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補助金活用のススメ

第1回

補助金とは

株式会社PMIパートナーズ  北口 建

 
新型コロナウィルスの流行から3年が経過しましたが、依然として終息の目途が立ちません。多くの中小企業はコロナで落ち込んだ売上の回復が見込めないことに加えて、ロシアウクライナ戦争による原材料の高騰、新たな制度改革(働き方改革、インボイス制度)の導入の対応、さらには賃上げ要請などに直面し、中小企業の経営環境は悪くなる一方です。このように資金繰りの回復の目途も立たない中で、今年はコロナ融資の返済期限を迎える企業が多く、借換えの対応が求められます。

そんな中、今年もものづくり補助金や事業再構築補助金などの各補助金に対して予算がつき、引き続き補助金の利用が可能となります。

「生産性を向上させるため新設備を購入したい」、「新商品やサービスを開発したい」、「新事業を展開したい」、「デジタル化を進めたい」しかし「投資をするお金がない」という中小企業の皆様は、補助額の活用を検討されてはいかがでしょうか。

本コラムでは、次の各補助金の概要、各補助金違い、申請方法のポイントについて複数回にわたって説明します。

  ・ものづくり補助金
  ・事業再構築補助金
  ・事業承継・引継ぎ補助金
  ・IT導入補助金
  ・小規模事業者持続化補助金

今回は、各補助金の活用例を分かりやすく簡単にご紹介します。各補助金の違いが分からないという質問もよくお受けますので、利用場面の違いについて併せて説明します。

*中小企業とは、中小企業等経営強化法2条1項に規定する企業。

*小規模事業者とは、常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)の場合は5人以下)である事業者(法人・個人)。

【ものづくり補助金】

ものづくり補助金は、新製品や新サービスの開発又は生産プロセスの改善等のために必要な設備投資やシステム投資をする場合の資金を支援するものです。
 
(ものづくり補助金の活用事例)
A社 飲食店が、新たに土産品などの外販事業を展開するためにものづくり補助金を利用して調理機器を購入して商品開発に着手できた。

B社 販売業者が、ユーザーの要望する自社製品を開発するため補助金を利用して3Dプリンタを導入して試作開発に成功した。

C社 機械加工業者が、取引先からの短納期化の要請に応えるため、ものづくり補助金を利用して最新の加工設備を導入した結果、品質向上、短納期化、低コスト化を実現した。

交付される補助金の金額は、中小企業の従業員数や申請枠によって異なりますが最大1250万円です。ものづくり補助金は生産性や収益性の向上に繋がるような設備投資に広く活用できます。

【事業再構築補助金】

事業再構築補助金は、コロナでダメージを受けた中小企業が、ポストコロナに対応するために思い切った事業再構築を行うための資金を支援するものです。

 (事業再構築補助金の活用事例)
D社 飲食店が、コロナで店舗の売上が減少したため、オンライン販売を開始するためにECサイトの構築費に事業再構築補助金を利用した。

E社 車載製品を製造していたが、コロナで売上が減少したため、新たに医療機器やロボット部品製造事業を展開するための機械設備の導入に事業再構築補助金を利用した。

交付される補助金の金額は、中小企業の規模や申請枠によって異なりますが、通常枠では最大8000万円です。事業再構築補助金は、コロナで売上等が減少したこと、新たに事業を再構築するなどの要件が必要となりますが、補助金額の上限が大きく、建築費等の費用も対象になる点が特徴です。

【事業承継・引継ぎ補助金】

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aを契機として新たな取り組みを行う事業について支援するものです。

(事業承継・引継ぎ補助金の活用事例)
F社 事業承継を契機に、飲食店からブライダル事業に転換するため、店舗の内装工事費用に事業承継・引継ぎ補助金を利用した。

G社 M&Aの仲介業者やFA(フィナンシャルアドバイザー)の費用、デューディリジェンス(買収監査)に係る弁護士や会計士等の専門家費用に補助金を利用した。

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aを契機とした取り組みに対して補助がなされるもので、自社従業員の賃金や店舗の賃料も補助の対象になるのが特徴です。

【IT導入補助金】

IT導入補助金は、ITやDXによる生産性向上、セキュリティ対策等のためのITツール等の導入費用を支援するものです。

例えば、インボイス制度に対応のための会計等の各種ソフトやPCタブレットなどのハードウェア導入費用でも利用可能です。

【小規模事業者持続化補助金】

小規模事業者が商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓を支援するものです。

こちらは小規模事業者に限定されます。小規模事業者とは、常時使用する従業員数が「商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)」をいいます。

補助金の金額も50~200万(インボイス転換事業者を対象に最大250万円)と多額ではありません。また補助対象経費も、店舗改装、広告掲載、展示会出展費用など基本的に販路開拓に関連する費用に限られます。

以上、ざっと各補助金の特徴を紹介しました。
 
補助金申請は採択されれば資金繰りが楽になりますが、補助金申請には次のような副次的なメリットもあります。

つまり、補助金の申請作業では、補助金の対象となる事業が、本当に実現可能性が高いかを見極めるために、自社の経営環境を細かく分析する必要があるため、その過程で自社の強みや弱みが明確になります。また説得的な事業計画を立てるために、事業体制、資金繰り、KPIなどを多面的に検討する必要があるため、自社の経営を見直すよい機会にもなるのです。

新商品・新サービスの開発、新設備の導入、DX化を検討されている企業の皆様は各補助金の活用を一度検討してみることをお勧めします。
 
次回以降では各補助金の細かな要件や申請書作成のポイントをご説明する予定です。



※ コラムの内容は投稿日時点の情報をもとに作成しています。
 

プロフィール

株式会社PMIパートナーズ
代表取締役CEO 北口 建(きたぐち・たけし)

株式会社PMIパートナーズ 代表取締役CEO 弁護士・中小企業診断士
大手製薬会社で、予算・事業計画の作成、業績管理、資金調達・運用、税務等を担当。同社在籍中にM&A(合併)を経験し、主に会計及びシステムに関するPMI作業を担当。この時にPMIの重要性を認識。
その後、弁護士資格及び中小企業診断士資格を取得。弁護士及び中小企業診断士の立場で、中小企業のM&Aスキームの提案、デューデリジェンス(ビジネス、法務)、契約書作成、PMIなどの多数のM&A実務に関与。
「経営」×「法務」の視点から中小企業の幅広い経営課題に取り組んでいる。


Webサイト:株式会社PMIパートナーズ

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