聞けそうで聞けないM&Aの話

第2回

会社を高く売却するために大切なこと①

髙野 健二 2019年1月7日
 

 自分の会社を売却するということは一生に一度あるかないかのことですから、売却するのであれば少しでも高い評価をつけてもらうほうがうれしいことは当然です。

 しかしながら、売り手側が一生に一度あるかないかのことであるのに対して、買い手側は何度も経験のある百戦錬磨の相手も多い。素人対ベテランという交渉になるケースも少なくはありません。最近では上場会社を含む買い手候補企業と直接コンタクトをとることが出来るサービスも増えてきており、そのような構図になるケースも増えているように感じます。

 そこで、売り手側が満足のいく条件で会社を売却するための要素としては、運を含めていろいろありますが、今回はその中でも一番重要性の高い内容についてお話したいと思います。

急ぐ必要がないこと

 代表者ご自身の体調や資金繰り等の理由により売却を急ぐ必要がある場合には、買主から足元をみられる危険性が高いといえます。少なくとも資金繰りについては、余裕のある早い段階から準備を進めていくことにより、結果を急ぐ必要なく交渉にのぞむことは可能になります。

 「早いというのは具体的にどれくらい?」という質問もよくされます。その回答はありきたりですが、「早ければ早い方が良い」というものになります。資金の底が見え始めた経営者は、皆余裕がなくなり、だからこそ買い手側からみれば低めの条件でも「下ってくる」可能性が高いとみられてしまうのです。

 実際に高い評価で会社を売却された創業者の方に「いつ頃から売却の準備を進めたか」質問した際に「最高益を出した期」に準備を始めようと思ったと聞いたこともあります。社内の部下からしてみれば「まさか」という思いかもしれませんが、冷静に将来の選択肢を築き上げていくためには非常に良いご判断だったと思います。たとえ準備は進めるとしても、本当に売却するかどうかは満足のいく条件が整ったときに決めればよいのですから。

急ぐ必要がある場合には希望はないのか?

 逆に資金繰りが厳しく、「3ヶ月以内には売却を決めたい」とご相談される経営者のかたには、ご希望されるような水準での売却は難しいことをはっきりとお伝えすることは少なくありません。

 ある飲食系の会社社長で資金繰りが厳しく、やはり「3ヶ月以内には売却を決めたい」とご相談をいただいたケースでは、ご希望されるような水準での売却は少なくとも現状では難しいことをはっきりとお伝えしたうえである提案を行いました。それは近い将来での売却はあきらめて、まずは急いで売却する必要にせまられている状況を脱することでした。すなわちそのためには、支出を減らすとともに収入を増やすこと。支出については、不要な経費の見直しについて一緒に検討をすすめ、収入については売上増につながる可能性が高いと考えられた業務提携先の紹介なども行いました。その甲斐もあってこの会社の資金繰りは好転し、売却を急ぐ必要が無い状況まで来ています。

 とはいえ、このケースで上手くいったのは第一に商品・サービス自体にポテンシャルがあったためであり、全てのケースで同様の提案が行えるわけではありません。また資金繰り悪化のスピードによっては、時間切れの恐れもあります。そのため、やはり少しでも早く準備を進めるに越したことはないのです。


 
 

プロフィール

株式会社M&Aコンサルティング
代表取締役/公認会計士 髙野 健二


BIG4メンバーファーム(現・新日本有限責任監査法人)で上場企業グループ等の会計監査、株式公開準備、買収監査(デューデリジェンス)、株価評価等のプロジェクトに参画。


その後、東証一部上場の専門商社やJASDAQ上場流通企業などのM&A担当・役員・顧問として、企業戦略立案・遂行の最前線で活躍した経験を持つ。


【主な役職】
ゲンダイエージェンシー株式会社(JASDAQ上場) 監査役(現任)、日本公認会計士協会東京会経営委員会委員長(2009年度、同委員会副委員長(2010年度)および同会M&A業務支援プロジェクトチーム構成員長、株式会社ノジマ執行役経営戦略グループ長(2007.6~2008.6)、東京都事業引継ぎ支援センター登録民間支援機関(現任)

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