「計画により勝負どころを決めることで、勝てる可能性が高まることが分かりました。そういう効果を高めるために、どのように活用すれば良いのでしょうか?」
「良い質問ですね。効果的な方法として、計画通り行かなかった理由を考えることがあります。」
「失敗した時の対応が肝心だということですね。」
「それももちろんあると思います。しかしドラッカーは、予期せぬ成功に注意を向けることも大切だとも言っています。」
「予期せぬ成功ですか?『ラッキー!』と祝杯をあげたのではダメなのですか?」
「祝杯をあげることも大切かもしれませんね、明日への活力になりますから。でも、それだけではもったいない気がします。」
「どうしてですか?」
「その理由を考えることが、イノベーションに繋がるからです。」
「本当ですか?!」
「では、予期せぬ成功がどうしてイノベーションに繋がるかを考えてみましょう。」
「是非、お願いします。」
「イノベーション」とは何か?
「最初に確かめておきたいことがあります。イノベーションとは、何だと思いますか?」
「今までにないような優れた思考や技術などで、今までなかった製品などを作り上げることだと思います。」
「もちろん、それもイノベーションですね。しかしイノベーションには他の意味もあります。」
「どういう意味ですか?」
「ドラッカーは、企業の基本的な機能としてマーケティングとイノベーションを挙げています。それはどういう意味だと思いますか?」
「確かにマーケティングに成功し、イノベーションに成功できる企業になりたいと思います。しかし、両者ともにそんなに簡単なことではありませんよ。」
「いやいやドラッカーは、企業はマーケティングとイノベーションのいずれか、若しくはその両方を行いなさいと言っているのですよ。両方とも行わない企業なんてありえない、そんな勢いです。」
「本当ですか?ドラッカーって、理想主義者なんですね。」
「いやいや、それは用語法が違うからなんだと思います。」
「えっ、どういうことですか?」
「マーケティングとは、顧客の欲求を知ることで顧客満足を実現しようとすること。イノベーションとは、顧客がまだ知らない価値を創造して顧客満足を実現しようとすること。両方とも、顧客満足を実現し提供することを目標としています。」
「確かに、企業は顧客満足を生み出すことを目標としています。それを目標としない企業なんて、考えられません。」
イノベーションのアプローチ
「そうなんです。そしてイノベーションとは、マーケティングとは違ったアプローチで顧客の満足を実現しようとする試みです。」
「マーケティングとは、顧客を見ることで、満足してもらえるものは何かを考えるアプローチのようですね。」
「そうです。一方でイノベーションは、顧客まだ知らない価値を創造することです。顧客を見ても、それを考えることはできません。」
「じゃあ、どうすればよいのでしょう?」
「ドラッカーは、予期せぬ成功から紐解くように提案しています。」
「予期せぬ成功?」
「自分でも気が付かないような新たな試みが、無意識のうちに顧客に受け入れられる時があります。それを見つけ出して、意図して実現できるようになると、それがイノベーションになるのです。」
予期せぬ成功がイノベーションとなった例
「面白い考え方ですが、何か実例はありますか?」
「例えばポストイット(剥がして使える付箋)がありますね。」
「ポストイットの話なら、私も知っています。偶然の産物のようですね。」
「そうです。でも、それを『タダの偶然』と考えていたら、一連の大ヒットは生まれなかったでしょう。予期せぬ成功があり、それを深掘りしていったからこそ、ポストイットはイノベーションになったのです。」
「なるほど。顧客が『ポストイットのたまご』を受け入れた理由をよく考えたので、ポストイットとしてイノベーションできたという訳ですね。」
「予期せぬ成功」の裏にある計画
「そうですね。そのきっかけは、何だと思いますか?」
「『あれっ、こんなものが売れるんだ』という気付きではないかと思います。」
「では、なぜそれに気が付くことができたのでしょう?」
「予定より、たくさん売れたからではないですか?」
「そうなんです。」
「分かりました。計画を立てていなければ、予定よりたくさん売れたかどうか、気付きようがない。だから計画がイノベーションのきっかけになる、そう仰りたいのですね。」
「その通りです。」
「仰る意味、分かりました。」