マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

第25回

戦略や危機に対応するための連携

落藤 伸夫 2017年10月6日
 
「上級マネジャーの重大な役割として、部門間連携があると教えて頂きました。しかし、最初にお聞きしたのは『我が部門第一主義が出発点になる』ということです。なにやら矛盾しているようですが。」

「全く、矛盾していないぞ。」

「どうしてですか?」

「我が社のことを考えてみよう。企画・開発部門と製造部門、営業部門、配送部門という4つの部門で水道用品・部品の生産・供給という一連のプロセスを担っている。」

「そうですね。」

「そして、結果的に年間の利益が100、出たとしよう。」

「はい。」

「ある時、製造部門が自分の都合を優先して、企画・開発部門や配送部門に大きな負担を強いるお願いをしたとしよう。企画・開発部門や配送部門は、それを受けるべきだろうか?」

「受けるべきではないのでしょうか?」

「その要望を聞いたとしても、製造部門のパフォーマンスは何も向上しないとしても?一方で、企画・開発部門や配送部門のパフォーマンスが下がって、会社全体としてのパフォーマンスが100から90に下がったとしても?」

「それは、困りますね。」

「どう考えれば良いのだ?」

「我が部門第一主義ですか。」

「我が部門のことは、我が部門しか分からない。我が部門の現場マネジャーや統括する上級マネジャーが我が部門を大切にしなければ、その部門は誰からも大切にされることはない。それでは、困るだろう。」

「我が部門第一主義が出発点になるという意味、分かりました。」


部門第一主義を超える場合

「にもかかわらず、私も、徹頭徹尾『我が部門第一主義』でいくのが良いと思っているわけではない。部門間の連携が必要だ。」

「混乱しそうですね。」

「いや、単純な話さ。但し、それを実行するのは必ずしも単純ではないけれど。」

「どういうことですか?」

「製造部門が自分の都合を優先して企画・開発部門や配送部門に大きな負担を強いるお願いをした。企画・開発部門や配送部門のパフォーマンスが下がってしまうような負担だ。しかし、会社全体としてのパフォーマンスが100から110に上がると予想される。その場合は?」

「受けるべきでしょうね。」

「同じ例で、会社全体としてのパフォーマンスは変わらない、もしかしたら90に下がってしまうが、その手当をしなければ会社の評判ががた落ちになってしまう可能性があるという場合は?」

「品質上の問題の時に、ありそうですね。そのような場合にも、協力しなければなりません。」

「そうなんだ。」


戦略実現や危機対応のための連携

「以上をまとめると、何が分かる?」

「各部門は、普段は『我が部門第一主義』を行動指針とするが、いざとなったら他部門とも協力する必要があるということですね。」

「そうだ。ただ『我が部門第一主義』というのは、これがあまりにもインパクトが強すぎて間違って捉えられるような気がするので、言葉を変えよう。『自部門での部分最適を目指した自律的な意思決定・行動』とでも言おう。」

「なるほど。」

「そして『全体最適を目指して他部門とも連携しての意思決定・行動』にシフトすべき時がある訳だが、それは何時だ?」

「いざという時ですね。」

「その『いざ』という言葉では、どういう時なのかよく分からないので、もって正確に表現しよう。」

「危機対応時ですか?」

「そうだな。それに戦略実現の場面も加えよう。」

「なるほど。戦略実現や危機対応の場面では、連携すべきなのですね。」


連携のあり方

「そうやって、連携するということですが、いざ、連携を行おうとする場合、メンタルブロックになることがあると思うのです。」

「なんだ?」

「連携というと『自己犠牲しなければならない』と思い込んでしまうのです。それでは、自分に損ではないかと。」

「確かにな。これは、評価とも絡んだ話だと思う。今までの評価基準の中で、連携への対応が加点ポイントにならないのなら、今までの評価を得るために必要だった人材や労力、時間を削って対応したくないという趣旨だ。」

「そうですね。評価システムが、連携を阻む仕組みとなってしまっているのです。」

「一方で、こう考えてみるのはどうだろう?連携とは、戦略実現や危機対応のために新たな仕事が発生し、それを適切に行ったのだと。」

「なるほど。」

「特に、戦略実現や危機対応の場面では、通常のオペレーションでは誰の仕事にもなっていない仕事をこなさなければならない場合が多い。新たな仕事が生まれたのだ。」

「新たな仕事が生まれたのに誰も対応しないので、戦略は実現しないし、危機にも対応できないということですね。」

「そうなんだ。」

「変な例えかもしれないが、危機対応とは、野球で言えば『センターとレフトの間に飛んできた球をどうさばくか』に似ていると思う。」

「両方が『あれは俺の仕事じゃない』と思うと、チームは負けてしまいますね。」

「そうなんだ。だから『あれは新たに生まれた俺の仕事なんだ。果たさなければならないんだ』と思うところに、連携が生まれると思う。」

「そして、それを評価できるようにしなければならないのですね。」

「その通り。そうやって連携を推進するのが、上級マネジャーの役割なんだ。」

「なるほど。分かったような気がします。」

 
 
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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

昨年まで、現場マネジャーが行うマネジメントについて、世界標準のマネジメント理論である「MCS(マネジメント・コントロール・システム)論」をベースに考えてきました。日本では「マネジメント」について省みることがほとんどないようですが、世界では「マネジメントとはこういうものだ」という姿がきちんと描かれていて、それを学ぶように促されています。日本のホワイトカラーの生産性が低迷している原因は、もしかしたら、このあたりにあるのかもしれません。

昨年度は約1年かけて、現場マネジャーのマネジメントについて考えてきました。現場マネジャーは、現場で働く人たちが高いパフォーマンスをあげられるよう促すマネジメントを行なっています。一方で現場マネジャーも、マネジメントを受けます。現場マネジャーが行うマネジメントが現場の力をあますところなく引き出しているか、企業として目指す方針や戦略を実現できるよう導いているかという観点でのマネジメントを必要としているのです。

今年度は、連続コラム「マネジメントを再考してみる」の後編として、上級マネジメント(上級マネジャーの行うマネジメント)についてMCS論をベースに考えます。上級マネジャーがどんな役割を担っているか、それをどのように果たしていくかについて、体系的にご説明します。 企業パフォーマンスを向上させる世界標準のマネジメントに関する解説は、日本初の試みです。是非、お楽しみください。

コラム マネジメントを再考してみる 後編<上級マネジメント>

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