

「うーん。」

「どうですか、ビジネスモデルができたら、そのまま行動に移せると言えるでしょうか?『商品仕入れ』と書いてあることを、難なく実行できるでしょうか?」

「いや、そうではないようですね。何が足りないのでしょう?」


自分自身の「能力」を築く体制作り

「今の問題は、言葉を変えれば『ビジネスモデル通りに行動していく能力が、こちらに不足している』ことだと言えませんか?」

「確かにそうです。」

「なので、ビジネスモデルを実行できる能力を身に付けなければなりません。」

「どうやって、身に付けるのですか?」

「一つは、先ほど例に挙げたように、専門家の力を借りるというアプローチがありますね。」

「なるほど。今の例では契約書だったので弁護士ですが、配送なら配送業者など、多彩な関係者との協力が必要になりますね。」

「そしてもう一つは、我が社の中に、その能力を身に付けていくというアプローチがあります。」

「例えば?」

「顧客開拓する必要はありませんか?そのための営業担当は要らないでしょうか?」

「確かに!」

「このように、自分がビジネスを遂行できるような能力を身に付けていることを、私は『体制作り』と言っているのですよ。」

「なるほど。」

「私はこの作業を、DIY(Do it yourself)で家具を作る場合に例えられるのではないかと思っています。」

「家具作りですか?」

「例えばシンプルな書棚を作るとしましょう。設計図も準備しました。では、これですぐに書棚ができるでしょうか?」

「いえ、道具が必要ですね。例えばカナヅチと釘とか。」

「材木を切るノコギリを準備するか、お店で寸法通り切断してもらう必要もありますね。」

「確かに!」

「そうやって体制作りをして初めて、書棚を作り始めることができるのです。」

「分かりました。今度は体制作りに、頑張ってみようと思います。」

 

プロフィール

StrateCutions (ストラテキューションズ)
落藤 伸夫


(StrateCutions代表)ドラッカー学会会員
中小企業診断士を目指していた平成9年にドラッカーに出会って以来、ドラッカーの著書をいつも座右の銘にしてきました。MBAを取得し、コンサルタントとして活動するにあたっても、企業人が考え行動する基本はドラッカーにあると感じています。ドラッカーの教えは、時には哲学的に思えることがありますが、企業が永らく繁榮するとともに、社会にある人々が幸福になることを目指していると思います。お客さま、社会、そして自分自身の「三方良し」の構図を作り上げることにより起業の成功を目指すドラッカーの知恵を、お楽しみ下さい!

<著書>
『ドラッカー「マネジメント」のメッセージを読みとる』


Webサイト:StrateCutions

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