「デジタル人材がいない中小企業のためのDX」

第6回

DXで顧客開拓を変えるポイント「リード・クリエイション・アプローチ」

長尾 一洋 2022年7月6日
 

顧客開拓にデジタルを活用する

デジタル人材がいない中小企業がDXを進めて行く上で着目すべきポイントの三つ目は「リード・クリエイション・アプローチ」です。第1稿でも指摘したように、そもそもDXで競争優位性を確立するためには、限界費用ゼロというデジタルの特質を最大限活かす売上アップ、数量アップ、事業拡大にデジタルの力を使うべきであり、そのためには、営業力強化、顧客開拓力強化に取り組まないわけには行きません。




この分野では、幸か不幸か2020年からのコロナ禍で、客先を訪問出来ない、出張出来ない状況が生まれ、私が「コンタクトレス・アプローチ」と呼ぶ非接触の営業、Zoom等のWeb会議ツールを利用したリモートでの営業が広まりました。「デジタル人材がいないから」などと言い訳している余裕もなく、取り組まざるを得なかったわけです。コロナウィルスの感染拡大が落ち着いて来たことで、リアル営業への回帰も起こっているのですが、一度リモートの便利さ、移動時間が無くなるという効率の良さを体験した人たちはリモート営業を続けて、デジタルの力を活用して営業力を強化し、顧客を開拓して行こうとしています。


商談数を増やさなければパフォーマンスは上がらない

私は、新型コロナウィルスが流行し始め最初の緊急事態宣言が出た2020年の4月に、「コンタクトレス・アプローチ」へのシフトを呼びかけました。「コンタクトレス・アプローチ」とは、「顧客へのリアル訪問(コンタクト)を減らして、逆にアプローチ数を増やすことでより大きな成果を上げる一連の営業行為」のことを言います。重要なポイントは、従来のリアル訪問よりも移動時間がなくなる分、アプローチ(商談)数を増やすことです。直接会う商談と比べると非接触だとパフォーマンスの低下が避けられないからです。従来3商談していた場合には、パフォーマンスが8割に落ちると仮定するとリモートで5商談します。そうすると0.8×5=4ですから、リアル3商談よりもパフォーマンスが上がるという考え方です。8割というのはあくまでも仮説ですが、2年以上多くの企業の営業実態を見て来て概ねその程度になっていると思います。


「コンタクトレス・アプローチ」の進め方については拙著「コンタクトレス・アプローチ」(KADOKAWA刊)をお読みいただくとして、ここでは2年以上現場を見て来て浮かび上がった問題をクリアする方法をご提案します。その問題とは、移動時間が無くなったことでリモート商談をする時間は創出出来たものの、商談には相手が必要なのに商談する相手がいないという問題です。リアル訪問が主体の時には、移動時間で時間をつぶし、近所の客を回るついで訪問や新規の飛び込み訪問も出来て、何となく頑張っている感があったのだと思いますが、非接触だと空き時間をごまかせず、リモート商談をするには相手の承諾がなければならず、商談する時間はあるのに商談する相手がいないという事態に陥ったわけです。


営業の基本スキルが変わる

そこで必要になるのが、「リード・クリエイション・アプローチ」(LCA)です。それこそデジタル人材がいて、おまけにマーケティング部門もあるような大企業であれば、商談相手のリストを提供する仕組みを作ってくれたりするわけですが、デジタル人材のいない中小企業にはそのようなものはありません。営業担当者自らがデジタルツールを駆使して情報を発信し、新規見込先(リード)を作り出すLCAが必要になるのです。今や、ブログやSNS、動画サイトなど様々なWebマーケティングツールが無料で使える時代です。多少費用は掛かりますが、オンラインセミナーやオンライン展示会もコロナ禍で一般化しました。営業基本スキルであったTELアポ技術が、Web上の情報発信やコンテンツ作成スキルにシフトしているとも言えるでしょう。


発信コンテンツの基本4要素

私が「これからは営業担当者自らLCAに取り組んで情報発信すべし」と言うと、多くの人が「発信したくても発信するネタがありません」と尻込みします。デジタルツールが使えないのではなく、そこはクリアしたけれども中身がないというわけです。であれば、デジタル人材がいない中小企業でも取り組むことが出来るということですね。


情報発信するには、発信するに足るコンテンツ(中身)が必要だというのは大切なことですが、中身がなければ作れば良いのです。発信コンテンツは次の4つの切り口で考えます。まずAdvantage。自社ならびに自分に客観的に示せる優位性があるかどうか。次に、Uniqueness。独自性や差別化要素ですね。これらがあれば苦労しない、ということなら、3つ目にCharacter。本人の人柄や人物像を伝えるものです。動画などを使えば人柄も伝わりやすく、広く公開するのが恥ずかしければ限定した先にだけ公開することも可能です。自分の人柄にも自信が持てないという場合には4つ目のProcess。自社商品の生成過程や商品誕生のストーリーを開示します。特別な優位性や独自性は無くても、こんなところでこんなに頑張って精魂込めて作っていますという事実を発信すれば良いのです。


それすら出せない、発信出来ないというのは、そもそもビジネスもしくは商品に問題がありますから、DXの前に見直すべきことがあるでしょう。真っ当なビジネスをされていれば、発信するコンテンツは必ずありますし、もし無ければ作り出せば良いのです。DXの時代には、情報はどんどん公開され、素材や原料、製法や販売法など隠しておけないものばかりです。もちろん「これは企業秘密です」という部分があれば隠して良いわけですが、それはそれで、AdvantageやUniquenessにつながる要素になるでしょう。


こうした草の根デジタルマーケティングに皆で取り組んで新規見込先を創出することが、デジタル人材がいない中小企業の「リード・クリエイション・アプローチ」です。

 
 
    カテゴリ:
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プロフィール

株式会社NIコンサルティング
代表取締役 長尾 一洋

中小企業診断士、孫子兵法家、ラジオパーソナリティ

横浜市立大学商学部経営学科を卒業後、経営コンサルタントの道に。

1991年にNIコンサルティングを設立し、日本企業の経営体質改善、営業力強化、人材育成に取り組む。30年を超えるコンサルタント歴があり8000社を超える企業を見てきた経験は、書籍という形で幅広く知られており、ビジネス書の著者でもある。(「長尾一洋 著者」と検索)

またラジオ番組の現役パーソナリティでもあり、番組内で経営者のビジネスに無料でその場で答えていくスタイルが人気。この文化放送「長尾一洋のラジオde経営塾」(毎週月曜19:30~20:00)では、聴取者からのビジネス相談を下記のホームページから受け付けている。 番組公式Twitterのアカウントは、@keiei916。(どうぞフォローをお願いします)


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