第12回
【アンケート結果を踏まえて】日本はいつから「デジタル植民地」に成り下がったのか?
株式会社フリーウェイジャパン 井上 達也
【アンケート結果を踏まえて】日本はいつから「デジタル植民地」に成り下がったのか?
2025年11月にフリーウェイジャパンとイノベーションズアイで「日本発・海外発のソフトウエアの利用状況に関するアンケート」調査を行った。その結果は、日本では日本製のソフトはほとんど使われず海外のソフトウェアに頼った事を浮き彫りにしたものだった。
1990年代まで、日本のソフトウェアは間違いなく「世界の覇者」の一角を担っていた。 日本語ワープロソフトの雄「一太郎」を筆頭に、数多くの国産ソフトが群雄割拠し、私たちは自国の技術に誇りを持っていたはずだ。
しかし、今のデスク周りを見てほしい。愕然とするはずだ。 かつての多様性は死に絶え、気づけば画面の中は「ワード」や「エクセル」、プレゼンは「パワーポイント」。メールはGメール。私たちはいつの間にか、思考の道具をすべて海外勢に明け渡してしまったのだ。
最新の調査結果が突きつける事実は、もはや「危機的」という言葉すら生ぬるい。「敗北」であり「占領」である。
■ 文書も計算も、もはや「自力」ではできない
私たちのビジネスの根幹を支えるツールは、完全に海外勢に支配されている。
文書作成:海外発 68.3%
表計算:海外発 75.5%
メール:海外発 72.9%
文書を書く、計算をする、連絡を取り合う。仕事の「いろは」のすべてを、私たちは海外企業が作ったルールの上で行っている。日本企業は、海外製のツールなしでは一日の業務すら満足に遂行できない「デジタル植民地」に成り下がったのだ。
■ 母国語の入力さえ「他国」に握られている
何より許しがたいのは、日本語の入力・変換(IME)の現状だ。
日本語入力:海外発 51.4%
日本人として、これほど屈辱的なことがあるだろうか。私たちの思考の源泉である「言葉」の変換さえ海外に頼っている状況だ。文書を書いている時、変な漢字変換に戸惑うことも多い。どうして、こんな簡単な漢字変換が出来ないの?と。日本の文化や繊細なニュアンスを理解しないシステムに、私たちの言語表現がコントロールされている。
■ 「ガラパゴスな事務作業」に逃げ込む日本企業
日本発のソフトが唯一優勢なのは「経費精算(63.4%)」のみ。 なぜか? それは、日本の複雑怪奇で前時代的な経理ルールや、海外では通用しない特殊な商習慣に対応できるのが国産ソフトしかないからだ。
世界標準のイノベーションで勝負できず、内向きの「面倒な手続き」を処理するだけのツールで食いつなぐ。これが、かつて技術大国と謳われた日本の成れの果てだ。
■日本人に日本製のソフトウェアを使ってもらうには
日本人は「もっと日本製のソフトを使うべきだ」と言いたいわけではない。 ビジネスにおいて、より効率的で優れたツールを選ぶのは当然のことだ。海外製に席巻されている本当の理由は、私たちソフトウェア会社が、皆さんに「これこそが使いたい!」と思ってもらえるような、ワクワクする選択肢を提示できてこなかったことが、そもそもの原因なのだ。
■ 目を覚ませ。このままでは「デジタル後進国」として沈む
海外製ソフトに依存するということは、莫大なライセンス料という名の「年貢」を永遠に貢ぎ続けるということだ。そして、私たちのデータも、働き方も、すべては海外企業のプラットフォームに握られている。1990年代のあの熱気はどこへ行った? 世界を驚かせた開発者たちの魂はどこへ消えた?今、私たちが国産ソフトウェアの価値を再定義し、奪われた主権を取り戻さなければ、日本に未来はない。海底深く沈んでしまった日本のソフトウェアを再び浮かび上がらせるために「Jフロートプロジェクト」をスタートした。
■Jフロートプロジェクトとは何か
Jフロートプロジェクトが目指すものは、ソフトウェアメーカーだけでなく、日本のIT、ソフトウェアを利用するすべての会社に参加してもらい、大きなムーブメントを起こすのが目的だ。この志をイノベーションズアイの加藤社長や先日、株式公開した辻・本郷ITコンサルティングの黒仁田社長に話したところ、深く共感され、これを社会に訴えかけ大きなムーブメントにしていこうと言うことになった。
海底に深く沈んでしまった日本のITを再び浮かび上がらせよう。
皆さんの賛同を期待する。
https://jfloat.com/
プロフィール

株式会社フリーウェイジャパン
代表取締役 井上 達也
株式会社フリーウェイジャパン代表取締役。クラウドシステムの会社としてユーザー数は34万社を超える。著書に「小さな会社の社長の戦い方」「起業を考えたら必ず読む本」などがある。
Webサイト:株式会社フリーウェイジャパン
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