「デジタル人材がいない中小企業のためのDX」

第8回

DXで働き方を変えるポイント「CMCAM」

長尾 一洋 2022年8月3日
 

時空を超えた働き方を実現する

中小企業がDXで競争優位性を確立するためには、限界費用ゼロというデジタルの特質を最大限活かす売上アップ、数量アップ、事業拡大にデジタルの力を使うべきなのですが、せっかくデジタル活用するわけですから、その前提として、時間や物理的な距離の制約を超えた働き方を実現する体制作りは進めて行くべきでしょう。コロナ禍によって急遽取り組まざるを得なくなった最低限のテレワークよりも一歩踏み込んで、どこにいても、働く時間がズレても、組織として生産性を上げ、付加価値を高めていく仕組みを目指すべきです。


もちろん、それによってパンデミックだけでなく、大地震や風水害などの天災にも備える事業継続計画(BCP)を整備することにもつながります。人材採用の機会を増やし、働き方の多様性にも対応しつつ、組織としての生産性や事業継続性も高めていく取り組みが、DXに取り組む際の5つ目のポイント「CMCAM」です。




リモートコミュニケーションだけでは成り立たない

コロナ禍のテレワーク推奨によって、Web会議ツールやチャットツールの普及が進みました。外出出来ない、出社出来ない、顧客訪問も出来ないとなったのだから、仕方ありません。しかしビジネスなのですから、本来は離れた場所どうしでコミュニケーションが取れれば良いのではなく、その基礎・基盤が整備されていたり、やり取りされた内容が共有される仕組みがなければならないのです。個人どうしのやり取りではなく、企業であり組織としての取り組みだからです。


場を共有せず、時空を超えて企業組織が、生産性を高め、チーム力を高め、付加価値を高め、活性化させるために重要なポイントは、5つあります。それが「CMCAM」です。


CMCAMとは、①「現在状況の共有」(Current Situation)今、誰が、どこにいて、何をしているかが「可視化」され、②「コミュニケーション」(Messaging)時間や場所を問わず会話・やり取り・通信・連絡がスムーズにでき、③「ナレッジ・コラボレーション」(Collaboration)喧々諤々の議論 ワイガヤ 相互理解・相互信頼・相互作用が進み、④「情報の蓄積と共有」(Accumulation Sharing)ナレッジ(情報や知恵)が時間と場所を越えて「可視化」されつつ、⑤「お天道様秩序」(Mutual Check)相互牽制が効いて、不正や隠蔽を排除し、質の担保ができること、の5条件です。順を追って説明して行きましょう。


CMCAM

まずは、「現在状況の共有」(Current Situation)です。場を共有せず離れた場所にいるからこそ、相手が今どこで何をしているのか、この後の予定はどうなっているのかといったことが分かっていないとコミュニケーションが取れないし、無理にコミュニケーションしようとすると相手の仕事の邪魔をすることになります。なぜなら相手は常に仕事中だからです。個人間のプライベートなやり取りであれば好きな時に連絡をとれば良いでしょうが、業務上のやり取りをする時は相手の業務状況を考慮する必要があります。これがリアルな職場であれば、見たらすぐに「忙しそうだな」とか「今なら手が空いているかな」といったことが分かるので、適切に声掛けも出来るでしょうが、テレワーク時には無理ですね。相手の現在状況やスケジュールも把握せずにいきなりWeb会議は出来ないしチャットしてもすぐに返事がなかったり、相手の業務を邪魔するようなことになったりするのです。


その上で、2番目の「コミュニケーション」(Messaging)です。時間や場所を問わず会話・やり取り・通信・連絡がスムーズに出来ることが必要です。但しその際にも業務時間外や休日などの制限が必要な場合があります。何しろ仕事上のことですから。そのような配慮もなく個人のチャットツールなどを利用していては組織的な取り組みとは言えません。


3番目が「ナレッジ・コラボレーション」(Collaboration)です。敢えて2番目のMessagingとCollaborationを分けています。両方合わせて「コミュニケーション」と言えなくもないですが、企業組織で取り組むものですから、そこに喧々諤々の議論、ワイガヤ、相互理解・相互信頼・相互作用が含まれているべきだろうと思います。単なる情報交換ではなく知恵を出し合う仕掛けが必要ということです。


そして、重要なのが、②や③でやり取りされた情報が蓄積され共有されるかどうか。これが4番目の「情報の蓄積と共有」(Accumulation Sharing)です。その場だけのWeb会議やチャットでは、この蓄積と共有が不十分です。企業にはその場で消えて良い、流れて行って良い情報と何年にも渡って蓄積し何年後かの時点で存在する社員とも共有する必要があります。会計や人事の領域には法律で保存期間が定められているものもありますし、稟議やその決済内容、会議の議事録など会社として何年も保存しておくべき情報もあります。それらが蓄積され共有される体制があるからこそ、3番目に出て来たナレッジ(知恵や工夫)も会社の財産になるのです。


最後に

最後に忘れてはならないのが、「お天道様秩序」(Mutual Check)です。人間はどうしても周りの目がないと、緩んでしまったり、サボってしまったりすることがあるものです。在宅勤務であれば、家族がいて話しかけられたりペットがいて邪魔したりしますし、テレビやベッドの誘惑もあります。仕事なのですから、そうした状況下でも、相互牽制が効いて、不正や隠蔽を排除し、質の担保ができることが必要なのは当然のことです。「いや、私は一切サボることはないし一人で集中して仕事に没頭している」と反論する人もいるでしょう。そういう人には、「働き過ぎ」への牽制が必要になります。これを私は「お天道様秩序」と呼んでいます。デジタルを使えばガチガチに監視することも可能なのですが、そこは企業の判断で良い塩梅にしていただく必要があります。その良い塩梅のことを「お天道様が見ている」と言いたいのです。


 
 
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プロフィール

株式会社NIコンサルティング
代表取締役 長尾 一洋

中小企業診断士、孫子兵法家、ラジオパーソナリティ

横浜市立大学商学部経営学科を卒業後、経営コンサルタントの道に。

1991年にNIコンサルティングを設立し、日本企業の経営体質改善、営業力強化、人材育成に取り組む。30年を超えるコンサルタント歴があり8000社を超える企業を見てきた経験は、書籍という形で幅広く知られており、ビジネス書の著者でもある。(「長尾一洋 著者」と検索)

またラジオ番組の現役パーソナリティでもあり、番組内で経営者のビジネスに無料でその場で答えていくスタイルが人気。この文化放送「長尾一洋のラジオde経営塾」(毎週月曜19:30~20:00)では、聴取者からのビジネス相談を下記のホームページから受け付けている。 番組公式Twitterのアカウントは、@keiei916。(どうぞフォローをお願いします)


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