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補助金活用のススメ

第2回

ものづくり補助金の申請要件

株式会社PMIパートナーズ  北口 建

 

今回は、ものづくり補助金の申請要件を中心にご説明します。

ものづくり補助金は、事業再構築補助金のコロナによる売上減少や事業承継・引継ぎ補助金の事業承継のような特別な事情が要件となっておらず、また補助金の対象となる経費も比較的に広く認められているため、比較的活用しやすい補助金であるといえます。そのため毎回4000社~5000社ほどが応募しており、うち2000件程度採択されています。

ものづくり補助金は補助金の活用目的に応じて複数の枠が設定されていますが、今回は多くの企業が適用可能な「通常枠」を前提にお話します。

ものづくり補助金の主な要件としては次の2点を満たす必要がある。

 1 補助対象者の範囲(ものづくり補助金を受けることができる企業)

 2 基本要件(クリアすべき事業計画上の目標数値)


1 補助対象者の範囲(ものづくり補助金を受けることができる企業)

ものづくり補助金を受けることができる企業(補助対象者)は、「中小企業」(=「大企業」ではない)です。具体的には資本金又は従業員数(常勤)が次の表の数字以下となる会社または個人です(中小企業等経営強化法第2条第1項)。

※分類については日本標準産業分類による


資本金又は従業員数のいずれかが上記表の数字以下であれば中小企業です。例えば資本金の数字が上回っていても従業員数の数字が下回っていれば中小企業にあたります。

なお、中小企業であっても、その支配株主が大企業に該当する場合は、「みなし大企業」として補助対象者から除かれることになります。

他方、社団法人(公益・一般)や財団法人(公益・一般)、医療法人は補助対象者とはなりませんが、個人の診療所や社会福祉法人(従業員数300人以下)は補助対象者となります。

但し、第13次締切以降は、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業は対象外となりました。そのため、健康保険の適用のある診療や歯科診療、介護事業などにものづくり補助金が利用できなくなっています。

 

2 基本要件(クリアすべき事業計画上の目標数値)

ものづくり補助金を申請する際、3~5年の事業計画を策定する必要がありますが、その事業計画の内容において、以下の要件を全て満たす必要があります。



まず①と②の賃金に関する要件は、ものづくり補助金を活用して得た利益は賃金アップにより従業員にも還元させるべきとの考えのもとに設けられたものです。①の「給与支給総額」とは、従業員や役員に支払う給料、賃金、賞与のほか、各種手当といった給与所得に当たるものが含まれます。但し、退職手当や法定福利費・福利厚生費は含まれません。

給与支給総額を増やすには、固定賃金の増加や従業員の増員が一番ですが、それが難しい場合は賞与などの一時金を上げる計画でも要件は満たします。この「給与支給総額」には役員報酬も含まれるとされているため、役員報酬を増やすことでも要件を満たすことが可能です(利益を従業員の賃金に反映させるという目的に合致するかは微妙ですが)

また②では「事業場内最低賃金+30円以上」が求められるため、満たさない事業者は最低賃金から30円以上引き上げる必要があります。

さらに要件①及び②に関しては、代表者に「賃金引き上げ計画の表明書」の提出が求められます。もし、上記要件を満たさなかった場合には表明違反となり、補助金の返金が求められる場合があります。

次に③の要件は、ものづくり補助金は企業の収益性や生産性の向上に資する事業に使われますが、費用対効果が悪い事業は対象から除外するために設けられています。③の「付加価値額」とは、営業利益+人件費+減価償却費で計算します。なお③の付加価値額の「人件費」には①の給与支給総額では除かれた退職金、法定福利費・福利厚生費が含まれます。

人件費と減価償却費が増加すると営業利益が減少する関係にあるため、結局は補助金を活用した事業の営業利益が増加することが求められます。3年の事業計画であれば3年後に最低9%以上、5年の事業計画であれば5年後に最低15%以上を増加させる必要があります。

申請にあたっては付加価値額の増加率が年率平均3%という要件を満たすことはもちろん、その算定根拠をいかに具体的かつ説得的に申請書に表現できるかがポイントとなります。付加価値額の増加率が高ければ費用対効果が良い事業として評価されるのですが、増加率が不合理に高い場合や算定根拠があいまいなものはかえって評価されません。

当社で事業計画策定の支援を行う際には、売上増加ないしコスト削減の根拠を具体的かつ定量的に算出できているかをチェックし、かつその算出過程を事業計画に説得的かつ明確に表現されるようにアドバイスしています。

次回は、ものづくり補助金の対象となる経費の範囲についてご説明する予定です。



※ ものづくり補助金の申請要件の詳細は「公募要領」をご確認ください。

  なお、本コラムの内容は投稿日時点の情報をもとに作成しています。


 

プロフィール

株式会社PMIパートナーズ
代表取締役CEO 北口 建(きたぐち・たけし)

株式会社PMIパートナーズ 代表取締役CEO 弁護士・中小企業診断士
大手製薬会社で、予算・事業計画の作成、業績管理、資金調達・運用、税務等を担当。同社在籍中にM&A(合併)を経験し、主に会計及びシステムに関するPMI作業を担当。この時にPMIの重要性を認識。
その後、弁護士資格及び中小企業診断士資格を取得。弁護士及び中小企業診断士の立場で、中小企業のM&Aスキームの提案、デューデリジェンス(ビジネス、法務)、契約書作成、PMIなどの多数のM&A実務に関与。
「経営」×「法務」の視点から中小企業の幅広い経営課題に取り組んでいる。


Webサイト:株式会社PMIパートナーズ

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