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マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第7回

上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(中編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「上級マネジャーのマネジメントとして、現場マネジャーをマネジメントする役割について教えてもらっているところです。最初は『現場目標・現場戦略の策定・伝達』、次は『結果のフィードバック』ですね。」

「そうだ。では『結果のフィードバック』とは何を意味している?部下の評価か。」

「それも、もちろんあるでしょう。特に、誰を上位のマネジャーへと昇格させていくかの判断材料を提供することは、上級マネジャーの重要な役割ですからね。」

「そうだな。でも、それだけか?」

「そうくると思いました。違いますよね。MCSの考え方では、現場への働きかけを含めた自分のマネジメントを調整するために評価することが重要でした。」

「ご名答。」


他人を改めさせるフィードバック・自分が改めるフィードバック

「この考え方、MCSの基本的な考え方をベースにしているということでしたよね。分かったような、分からないような、という状況なので、もう少し説明していただけませんか?」

「MCSのMC、つまりマネジメント・コントロールとはどういう意味だ?」

「マネジメントで部下をコントロールするという意味ですか?」

「ほら、そこが間違っている。そうではないんだ。」

「とすると?」

「品質管理用語でコントロールとはどういう意味だ?」

「いろいろな切り口がありますが、ここでは『自分が目指す品質を実現するように適切なパラメーターを選んで措置していくこと』というのが適当な気がします。」

「とても気の利いた答えだ。ご名答だよ。その考え方を使ってマネジメント・コントロールを説明すると?」

「自分が目指すパフォーマンスを実現するように、マネジメントのいろいろなパラメーターを選んで措置していくことですか。」

「その通りだ。」

「つまり、フィードバックしながら効果的なマネジメントができるように高めていくということですね。」

「そういうことなんだ。」

「その中には、部下を評価して改善を要求することも含まれているけれど、自分自身のマネジメントを改めていくことも重要だと。」

「それが言いたかったんだ。」


マネジメントにフィードバックしていく

「先ほど、『自分が目指すパフォーマンスを実現するように、マネジメントのいろいろなパラメーターを選んで措置していくこと』なんて、結構難しい表現をしてしまったのですが、具体的にはどうすることなのでしょうか?」

「先日、現場マネジャーへのマネジメントとして『現場目標・現場戦略の策定・伝達』を挙げたよな。それを例に考えたらどうだ。」

「なるほど。自分では適切な現場目標・現場戦略を立て、自分では適切だと思う方法で伝達したにもかかわらず期待した成果が出なかった場合ですね。」

「そうだ。そういう場合、何をどんな風に変えていくことになるのだそう。

「例えば会議を変える方法があると思います?」

「ほう。例えば?」

「今までの戦略会議では、上位下達で戦略を伝え、その達成状況等を現場から報告させるというやり方でした。上からと下から、一方方向の情報伝達が2回、行われるという状況だったのです。」

「で、どうしたんだ?」

「それに、両者が情報交換するという場面を加えました。上層部が現場の考えを聞き出し、必要に応じて上層部がアドバイスするという情報交換です。」

「ほう。それで、どうなった?」

「その場で結論が出るということはないのです。数分やりとりして、後は個別相談しようとなります。」

「それに何か意味があるのか?」

「あるもないも、大アリです。我が社では、普通、部長が課長を呼び出すなんてことは、重大事なんです。方法論は任せているという位置付けですからね。結果が出るまで調整するのが難しいのです。」

「結構、そういう硬直したところがあるよな。」

「それを打ち砕こうとしても、なかなかうまくいきません。」

「それは、俺も思い知ったよ。」

「いろいろ考えたのですが、会議の場で『北部販売課長。進捗度合いで苦労しているみたいだが、何か困ったことはないか?』なんて聞く方法があるなと思いました。やってみると、意外と良い感じです。」

「抵抗はないのか?」

「最初は、皆の前で恥をかかされたと思った課長もいたようです。でも、親身になって話を聞き、意見を言うと、そういう意識はなくなったようです。最近は、こういう場でアドバイスをもらいたいと思う者も出て来たように思います。」

「それはマネジメントの改善として、とても良い事例だな。」

「恐悦至極です。」


目標・戦略にフィードバックする

「そういう調整をやっているうちに、目標や戦略に修正を加えるべき場合もあることに、気が付きました。」

「例えば。」

「進捗が悪いと思って詳しく話を聞くと、確かに当初に目標としてあげたターゲット顧客には評判は良くなかった。しかし、思わぬところで反応してくれた顧客もいる。こちらの顧客を目標にした方が、売上額などの全社目標の達成が容易になりそうだ。だったらターゲットを変えて、戦略も調整していこうかという気になる場合もあるのです。」

「それはまあ、あるだろうな。」

「あまり多用すると現場が混乱するかもしれません。でも、上層部は過重な目標を現場に課してテストしているわけではありません。力を合わせて自分たちの仕事をこなし、成果をあげていくことを目的としているのです。その目的に叶うなら、多少の柔軟性をもって臨んでも良いと思うのです。」

「中川部長が、そんな柔軟性を身につけているとは思わなかったよ。」

「この感覚は、三上取締役から学んだのかもしれません。」

「あんまり口外しない方が良いぞ。俺一派だと思われると、あまり良いことはなさそうだ。」

「それを否定する気はありませんが、だからと言って私が取締役と親しくないと主張することもできないでしょう。こうして定期的にお部屋を訪ねているのですから。」

「そうだな。」

「三上取締役が提案するMCSが、我が社のマネジメントを変えていき、ひいては我が社をもっと強くするためだと思えば、私もそれなりのリスクを取らせて頂きますよ。」

「おいおい、俺はリスクかよ。」

「あれ、それはお気付きではなかったのですか?」

「言わせておけば・・・。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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