中堅企業にも求められる移転価格税制対応

第7回

移転価格税制の基礎 (1) はじめに

山中 一郎 2017年3月24日
 

世界の名だたる要人の租税回避行為をあきらさまにした「パナマ文書」が、2016年4月に波紋を呼び、これに関して、「BEPS」という言葉が脚光をあびることになりました。  

 

BEPSとは、Base Erosion and Profit Shifting の略(日本語訳は「税源浸食と利益移転」)で、多国籍企業等が各国の税制の違いや租税条約等を利用して所得を軽課税国・無税国に移転し、グローバルに租税負担を免れていることを言います。このBEPSに対応するために、OECD(経済協力開発機構)とG20は、「BEPSプロジェクト」と銘打って、パナマ文書発覚以前の2012年より、15項目の「行動」に関する加盟国への勧告を行っています。

 

15項目のうち移転価格に関する「行動」は3項目。そのうち行動13「移転価格関連文書化の再検討」(現在では、「多国籍企業の企業情報の文書化」と改名)に関し、OECD/G20は、多国籍企業がグループ全体の財務情報や事業情報等を、「国別報告書(日本の税制では、「国別報告事項」)」、「マスターファイル」、「ローカルファイル」と呼ばれる共通様式に従って各税務当局に提供することを加盟各国に要請しました。

 

これを受けて、日本では、平成28年度税制改正において、上記3つの文書が導入、または、整備されました。各国においても同様の税制改正が行われています。これら3つの文書から、各国の税務当局はグローバルな移転価格関連情報を広範に取得することが可能になります。

 

かつては、移転価格調査と言えば、主に大規模な上場企業に対して行われ、新聞紙上を賑わして来ました。しかし、近年では、調査対象は中堅企業にも及んでいます。今後は大規模な多国籍企業のみならず、グローバルにビジネスを展開する中堅企業も、移転価格文書化を含めた税務コンプライアンスを遵守し、移転価格調査に備えることが、重要な課題と言えるでしょう。

 

そこで、これから9回にわたって、移転価格税制の基礎を解説いたします。移転価格の算定方法、「比較対象取引」の意味、税務当局の調査の執行状況、平成28年度税制改正で再整備された同時文書化義務等のコンプライアンス制度についてご理解いただき、経営リスクの1つである移転価格税制に係わるリスクを回避していただきたいと思います。

 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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