「今、日本の経営者に知らせたい、重要な経営課題」

第9回

「知的資本経営こそ、日本企業の強みを発掘・再構築する源泉」  株式会社ICMG(ICMG Co., Ltd.)代表取締役社長 兼 グループCEO 船橋仁氏【後編】

株式会社ベーシック  田原祐子

 

田原:おっしゃる通りですね。日本には、日本の強みがあり、日本のよさがある。私と船橋様の共通の領域でもある、ナレッジ・マネジメント(知的資産管理)では、実践共同体という考え方があります。私は、社会情報大学院大学(専門職大学院2022年度4月より、社会構想大学院大学に名称変更)で、教員、官僚、企業のミドルマネジメントの方々に、「人材育成の基礎」「ナレッジ・マネジメント」「学習する組織」という3つの授業をお教えしていますが、これらは、三位一体だと思っています。


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若手人材の育成への期待と、知的資本経営

船橋様:私も早稲田の大学院で10年教えていますが、彼らは、問題意識が非常に高く、本質的な課題がよく見えています。そして、「いい会社の定義」を考えてもらうと、ほとんど90%以上、オフバランスの話をしています。オンバランスで金融資産がたくさん貯まっているからいい会社だという人は出てこない。例えば、「優れた企業経営者のいる企業」とか、「サスティナブルに企業文化が継承されている企業」「お客様に価値を認めらえている会社」「いい人間関係が形成されている会社」という価値観が出てきます。それらを、人的資本、組織資本、関係資本に分けてもらうと、それがきれいにわかれていく。そして、これらの無形資産の重要性を理解していくのです。いい方向に向かっていると感じるのは、彼らも、株主資本主義の考え方で企業経営をしていると、社会がもたなくなってきたなという肌で感じてきているのです。

これらをきちんと理解したうえで、株式マーケットに向き合うならまだしも、ただ、盲目的に営業利益率をあげて、配当をたくさん出せばいいと思っているような経営者をたくさん生み出すと、日本の企業経営は本当に危うい。誰のために会社経営をしているかを、冷静に見なければならないことがわかります。このような状況では、自分たちの非財務価値に値することを、きちんと、説明可能にしなければならない。統合報告書等を通じて、人的資本・知的資本等から、企業の価値創造ストーリーを描き、持続的に企業価値を高めていくステップを構築していかねばならないのです。

田原:船橋様、本日は、貴重なお話しをしていただき、本当にありがとうございました。

最後に、日本の経営者の皆様に、ひと言アドバイスをいただけますか?

船橋様:今、心ある人たちは、富が一極集中するということは、社会資本がうまくまわらず、弱者が生活できなくなり、まわりまわって治安が悪くなったり、教育が陳腐化するので、そうならないように、長期的に企業がちゃんと地域やステイクホルダーと共生するのではないかというのが、徐々にわかってきていますね。そして、これこそが、知的資本経営なのです。

笑い話ですが、「知的資本経営」という言葉が、昔、流行らなかったので、10年前に、「イノベーション」という言葉に変更したら、少しは認知度が上がりました。しかし、イノベーションも、原点は、新結合(すでにある知的資本の組み合わせで新しい事業が起こること、シュンペーターの理論)と起業家精神の両方が必要なので、我々は、「智と軸のリーダーシップ」のプログラムで、智と軸、両面からその力を養うサポートをしています。我々自身、世界中のベンチャーとパートナリングをして新規事業を立ち上げているので、ケイパビリティ、ナレッジ、スキル、顧客との関係性、顧客やパートナーとの連携、企業文化等を統合的に見る診断ツールを活用しながら、具体的に成長戦略を描いています。

年金基金等の投資家は、企業の価値を長期的に見て行っていて、短期視点で見ている投資家ばかりではありません。コスト削減や営業利益率向上ばかりに走ると、企業価値が縮小し、その影響で、地域全体がシュリンクしてします。企業活動は循環モデルなので、まわりまわって、家族や従業員をはじめとする地域社会が困り、日本が困るということになってしまうと思います。とにかく、経営者の皆様は、徹底的に人的資本からの価値創造にこだわってほしい。それこそが、日本の活路を見出す王道ではないでしょうか。そのためには、統合レポート等で、「人的資本からの価値創造プロセス」を表現すべきでしょう。

図表4


以上

 

プロフィール

株式会社ベーシック
代表取締役 田原 祐子 (たはら ゆうこ)


社会構想大学院大学「実践知のプロフェッショナル」を養成する実務教育研究科教授、 日本ナレッジ・マネジメント学会理事


仕事ができる人材は、なぜ、仕事ができるかという“暗黙知=ナレッジ”を20年前から研究し、これらをモデリング・標準化・形式知化(マニュアル、ノウハウリスト、システム等の社内人材を育成する仕組み)を構築。企業内に分散する暗黙知やノウハウを組織開発・人材育成に活用する、【実践知教育型製ナレッジ・マネジメント】を提唱し、社内インストラクターの育成にも寄与。約1500社、13万人を育成指導。


トップマネジメントや、次世代を担うエグゼクティブの、コンピテンシー分析・意思決定暗黙知の形式知化や、企業内の知財の可視化(人的資本・知的資本・無形資産含む)にも貢献し、上場企業2社の社外取締役も拝命している。


環境省委託事業、経産省新ビジネスモデル選定委員、特許庁では特許開発のワークショップ実施。2021年より、厚生労働省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスの質向上取組支援事業」に係る運営協議会および認証委員会委員。


暗黙知を形式知化するフレーム&ワークモジュールRという独自メソドロジーは、全国能率大会(経産省後援)で、3年連続表彰され、導入企業は、東証一部上場企業~中小企業、学校・幼稚園、病院・介護施設、研究開発機関、伝統工芸、弁護士、知財事務所等。DX・RPA・AIとも合致。営業部門は、Sales Force Automation、Marketing Automation、一般部門では、Teams・SNSツール・Excel等も活用可能。


著書15冊、連載・ビジネス誌執筆等、多数。



Webサイト:株式会社ベーシック

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