B to B企業のメタバース、インダストリアル・メタバース基礎講座

第2回

BtoB企業とweb3.0

株式会社アルゴバース  瀧田 理康

 

メタバースに関連する言葉として、web3.0(またはウエブスリー)、ブロックチェーン、NFTなどがあります。これらはそれぞれ新しい考え方や技術で、もちろん相互に深い関係があります。しかし、中にはその本質を理解できずに言葉だけが先に使われているケースもみられます。今回は、BtoB企業の視点からweb3.0について考えてみましょう。

 

web1.0

web3.0というからには、web2.0とweb1.0があります。web1.0は1990代半ばに発生したインターネットの一般化になります。1995年にマイクロソフトがWINDOWS95を発売して、一気に一般化が進みました。この時点では、また多くの人はWEBというものを本当には理解できずにいました。ホームページというのがあるらしいとか、パソコン通信と電子メールはどう違うの?という感覚でした。それでもあっという間にホームページもメールも普及して、同時にPCもどんどん高性能化していって、PCもソフトも買い替え需要が伸長して、2000年には日本でもネットバブルが発生しました。多くのネットビジネスがスタートして、東京の渋谷はビットバレーなどと呼ばれました。web3.0という言葉が出てきた今、web1.0はオワコンでしょうか? いいえ、web1.0は今でも私たちの生活に対しても、あるいはビジネスに対しても大変重要な位置づけになっています。私たちは、当たり前にメールでコミュニケーションしていますし、ブラウザやwebページは今や私たちの生活には必須のものになっています。

今でこそ、このような生活必需品になっているweb1.0について、今回のテーマとして考えておきたい点は、1990年代半ばに普及しだした当時には、これを理解し使いこなしていこうとした人と、これを否定していた人がいることです。否定派の意見のひとつは「自分はこんなものがなくても全く困らない」というものです。「電子メールの設定には、プロバイダだのなんだとのお金もかかるし手間もものすごくかかるけど、そんなものがなくても私は電話と郵便で十分コミュニケーションがとれる」と考えたのです。そしてこの考え方は間違っていたわけではありません。問題なのは、これを言っている当人は困っていませんが、まわりの人は困るということです。たとえばクラス会を開催するとして、幹事の人は電子メールで日時や場所の案内を100人にするとします。そのうち1人だけ「電子メールをやらん!!」という人がいたとすると、案内状を郵送しなければならないわけです。それでも最初は対応するかもしれませんが、それが度重なってくると面倒くさくなりその人はそのコミュニティから外れていきます。このようなことはクラス会ではなくてビジネスの面でも同じことが発生するのです。つまり当社は困っていないが、だんだんと顧客、取引先とのつながりがなくなってしまうのです。この状態が30年前に発生しましたが、今日のweb2.0、web3.0ではどうでしょうか?

web2.0

web2.0のキーワードは、モバイルとSNS、そしてビックデータです。ご存知のようにiPhoneをはじめとするスマートフォンの出現により、PCよりもはるかに自由で手軽なコミュニケーションが可能になりました。フェイスブックやツイッターといったものは、web1.0でも掲示板という形で似たようなものがありましたが、次々つながっていくという仕組みなど似て非なるものになりました。そしてそこに関連する膨大なデータ処理がテクノロジーの進化とともに可能になりました。そして今やビジネスにおいてもSNSの活用は必須に近いものになってきています。特にBtoCビジネスにおいてSNSの重要性は日々高くなってきています。BtoB企業においては、プロモーションという形ではまだ業種によってはSNSの活用はそれほど活発でないケースもあります。それでも、SNSを通じてさまざまな情報を得たり発信するのにSNSの有効活用が重要なキーファクターになってきていることは事実です。

さらにSNSの大きなイノベーションの意味として、それ自身がメディアになっていることが挙げられます。それまでメディアといえば、新聞、雑誌、テレビ、ラジオといったマスメディアが圧倒的な力を持っていました。web1.0でもメールマガジンやブログなどの存在が大きくなってきていましたが、web2.0ではそれらとは比較にならない重要度になっていることは、よくご存知のことと思います。これにより、マスメディアのあり方も大きく変化しています。このように考えるとスマートフォンは単にPCを小型にして持ち歩けるものという概念をはるかに超越して、さまざまな分野のビジネスの在り方を根本的に変えてきたのです。それとともに、GAFAと呼ばれる巨大企業が出現し、世界を支配するようになりました。

web3.0

さて、それではweb3.0とは何でしょうか? web3.0とは「次世代インターネット」とも呼ばれているもので、2018年頃から始まった新しい概念です。現在私たちは、何か情報を調べたり発信したり、あるいは動画コンテンツを視聴したり配信する場合、GoogleやInstagram、YouTubeなどのプラットフォームを利用するのが一般的です。このようなプラットフォームには当然ながら管理者、あるいは管理組織といった方がよいかもしれませんが、その管理組織が定められたルールが存在し、それにより管理されています。これは中央集権型のサービスといわれます。ここでもし管理者が定めたルールに反してしまうとアカウントが凍結されたり、サービスを利用できなくなります。これは、正当な管理をされていれば悪いものをはねのける重要な機能なのですが、ある思惑のもとに判断されたり、あるいはそもそもその判断が利用者側には見えない、不透明、わからないといったネガティブな面の可能性も考えられます。また、巨大な中央集権組織があらゆるデータを把握、確保してしまっているので、これらの活用にはポジティブな面だけではなくネガティブな面も考えられるわけです。

この中央集権的な仕組みに対してweb3.0というのは「分散型インターネット」とも呼ばれ、管理者が存在しなくても、ブロックチェーン技術を活用してユーザー同士でデータを管理したり、個人間でのコンテンツの提供、デジタルデータの販売、送金などが可能にするというものです。web3.0の領域の主なトレンド技術としてNFTやメタバースをあげることができます。

さて、ではweb3.0はBtoB企業にとってすぐにでも飛びつくべき領域なのでしょうか?

答えはさまざまあるとは思いますが、私はweb3.0の世界は既存のBtoB企業のビジネス領域ではなく、BtoB、BtoCとも全く新しい概念のビジネスを展開する領域であると考えます。私たちのように既存でBtoBビジネスを行っている企業は、web3.0のすべてではなく、一部を上手に取り入れることが必要です。

今の私たちのビジネスでは、まだまだweb1.0でのブラッシュアップ、そしてweb2.0のさらなる活用が重要です。しかし、そのうえで、web3.0を無視せず日々進化していくweb3.0を注意深く見て、必要なことは積極的に取り入れるべきです。その一つがメタバースです。BtoB企業にとっては、NFTや仮想通貨のことは、もっと先に関連してくるのではないかと考えています。でも、お忘れにならないでください。30年前に、「私は困っていない」とweb1.0を否定した人は、だんだんと周りのコミュニケーション、ビジネスから遠ざかってしまっていったことを。

 

プロフィール

株式会社アルゴバース
代表取締役社長 瀧田 理康 (たきた・さとやす)

東京理科大学電気工学科卒。また、武蔵野美術大学造詣学部にてデザインを、京都芸術大学美術科にて写真を学ぶ。現在は、株式会社アルゴバース代表取締役社長として映像制作事業、PR事業。市場・技術調査事業の3つの事業を統括しつつ、XRグラスによるソリューションや3DCGの制作、メタバース事業といった新規事業を担当している。15年ほど半導体業界で部品製造のベンチャー事業を行い、その際の米国や欧州とのビジネス経験をベースに新規事業開発コンサルティングおよび技術の国際展開のコンサルティングを行ってきた。現在も中小企業大学校でアドバイザーを務める傍ら、自社の事業変革として2021年からは3DCG制作事業、2022年からはメタバース事業に注力している。


・中小企業診断士、リスクマネジメントプランナー(一般財団法人リスクマネジメント協会)、PRプランナー(PRSJ)


・著書は「新規事業開発」「経営基本管理/マーケティング」(ともに日本マンパワー出版)等


Webサイト:株式会社アルゴバース

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