ベンチャーのための資金調達(IPO編)

第2回

IPO「プレーヤー」

 

2回目の今回は、IPOに関わるプレーヤーについてです。
IPOは、以下の外部の専門機関による多岐にわたる協力・支援のもと実現されます。
主幹事証券会社:株式上場準備全般の指導、資本政策、審査機能、金融商品取引所への推薦等
主幹事証券会社以外のシンジケーション団:株式の引受等。
監査法人:上場準備支援、会計監査等
弁護士:リーガルチェック等
ベンチャーキャピタル:資金供給、資本政策等
金融商品取引所:審査、プロモーション、事前相談等
信託銀行・証券代行:株式事務等
証券印刷会社:印刷・申請書類チェック等
主幹事証券、監査法人にまつわる事項については次回以降にさせていただき、簡単にそれぞれの役割についてご説明します。

●主幹事証券会社、主幹事証券会社以外のシンジケーション団

株式上場準備全般については、以上に記載したとおり、証券会社がリードしていきます。その中でも通常1社の証券会社が主幹事証券会社として指導を行っていきます。また、上場に際しては、上場日の前に公募増資等を行います。その際には、複数の証券会社でシンジケーション団を組成し、IPOをする企業の新たに発行した株式を引受け、投資家に販売します。上場を協力・支援し推進して行く一方で、証券会社の役割として、主幹事証券会社が中心となって上場適格性についての審査する機能があります。したがって、証券会社には、上場支援においてアクセルとブレーキの両方の側面があります。

●監査法人

監査法人については、金融商品取引所の上場規則で通常2期間の会計監査が求められているので、必ず求められている期間の監査が行えるよう監査契約を締結する必要があります。通常、監査契約を締結する前に、監査法人は事前調査を行います。事前調査では、会計制度のみならず、上場企業としてふさわしい管理体制となっているのか、およびその問題点の指摘を行います。場合によっては、この段階で上場に際して、大きな問題点が浮かび上がる可能性もあります。

●弁護士

IPOでは、不特定多数の株主を有するということになるので、社会の公器になるという一面があります。法律違反は未上場会社、上場会社共に違反してはならないことですが、とりわけ上場会社の場合の社会的な影響は未上場であった場合よりも大きく増すものと思われます。したがって、上場準備においては、弁護士によるリーガルチェックも重要な調査となります。

●ベンチャーキャピタル

上場準備の過程において、成長のための資金調達が必要な場面では、特に成長著しいベンチャー企業に多いと思われますが、新株式等を発行し、増資を行います。その際、資金の支援を行う機関がベンチャーキャピタルです。ベンチャーキャピタルは成長企業に対して資金面で支援をするという目的と、表裏一体ですが、自ら投資した資金については大きな果実とともに回収することが求められています。

●金融商品取引所

上場の過程において、主幹事証券会社の社内審査が終了した段階で、上場希望会社は金融商品取引所に申請を行いますが、その際には、主幹事証券会社の推薦書が必要となります。主に主幹事証券会社がきっちりと指導、審査したことを前提に金融商品取引所は最終的な上場の承認のための審査を行います。審査機能がメインである一方で、近年、IPOを行う企業の件数が減っている中、金融商品取引所ではIPOを行う企業の誘致を積極的に行っています。IPOの機会を増やそうと、セミナーや個別に企業訪問も行っており、上場に関する事前の相談等を通じ、よりアクセスしやすいよう取り組んでおります。

●信託銀行・証券代行、証券印刷会社

信託銀行・証券代行、証券印刷会社ともに、上場準備の段階から、それぞれ株式事務に関するアドバイス、申請書類等のチェックを行ってくれます。特に証券印刷会社は事実上2社で争奪戦を行っていることから、単なる印刷事務に留まらず、上場、上場後の開示にまつわる、いろいろなサービスを提供しています。

 以上、簡単ではありますが、プレーヤーのそれぞれの役割について説明をいたしましたが、今回の「べき論」ですが、実はIPOを目指す企業の経営者は、準備の本格化のためにキックオフの前にIPOも含め、中長期的な成長のための確固たる絵をきちんとと描いておくべきだということです。
よく、IPOをすれば更なるステップアップが望めることを漠然と期待し、また、上場準備についてはプレーヤーが親身に上場まで支援してくれるとの考えから、企業の成長までもが、プレーヤーの支援に支えられて達成できると思い込まれている場合があります。しかしながら、プレーヤーは上場に関する後方支援は行えても、実業の成長支援まではできません。もちろん、プレーヤーも実業に直接結びつく、顧客紹介、販路開拓等、組織力を活かしたサービスは行っていますが、一義的には企業の成長は企業自身が成し得るものです。

それぞれのプレーヤーは、上場を目指して共に成長をとの掛け声のもと支援を行うわけですが、プレーヤーもビジネスなので、上場が見込めそうもない企業に対しては積極的には支援はできません。ほとんどのプレーヤーは支援した企業の上場が実現することによる収益が大半です。
また、プレーヤーの機能の中には上場を推進する機能のほかに、適格性を審査する機能もあります。つまり、プレーヤーとしても将来上場が見込まれる企業に対して積極的にアプローチするのであって、いくら、経営者の上場への思いだけが強いといっても、成長のための絵がきちんと描けない企業(経営者)に対しては、全面的に支援することはなかなか困難であります。したがって、そのような企業の場合、キックオフまでたどり着くことはありません。
ですから、前述とおり、準備の本格化のためにキックオフの前に中長期的な成長のための確固たる絵を描いておくべきと書かせていただきました。

前回のコラムでもIPOの成否について、また、企業の成長そのものについては、経営者の考え方ひとつによるところの影響が非常に大きいとの内容を言いましたが、これは、IPOを取り巻くプレーヤーが必ず感じていることだと思います。

 
 

プロフィール

藍澤證券株式会社
引受部 部長 右島 学

大学卒業後、平成7年4月に証券会社に入社。
リテール営業ののち、大阪引受部、引受審査部に配属。
主に店頭登録案件の主幹事審査に携わる。平成15年9月に他の証券会社に入社し、主に新興市場案件の主幹事審査に携わる。
平成17年5月に日本アジア証券㈱に入社。
現在に至る。

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