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IoTキュレーション

第6回

自動運転車が信頼されるには

ピーエムグローバル株式会社  執筆

 

 

 自動車メーカーをはじめ配車サービス各社などが開発競争を続け、実用化の期待が高める自動運転車に関して先月末、興味深い意識調査結果が公表された。一般的には今なお、自動運転技術を不安視する向きが多いことが分かった。


 顧客満足度調査などを手掛けるJDパワー(本社米カリフォルニア州コスタメサ)などが実施した自動運転車と電気自動車(EV)に関する意識調査「2019 Mobility Confidence Index Study」によると、自動運転に対する信頼度は100点満点中36点で三段階評価で最も低く、自動運転車に乗ったり、自動運転のクルマと同じ道路を走行したりするのに抵抗感があることが分かったという。


 自動運転の不安要因として挙がったのは「誤作動」が71%と最多で、これに「ハッキング(何者かによる機械の乗っ取り)」(57%)や「衝突時の法的責任」(55%)などが続いた。


 調査を行ったJDパワーは結論として、開発メーカーは市民の理解や信頼醸成のほか、抵抗感の払しょくに努める必要があるとしている。

業界の認識にずれ

 この結果について、ジャーナリストのライアン・ドーズ氏はIT系ニュースサイト「IoT Tech」の記事‘Consumers are still not confident in self-driving and electric cars’で、配車サービス会社Uberが開発中に起こした交通死亡事故の例や、ハッキングの危険性を報告書に盛り込んだ米自動車大手を挙げ、市民の反応に理解を示す。ドーズ氏はまた、実現までの期間にも言及。評論家らが6年程度とみる一方で消費者は10年以上かかると回答したことに触れ、専門家の期待と一般市民の認識がずれていることを指摘しながら、自動運転車に対する信頼を得ることは「業界にとって非常に険しい坂道になる」と予言している。


 一方、エコカーなど環境問題を中心に執筆するセバスチャン・ブランコ氏は、やや楽観的だ。ブランコ氏は米フォーブス誌の電子版に記事 ‘Consumer Confidence In Self-Driving And Electric Vehicles Needs Some Work’を寄稿。自動運転車はこの数年で注目され始めた技術であることを強調し、認知が高くないことも信頼度に影響しているとの見方を示す。同調査で信頼度55点を獲得したEVは、環境に優しいエコカーとしての認知度が6割を超えるなど肯定的な見方があった。実際、自動運転に関しては3分の2近くが「知識がない」と回答していた。

なじみも影響

 自動運転への信頼感については、東京大学大学院の佐倉統教授(情報学)が「新奇性に対する社会の忌避感」と「自身で制御できる範囲の大きさ」という2つの観点を挙げている。佐倉氏は慶応義塾大学の大前学教授(環境情報学)との対談「自動運転は人を幸せにするか」(『モビリティと人の未来』(平凡社、2019年)の中で、自動運転を怖いと思う心理について、「飛行機事故に遭遇する不安」を類似の心理状況に挙げ、なじみが薄いことと自分でコントロールできる領域が限られていることが要因のひとつだとする。自動車事故よりも発生する可能性がきわめて低いはずの飛行機事故に不安を抱くのは、仕組みが分からないことや自分で運転できないことなども影響があるとの見方を示している。

不安を取り除くには

 得体も知れない上に、自身で関与できないものを信頼するのは誰にとっても難しい。実用化の前段階である自動運転技術を不安に思うのは当然だ。業界は技術開発の一方で、認知度の向上にも取り組む必要がある。それには佐倉氏が指摘するように自動運転の社会における意義や特長をさらにアピールすべきだろう。JDパワーの調査結果から、地球にやさしいエコカーとして受け止められていることがEVの信頼感と関係するように、社会に貢献できることが理解されれば信頼度も上がってくるはず。移動時間を有効活用できるメリットのほか、人件費など既存コストが見直せるといった、自動運転技術の強みを広く訴えていけば、認識も変わってくるのではないか。


 飛行機や新幹線は移動時間の短縮化が認知され、すっかり社会に定着した。クルマはさらに身近な乗り物だ。無人運転技術を体験できればインパクトは大きい。試乗会や実証試験など、市民が技術に直接触れる機会を増やすのも一案だろう。(了)


 

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