平成31年度における移転価格税制の改正

第1回

移転価格税制の改正の概要

増田 耕一 2018年12月25日
 
従来より、国際的大企業等が税負担を軽減する目的で、自社が保有する知的財産等の無形資産を海外へ移転する行為が、国際的に問題となっていました。
この問題について、日本では平成29年度与党税制改正大綱において「BEPSプロジェクトで勧告された所得相応性基準の導入を含め、必要な見直しを検討する」と明記され、翌年の平成30年度与党税制改正大綱において「BEPSプロジェクトの勧告や諸外国の制度・運用実態等を踏まえて検討を進める」と記載されました。
そして、平成30年12月14日に公表された平成31年度与党税制改正大綱において、「所得相応性基準の導入」およびその価格算定方法として「DCF法の追加」が盛り込まれました。
この税制改正は、OECD/G20によるBEPSプロジェクト(行動8)での勧告を受けて改正されたOECD移転価格ガイドライン等を踏まえたものですが、その骨子は次の通りです。

① 移転価格税制の対象となる無形資産の明確化

移転価格税制の対象となる無形資産は、法人が有する資産のうち、有形資産及び金融資産(現金、預貯金、有価証券等)以外の資産で、独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡・貸付等が行われるとした場合に支払いが行われるべきものとする。

② 評価困難な無形資産に係る取引に係る価格調整措置の導入(いわゆる、所得相応性基準の導入)

評価困難な無形資産に係る取引に係る独立企業間価格の算定の基礎となる予測と結果に大きな相違が生じた場合には、税務署長は、当該取引に係る最適な価格算定方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正等をすることができることとする。

③ 独立企業間価格の算定方法の整備(DCF法の追加)

独立企業間価格の算定方法として、OECD移転価格ガイドラインにおいて比較対象取引が特定できない無形資産取引等に対する算定方法として有用性が認められているディスカウンテッドキャッシュ・フロー法(DCF法)を加える。

④ 移転価格税制に係る更正期間等の延長

移転価格税制に係る更正期間等を7年(現行6年)に延長する。

⑤ 再調整方法の整備

比較対象取引の利益率を参照する価格算定方法に係る再調整について、定量的に把握することが困難な差異があるために必要な調整を加えることができない場合には、いわゆる四分位法に基づく方法により差異調整を行うことができることとする。
 
移転価格税制は上記の見直しの他、所要の措置を講ずることになっています。

今後は、その改正内容について逐次ご報告をしていきたいと思います。

 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 増田 耕一


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、個人事務所経営、一般企業を経て、現在は朝日税理士法人および朝日ビジネスソリューション株式会社勤務


主に、バリエーション業務および組織再編に係るアドバイザリー業務に従事している。


【主な著書】
「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)


HP:朝日税理士法人

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