「デジタル人材がいない中小企業のためのDX」

第2回

デジタル人材を採用できない企業はどうすればよいのか

長尾 一洋 2022年5月11日
 

DXを進める上で必要とされるデジタル人材

DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める前提として、一般に必要だと指摘されるものが3つあります。


まず第一は、経営者のコミットメント。経営トップ自らがDXを推進するのだと決意することです。


第二に、デジタル活用が進んだ先の未来ビジョン。これも経営トップが関与してどのような戦略構想を持ち、DXに取り組んで自社をどうして行きたいのかを示すというものです。


そして第三に、デジタル技術に精通し、DXを推進していけるデジタル人材の確保。自社のビジネスや業務も理解しつつ、社内外の人たちをリードし、プログラミングなどのデジタル技術も使いこなすような人材が望ましいとされています。


残念ながら、このすべて、中小企業では無理です。このような大企業目線の(大企業でも多くの場合出来ていませんが)机上の空論に惑わされていては、中小企業でDXなど進められません。でも、大丈夫。本稿のタイトルは「デジタル人材がいない中小企業のためのDX」です。そもそもデジタル人材などいないことを前提にしています。




半信半疑で始めるしかない

では、どうすれば良いのか考えて行きましょう。まず経営者のコミットメントですが、経営者がDXに取り組もうと決断しない限り、中小企業でDXが進むことはありませんから、コミットメントは必要なのですが、IT活用すら覚束ない経営者がいきなりDX推進を本気でコミットするなんてことはあり得ません。もし、その状態で「うちはDXで経営を変えるぞ」と本気で言い出したら、それこそ問題で、社内は混乱してしまうだけでしょう。


最初は半信半疑でOK。しかし経営者自らが先頭に立ってDXに取り組み、デジタル人材になると決意することです。但し70歳を超える経営者の場合は後継者に託しても良いと思います。それでも「良きに計らえ」的に丸投げせずに横に座って少しでも理解しようとする姿勢は見せたいものです。


半信半疑で始め、手探りで進めるのだから、当然ながら未来ビジョンなどありません。試行錯誤しながら描いていけばOKです。DXの際に必ず出てくるシステム開発手法として、ウォーターフォール型からアジャイル型へのシフトという話があります。一度決まった設計書の通りに進めるのではなく、トライ&エラーを繰り返しながら機敏に開発を進めるべきだと言うのです。これと同じで、ビジョンや戦略もビジネスモデルもアジャイル型で良いのです。デジタル活用で何が出来るのかも分かっていない段階でビジョンを考えろというのは、どこかのコンサルティング会社の売り込み文句でしょう。


IT企業、大企業にも来ないのに中小企業にデジタル人材が来るわけがない

そして、最も難しいのが、デジタル人材の確保です。今やDXブームでIT企業はデジタル人材の採用に躍起になっています。「仕事はあるのに人がいない」状態なのです。さらに一般の大手企業もデジタル人材の中途採用を活発化させています。完全な売り手市場になっていて、給与水準も上がっています。


給与も高くて、IT企業や大企業から引く手あまたなのに、わざわざ中小企業に入ろうとするデジタル人材がいると思いますか? もしそういう人材がいたとしたら、IT企業や大企業で通用しなかった人材である可能性が高いと思いませんか?


そもそもDXで必要なデジタル人材とは、単にプログラムが書けますという人ではなく、自社の業務を理解しつつビジネスモデルをも見直し、社内外の人をリードしていける人でなければなりません。IT企業や大企業なら分業されていて単なるプログラマーでも役に立つかもしれませんが、設計書がないとプログラムが書けないような程度の人材では中小企業のDXでは役に立ちません。


むしろ、社内の業務に精通し、人望もある非デジタル人材にデジタルを教えてみる方が可能性があります。そこで挑戦してみて欲しいのが、次回ご紹介するNo Codeツールです。プログラミングを書かずにシステムを作れる武器です。当事者意識を持ってDXに取り組んでくれる人材であれば、単にデジタルに詳しいだけで業務理解もしていない人材よりも余程使えるはずです。


外部に依存せず自社内にデジタル人材を確保する

ここで注意して欲しいのが、外部ベンダーへの依存です。日本全体で大企業を含めても、デジタル人材の7割超がIT企業に属しています。ちなみに米国では7割近くが一般企業にいるそうです。さらに中小企業では自社にシステム部門などもなく完全に外部のIT企業に依存しているケースが多いと思います。そこでDXを推進するとなっても、つい付き合いのある業者に丸投げしたくなるのでしょうが、ここは踏ん張って社内にDX推進者を置くべきです。


もちろん、中小企業がすべてのデジタル化を取り仕切ることは出来ませんので、外部ベンダーの協力体制は必要ですが、DXは単発のシステム開発やIT導入ではなく、継続して当り前のようにデジタルを活用し続ける習慣化が重要ですので、頑張って自社内にNo Coderを確保したいところです。


 
 
    カテゴリ:
  • IT

プロフィール

株式会社NIコンサルティング
代表取締役 長尾 一洋

中小企業診断士、孫子兵法家、ラジオパーソナリティ

横浜市立大学商学部経営学科を卒業後、経営コンサルタントの道に。

1991年にNIコンサルティングを設立し、日本企業の経営体質改善、営業力強化、人材育成に取り組む。30年を超えるコンサルタント歴があり8000社を超える企業を見てきた経験は、書籍という形で幅広く知られており、ビジネス書の著者でもある。(「長尾一洋 著者」と検索)

またラジオ番組の現役パーソナリティでもあり、番組内で経営者のビジネスに無料でその場で答えていくスタイルが人気。この文化放送「長尾一洋のラジオde経営塾」(毎週月曜19:30~20:00)では、聴取者からのビジネス相談を下記のホームページから受け付けている。 番組公式Twitterのアカウントは、@keiei916。(どうぞフォローをお願いします)


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